[2015/02/19再掲載]
ある年の10月の中頃、中３の女子生徒をお父さんが連れて入塾相談に来ました。
入塾相談はたいていお母さんが来るものですが、この家庭はお父さん。
珍しいケースだなあと思いつつ席に着くと、お父さんが話し始めました。
「実は娘にはてんかんがあります。今まで塾には通っています。でも、てんかんが原因だとは思うのですが、成績は良くありません。高校に入れるような点数を取っていません。ですから、中学を卒業して入れる専門学校でも構わないんです。でも、できるならせめて人並みに高校に行かせてあげたいと思っています。」
このように切り出されました。
初対面の私にいきなりこう話してくれたのです。
てんかん。
何も隠すような病気ではないと思いますが、一部に偏見を持つ人がいるのも事実。
その偏見を恐れて当事者はなかなか口を開きにくい現実があります。
ところが、あのお父さんは実に堂々と事実を私に伝えてくれました。
そして、横にいる娘もしっかりと前を向いていました。
中３のこんな時期に預かってもらえるのか、成績を上げるのが大変な娘を預かってもらえるのか。
想像ではありますが、お父さんの気持ちの中にはこのような不安があったと推察できます。
しかし、初対面の私に、見ず知らずの私にいきなり心を開いて話してくれたのです。
しかも「せめて人並みに高校に行かせてあげたい」などと言われたら、古いタイプの人間である私は「意地でも高校に入れてやろうじゃないか！」と思ってしまいます。
入塾相談に来ても別に私は勧誘などしません。
他の一般的な塾ならば業務命令として何が何でも入塾させるように言われます。
そんなものは私のところにはありません。
初対面の人間に全ての情報を提供してくれる親もいれば、勧誘を恐れてでしょうが隠しまくる親もいます。
勧誘などしたことのない私は前者のケースならば、どん底の成績でも何とかしてあげられます。
しかし、後者のケースは初めからうんざりです。
このような私ですから、もちろん喜んで娘さんを預かりました。
とは言っても現実は厳しく、理解度が乏しいのは否めません。
塾にはいつも笑顔でやって来てくれていたものの、勉強内容に関してはやはり苦しんでいました。
それでも、最低限覚えるべきことをコツコツこなして行って、ごくわずかではあっても偏差値は上がりました。
それでも底辺の高校でさえ足りない偏差値です。
年が明けていよいよ受験シーズン。
迷いに迷って決めた受験日程を実行に移します。
１校目 専門学校
２校目 私立高校
３校目 県立高校
最初の専門学校は名前を書いたら合格なので、問題なく受かりました。
制服も高校と同じようなデザインなので、最悪の場合はそこでも良いとみんなで納得。
次に私立。
易しい高校です。
でも下には下があります。
その高校よりも下に学区内で県立が３校。
彼女の第一志望の県立はその上のランク。
万が一の発作を考えて単純に自宅から一番近い県立高校を選んだ訳です。
頑張っては来た訳ですが、私立も県立も可能性はゼロに等しい学力でした。
ですが、彼女は素直です。
笑顔のかわいい、性格の良い生徒でした。
そのような生徒に対しておじさんは意地になります。
意地でも入れてしまいます。
その私立の一週間前、私は手書きでメモを何枚か作りました。
「あの高校は出るパターンが決まっている。これだけ丸暗記しておきなさい。」
私に指示された通りに音読黙読を繰り返して一生懸命に暗記していました。
あのメモを全部覚えても出題されるとは限りません。
仮にそれが当日出題されたとしても、それで初めて彼女にとって可能性がゼロでなくなるに過ぎません。
そして、入試の前日となりました。
彼女は私のことを信頼してくれていたので遠慮なく言いました。
「数学は問題用紙の表が計算と一行問題、裏が図形問題のはずだから、裏は見るな。裏をやっても解けないから時間の無駄になる。おまえは表に全時間を使いなさい。」
「はい。」
彼女はそれだけ言って帰宅しました。
果たして緊張する試験場で落ち着いてこの指示が守れるかどうか、それが心配なのは言うまでもないことです。
心配しながら塾で彼女の帰りを待ちます。
すると、妙に落ち着いた顔で彼女は帰って来ました。
当然私は尋ねます。
「数学の裏はどうした？」
彼女は即答でした。
「裏は見ていません。」
この返事を聞いた時、間違いが起こるかと少し期待してしまいました。
数日後、発表の日です。
残念ながら、否、当然のことながら、彼女の番号はありませんでした。
しかし、数時間後に彼女の自宅にその高校から電話。
「一般受験としては残念ながら不合格だったのですが、単願に切り替えていただければ合格点に達しています。どうなさいますか？」
迷った母は学校ではなく、塾に電話をかけて来ました。
「まだ担任の先生には話していません。どうしたら良いか先生の意見が聞きたくて電話しました。」
私は即答でした。
「行かせましょう。チャンスですよ。県立を受けても見込みは少ないし、これはチャンスですよ。家計の問題を以前おっしゃっていましたけど、お母さんが余計にパートに出れば済むでしょ？」
「そうですね、そうですよね。分かりました。私頑張って働きます。」
