患者Tさん=35才-女性-主婦/会社員の症例
患者Tさんは20代の頃から冷え性でしたが、数年前からさらにひどくなってきたそうです。漢方を試したり、鍼灸治療やアロマ・整体なども受診したそうですが何の効果も無かったそうです。そんなTさんが5年前に再発性の性器ヘルペスに罹患し、今回はその性器ヘルペスの治療と併行して、本症も治療することになりました。
・冷え性の部位は左右の臀部(特に外側半分)と左右の足先及び手指だそうです。
・ヘルペスが生じる部位は外陰部左右で、複数出来て少し痛むそうです。月経前後の10日間に出来ることが多く、それが過ぎると改善するケースが多いそうです(月経数日前にヘルペスが生じて月経が終わるころに消失する)。
・ヘルペスが生じると、水泡以外の部位(☚左右の臀部下半分と左右大腿後面で同部に水泡は生じない)も神経痛様の痛みが生じるそうです。
・微熱・発熱や咳などは無く、全身の健康状態は良好で、直近の人間ドックでの血液検査・画像検査でも、本症以外の特段の異常は無かったそうです。血圧は98/58mmHgだそうです。
・気管は正中にあり、甲状腺の腫脹・腫瘤・萎縮はありませんでした。肩から首にかけての凝り性で、特に頸部は前後左右の筋肉群が緊張(やや腫脹気味)し、圧痛がありました。
・橈骨動脈の左右差はありませんでしたが、しかしその拍動は減弱していて、爪圧迫テストは左右ともほぼ2秒かかりました。頸椎の伸展による失神所見はありませんでした。
・7年前にお腹の激痛に見舞われ(☚クラミジア腹症の診断結果)、数日ほど入院していたそうです。
・月経周期は28日タイプで、月経期間は7日前後だそうです。月経血の量も普通位いで、塊様のものはほとんど出ないそうです。
・基礎体温は正常に高温相と低温相がハッキリとあるそうです。
・排卵痛は無いそうですが、生理痛は強いそうです(下腹部と会陰部)。生理痛に関してはずっと漢方薬を服用しているそうです。
・排便は毎日あるそうですが軟便だそうです。
・オリモノに特段の異常はないそうです。不正出血も無いそうです。
・排尿痛・頻尿や尿の混濁等は無いそうです。
・頭顔部の浮腫みは無く、頚胸部聴診上も呼吸音の異常や血管雑音はありませんでした。
・腹部聴診上、血管雑音は確認できませんでした。グル音はやや弱く聴取出来ました。ハム音は確認できませんでした。
・腹部触診上、臍の左右付近と左右鼠径部の内側付近に著名な緊張と圧痛がありました。肝脾腫や腫瘤感はありませんでした。
⑴ 鎖骨下動脈を解放する
⑵ 内腸骨動脈(上・下殿動脈、外側仙骨動脈) を解放する
⑶ 外腸骨動脈~大腿動脈を解放する
・鎖骨下動脈解放テクニック
・平滑筋テクニック
・腸骨はがしテクニック
・内腸骨動脈(上・下殿動脈、外側仙骨動脈)解放テクニック
・外腸骨動脈~大腿動脈解放テクニック
・2診目来院時、「(初診治療の)翌日は一日中お尻や手足は温かかったですが、その後元に戻りました」と仰っていました。2診目治療後「お尻の外側までメッチャ温かくなっています」と、ビックリしておられました。
・3診目来院時、「お尻の冷えも手足の冷えもOKです」と仰っていました。
・4診目来院時、臀部および手足の冷えの改善傾向が持続していて、Tさんの本来の主訴であった「性器ヘルペス」も治癒傾向が維持できていたので、冷え性の治療もヘルペス同様に終了する事にしました。
・一般的に(特に昔の人ほど)「女性はお尻を冷やしてはダメ」と言われていています。ですから多くの女子は毛糸のパンツや携帯カイロなどでお尻を保温されたりしてお尻の冷え性対策をされていますし、「これで良いのでは」と思っておられるかもしれません。
