☆『あらゆる芸術の士は、人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故(ゆえ)に尊い。(夏目漱石 草枕より)』好きな言葉のひとつです。外出自粛で人気らしいプラモデル。箱の挿絵・・・懐かしく思い出すのは、ボックスアートの第一人者であり、イラストレーター、油彩画家でいらした梶田達二(かじた たつじ)先生。当画廊での個展開催は1998年9月。

 

☆ご案内の葉書には『この度、ギャラリー銀座さんのお勧めで、又、個展を行うことになりました。帆船を中心に明るく爽やかな作品を心掛けて描いてみました。他にも、SLや飛行機も出品して、楽しい展覧会にしたいと思います。どうぞ、お気軽に遊びにいらしてください。』

 

☆静かにじっと熱心に帆船画の前にいらした方が不意に『合っている、合っている。すごいぞ。私は昔、この船に乗っていたんだが、全部合っている。』躯体はもちろんのこと、仕舞われたロープひとつも場所が違うことなく油絵の中に描きこまれていると興奮して。『乗れる船には、全部乗船しています。特にこの船に乗った時には、船酔いがひどくて大変でした。』曲がったことが嫌いで正直、長めのストレートの白髪(はくはつ)の先生が後ろから。

 

☆夫唱婦随の奥様からは、芳名台の配置や茶托についた埃、人との距離など、実践的なことが書かれた手紙を会期中に貰いました。プロの画家(当時は美術市場という本に価格が掲載されている人が流通しているプロの画家とされていました。)は、アマチュアの画家と違って個展が一番の大仕事。甘えは許されない。続けていくことの大切さと大変さも同時に教えていただいたような気がします。


☆かつて銀座中央通り・資生堂共同ビル二階にあったギャラリーロイヤルサロンギンザを訪れた時に、小松崎茂先生と梶田達二先生に仲良く並んでカメラのシャッターを押して!と、頼まれたことがありました。おふたりとも背景の場所にこだわられて、なかなか場所が決まらず、並んだまま画廊内をうろうろしたことも懐かしく思い出されます。

 

☆肉筆で精緻な帆船画を描ききることの出来る画家の方は不世出。お手元に作品をお持ちの方は、どうぞ末永くご愛鑑くださいませ。

 

・船の科学館 収蔵作品 羊蹄丸 初代海王丸 初代日本丸

 

『順風満帆』初代日本丸(画像は上記の船の科学館のサイトより転載)

 

梶田達二先生の師の鈴木政輝画伯の作品も船の科学館では

多数収蔵されていらっしゃいます。

 

・船の科学館 収蔵作品 雲鷹丸 ほか多数

 

(文責 ギャラリー銀座 旧運営者 岩井)

 

 

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4月4日(土)5日(日)臨時休廊