この時は父ではなく、母の決断で娘は無事に高校生になれました。
それから数ヶ月後、ある路線の始発駅でガラガラの車内の隅に私が座って本を読んでいた時のことです。
誰かが突然私の横に、それも身体をぴったりくっつけて座って来るではないですか。
何だ、誰だ？
横を見ると、彼女でした。
高校の帰りだったのです。
そこから一緒に降りる駅まで30分間、彼女は話が止まりませんでした。
どのくらい高校が楽しいのか、話が尽きることはありませんでした。
冷静に考えなくても、女子高生が中年のおっさんにくっついて座るなどあり得ませんよ。
でも、彼女はそうしていました。
本当に楽しそうでした。
嬉しさが確実に伝わって来る彼女の表情でしたし、そういう話でした。
さて、聞くところによれば、私は詐欺師だそうです。
嘘に２種類あるように、実は詐欺師も２種類。
一般的な詐欺師と正統派の詐欺師。
一般的な詐欺師は軸が自分にあります。
自分の利益のために詐欺。
それに対して、正統派の詐欺師は軸が相手にあります。
相手の利益のために詐欺。
私は正統派の詐欺師ですから、いつも上のような生徒本位の指導をしています。
そして、詐欺師ですから、いただくものはちゃんといただきました。
たっぷりと「満足」を。
[追記]
あのてんかんの女の子は、ふつうの塾では絶対に預からないでしょうね。
塾の宣伝に使える訳ではないですし、何よりも高校に合格させるのが困難ですから。
でも、私は喜んで預かりましたよ。
なぜ？
それは私が超変人、つまり正統派の変態だからです。
一般的な変態は犯罪で逮捕されますが、正統派の変態は人の役に立てるのです。
正統派の変態であることに自負がありますから、喜んで預かって意地でも合格させたということです。
高須クリニックの高須院長はテレビ出演も多く、とにかくお金を稼いでいます。
しかし、一般にはその使い道は意外と知られていません。
彼は稼いだ金を墓場まで持って行く人ではありません。
困った人がいると思いっきり寄付しています。
世の中には他人の行いにはグダグダとケチをつけて何もしない人がいます。
高須院長は有言実行。
思いっきり稼いで思いっきり使います。
細かくは書きませんが、大きなことから小さなことまで他人の役に立つことをしています。
あるテレビインタビューで「高須院長は何者ですか?」という質問に対して次のような感じに答えていました。
「困っている人がいたら救ってあげたい、変態だよ！」
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↓は我孫子中学で学年１位だった、そして現在は当校で講師をしている教え子のメール。
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てんかんを持っている女の子のお話で私と母はうるうるしてました。
何度もお聞きした話なのに、もう次にどうなってどういう結末なのかわかっているのに、泣きそうになるんだよなあと二人で話していました。
その女の子が素直にひたむきに頑張ってきたから、お父さんもお母さんも先生と娘を信じて頑張ってきたから運はめぐってくるのですね。感動します。鼻水が止まりません。
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↓はそのお母さん方からの反応です。
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○○が帰ってきて、いつものうざい会話をしていたら…
「いやぁ…今日の書き込み良かったわ。久々に感動したわー」と。
てんかんの女の子の話がいたく感動したそうです。そのまま塾長に伝えとくと言ったら
「上から目線みたいだから止めて！」と。
はい。そんなこと言われて止める訳ないじゃーん( ￣▽￣)ヤツも人の心を持っていたようで安心しました。
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↓は他のお母さん方からの連絡です。
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塾長に出会って正統派の変態が良く分かりました。何より「変態」と自分で言える人は正統派だと思います。喜んで人の役に立つなんて素晴らしい変態だと思います！
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自分の利益のためではなく、人の役に立つのが生き甲斐という正統派の変態は身近にいませんでした。塾長の行動から、いつも学ばせて頂いています。
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人の役に立つこと、利他の精神を体現していらっしゃる塾長の下で学べる塾生は、その価値観に常に触れながら成長できる環境にあります。
子供達には正統派変態の芽を大事に育てて欲しいと思います。