・しかしこれは本来少し解釈が違うのでは、と思います。私なりの解釈では「お尻を冷やすことがダメ」なのではなく、「冷えたお尻を元の温かい状態に自力で戻せない」事がダメなのでは、と思います。その意味で言うと「毛糸のパンツ・携帯カイロ」などの冷え対策は、根本的な冷え対策になっていない、と思います。言い換えれば、「毛糸のパンツ・携帯カイロ」に頼っている方々は「自然治癒力=ホメオスターシス」が機能していないのでは、と考えられます。
・確かにお尻の冷え性は圧倒的に女子に多いと思います。私は男子ですが、男同士の集まり=会話=の中で「お尻の冷え」が話題になったことは私の人生の中で一度もありません(手足の冷えはたまにありますが)。それほど男子にとって「お尻の冷え」は縁遠い現象なのです。逆に言えば、女子に圧倒的に多いわけで、そこに男女の構造-機能的原因が隠されている可能性は高いのでは、と推測されますし、それはほぼ間違いのないことだと思います。
・その構造-機能的原因とは何か、、、それはいくつかあると思いますが、しかし私が一番挙げたいことは女子特有の以下の三つの構造的な状況です(下記注1参照)。
1. 腹腔内に逆流する「月経血と内膜組織」
2. 腹腔内に漏出する「卵胞液」
3. 経腟性に腹腔内に進入する「細菌」
女子は、これら三つの状況によって常に腹腔内臓器が上記老廃物や異物により刺激され、炎症や出血を起こし、それらによる瘢痕形成や組織同士の癒着が生じやすい構造になっています。これら三つは男子にありません。この事が、女子の腹腔内の(場合によっては胸腔にかけて)様々な愁訴の原因につながる事は否めません(☚本ケースのTさんに限っても、上記1,2,3によって生じたと考えられる愁訴は「再発性性器ヘルペス」「月経前後の神経痛」「生理痛」そして本症の「臀部・足の冷え性」が考えられます)。
・ここまで記せばもうお分かりになると思いますが、本症=臀部の冷え=に関しては、上記1,2,3の下地の上に7年前にTさんが罹患した「クラミジア腹症」が加わって大小様々な炎症産物による瘢痕が内腸骨動脈(上・下殿動脈、外側仙骨動脈)や 外腸骨動脈~大腿動脈の絞扼原因となり、その支配流域である臀部や足への血流障害を来し、同部の冷えといった愁訴につながっていたのでは、と推定します。
・手の冷え性に関しては(レイノー症状的な病態も考えられますが)、今回に限っては上記③「治療目標と整体治療」でも記したように「鎖骨下動脈の絞扼による血流障害」が主因では、と考えました。おそらく前・中斜角筋や胸鎖乳突筋を中心とする頸部前面の筋肉群の緊張により直接的に、あるいは鎖骨下筋筋膜~胸筋膜が緊張して胸郭上口付近の圧力が上昇することで鎖骨下動脈が絞扼され、上肢~手に向かって走行する血流が軽度障害されて、その影響が一番表れやすい血管末端の「手」に冷え性として症状が現れたのでは、と考えます。
1. 腹腔内に逆流する「月経血と内膜組織」
2. 腹腔内に漏出する「卵胞液」
3. 経腟性に腹腔内に進入する「細菌」
女性は男性と異なり、これらの「月経血と内膜組織」「卵胞液」「細菌」などの老廃物や異物により腹腔内で炎症が生じやすくなり、その炎症産物としての血種や膿などが瘢痕・癒着あるいは二次的な炎症の原因となって骨盤臓器(☚子宮、卵管、卵巣、大小腸、膀胱、尿管、動静脈、神経、腹膜etc)に生理痛や不妊・下痢・腹痛・神経痛などの様々な悪影響=愁訴=を引き起こします。
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