クリニャンクールのパトリスさん | フランス額装、アトリエ・オリーブのブログ

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フランス額装のアトリエ・オリーブブログです。

額装や額縁の事、西洋美術の事、アートの事、フランスでの事、 猫についてなどを書きます。

今回は、私の恩人の一人である、パトリス・サレさんについてご紹介

したと思います。

 

私がパトリスさんに出会ったのは、2012年の12月です。

その翌月から受講するの額縁修復の授業の為に、

古い額縁を探しにパリ北部にある、

サントワンのクリニャンクールの蚤の市へ出向きました。

 

箔貼りと修復の講師であるソフィーさんに、知り合いのダニエルさんの

お店があるから、来店予約をするように言われました。

なのでお店に行かなくてなりません。

 

 

治安もあまり良くなく、いわゆるスリのメッカです。。。。

ちょっと怖いイメージがありまして。

なので、なるべく汚い格好で行くべき、、、なんて思っていました。

 

 

 

こちらのダニエルさんのお店にて、19世紀の額縁を購入した後に、

この面白い蚤の市の探検を始めました。

 

 

クリニャンクールの蚤の市の規模は大きく、幾つかの市場から

成り立っています。

 

 

 

露店や素敵なお店の多い、ヴェルネゾン市場の中にダニエルさんの

額縁店はあります。

 

 

その市場を歩いていると、素敵なデッサンのお店を見つけました。

 

 

 

 

その店内にある作品もさることながら、その額装や額縁に

目を魅かれ、お店の中へ入っていきました。

 

その店内に、 70歳を少し越えたとても上品な男性

がいらっしゃいました。

その方がパトリス・サレさんでした。

 

ルーブル美術館にも所蔵されている様なデッサンが何枚もあり、

とても高級感のあるお店でした。

 

私はパトリスさんに、

自分は日本人である事、額縁や額装に興味がある事、

また、額装に国家試験を受験する予定等々、お話させて頂きました。

 

するとパトリスさんは、これから蚤の市を案内してあげるよ。

額縁や絵画のお店を巡りましょうと、ご提案下さいました。

 

初めてお会いした方でしたが、ご一緒させて頂きました。

 

パトリスさんは、いいかい、この辺りにはスリが多いから注意

するんだよ。と言いながら、様々なお店に行き、私の事を店主の方々にご紹介して下さいました。

 

この子はね、日本人で額縁や額装を学んでいるんだよ。

 

なんて言いながら。

 

お店の方も、あなたはとても安全なガイドさんに市場を案内して

もらっているんだよ。

 

などと言って下さる方もいました。

 

パトリスさんのお店の前にも素敵なアンティークのお店があります。

それは、パトリスさんのお嬢さんのオディールさんのお店です。

 

私はオディールさんともお話をさせて頂いて、

既に、クリニャンクールの蚤の市が大好きになっていました。

 

何度かパトリスさんに会いに市場へ通いました。

フランス人の額装師を紹介して頂いて、私の世界も広がりました。

 

ある時、パトリスさんに何度メールを送っても返事がありません。

心配しながらパトリスさんのお店に行きました。

 

すると、

 

先日、店主 パトリスは他界しました。

皆様に愛され幸せでした。

 

と、書かれた張り紙がありました。

 

とても驚き、目の前のお嬢さんである、オディールさんのお店に行き、

お話を伺いました。

 

オディールさん曰く、

パトリスさんは足を骨折して、そのままご体調が悪くなり他界された

そうです。

 

私は、ワンワンと泣きながら、悲しみとパトリスさんへの感謝を

優しさについて話しました。

 

オディールさんは、

 

パパ(パトリスさん)は、日本人ながらフランスの試験を受験しようと

しているあなたを素晴らしいと思っていたのよ。

 

とおっしゃって下さいました。

 

私がパトリスさんと過ごせた時間はほんの3か月位です。

しかし、パトリスさんが私に残して下さった事はとても大きい物です。

 

フランスでの額装の試験の際には、オディールさんから

頂いた、パトリスさんの写真を持参しました。

試験が合格した際には、オディールさんに直ぐに伝えに行きました。

 

 

なんだか奇跡の様な出会いでした。

 

 

蚤の市内にあるお店です。

パトリスさん曰く、

ギターの生演奏を聴く事が出来るそうです。