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塾長が正統派の変態でなければ愚息はとっくに見放されています。ご指導いただける事に感謝すると共に、塾長の日々の行動から利他の精神を学んで参ります。
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今日も早い時間から塾を開けて頂きありがとうございます。
娘さんを心配し病気の事を伝えたお父様の気持ちと、どうにかしてあげたいという先生の気持ちが良くわかりジーンとしてしまいました。
そして、この生徒さんが先生の指示を守ったからこそ合格が掴み取れたのだと思います。
先生、お父様・お母様、生徒さんが同じ方向を向き頑張られた結果だと思います。
このような姿勢をお手本にします。
教えて頂きありがとうございます。
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大変お世話になっております。
メール失礼致します。
昨日は一対一指導有難うございました。難しい問題でも先生は
簡単に解りやすく教えてくれると喜んでおりました。
昨晩のてんかんの生徒さんの
お話読ませて頂きました。
彼女の頑張りは勿論の事、本人ご両親ともに先生と互いに強い信頼関係があったからこそ合格に結びついたのだと思いました。その生徒さんだけではなく、障害を持つ生徒さんを受け入れ、健常者と何ら変わりなく指導してくれる、こんな学道舎のような塾が世間にもっと増えてくれる事を願います。
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こんにちは。
掲示板にてんかんのある女子生徒の話を書き込みして下さり、有難うございます。
以前にも、塾生で弁護士になったり医者になったりした生徒よりも思い出に残る生徒さんだと聞いていて、とても印象に残っていました。
他の塾でしたら、宣伝になる上位校に入れるような生徒にしか力を入れないのに、本当に塾長は変わっています。
塾生は塾長の詐欺とか嘘付きにまんまと騙されて、得をしているので塾生側も大満足しています。
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もう昼ですね。
朝から家のこともせずに、障害児支援の本をよんでいて、こんな時間に！
午後は家のことをしないと！
長男を育てて、障害や病気を理由に拒否されたり躊躇されたりすることを経験してきました。
世の中は残念ながらその程度の感覚です。
これからもそうだと思います。
だから、子どもは素直で愛される子にしないと誰も助けてくれません。
先生が教えてらしたてんかんのお子さんはきっとご両親様がそのように育てていらしたのでしょう。
世の常識に反して、どの子も拒否なさらずに伸ばしてくださる塾長ですから、私は安心して○をお願いしています。
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てんかんの方の受験のお話しをドキドキしながら読みました。合格して良かったのは勿論ですが、苦労して受かった学校生活が本当に楽しそうな様子や塾長が苦笑いを浮かべて車中にいる様子が目に浮かびました。ご両親もきっと沢山悩まれて決断されたのだろうと思います。○○の受験でオタオタと悩んでいたのが恥ずかしくなります。後悔しない苦労と努力を忘れないようにします。
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おはようございます。
「想い出の生徒たち」を読みました。成績が上がらないのを塾のせいにするような親は、順調に子育てをしてきたからではないかとこのお父さんの姿から思います。
塾と親と子供が同じ方向を向いて努力したことで合格を勝ち取ったのですね。そして娘さんの素直で明るい性格が幸運を引き寄せたのだと思います。
指導者側からすると面倒を見るのが大変なお子さんです。塾長は多くの人が気にするところよりも、もっと大切なところを見ています。私もその見る目を持ちたいです。
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おはようございます。
中３女子生徒の話を読みました。高校に合格し、楽しく通えて何よりです。
努力し指示を守れば結果はついてくるのですね。前向きで明るい性格な事も大事ですね。
息子にも塾長の指示を守り、最大限の努力をして欲しいと思います。
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思い出の生徒たちを読みました。
ご家族皆さんまっすぐで…涙が出そうです。
ぴったりくっついてきたお嬢さん気持ち。先生の満足。
読むことができて良かったです。
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寝る前に素敵なお話をありがとうございます。
心を開くと運も道も拓けますね。
信じて素直に実行する大切さを思います。
見習います。
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