日本人の水彩画に対するイメージは、
未だにかなり偏向しているように思う。
その要因であり、日本の水彩画の偏向を決定付けたと思われる大きな理由が二つあるように思っている。
○ 『水彩画は線画に淡彩』という誤解に基づく洗脳。
○ 『水で溶かせば水彩』というカテゴリーの拡大解釈。
これらによって日本の水彩画は世界的“進化”から遅れをとったのかもしれない。
いったい、いつから日本の水彩は “線画に淡彩”、“アクリル画も水彩” ということになったのだろう???
“油絵が本流(?)”という背景の中で “水彩はスケッチ用” という時代が長かったからかもしれない…。
透明水彩画についての理解不足と単なる色の強さに誤魔化されアクリル画を水彩画として評価する稚拙さもあっただろう。
しかし、過去を振り返ってみると、日本の水彩画は絵の具と水をたっぷりと使ったバルールに基づくイギリス式技法から始まったようだ。
三宅克己(みやけ・こっき 1874- 1954)
「水村」 水彩、紙
制作年不明(おそらく1910〜20年代)
大下藤次郎 (1870-1911)
『尾瀬沼の雨』
1908(明治41)年 島根県立石見美術館蔵
石川鉄一郎 (1871-1945)
詳細不明
鹿子木孟郎(かのこぎたけしろう 1874-1941)
詳細不明
ご覧の通り、到底 “淡彩” とはほど遠い、本格的な “絵画” として日本でも “本当の水彩画”を目指す作家がたくさんいた。
“水彩画 = 線画に淡彩” というのは、実はごく最近そうなっただけの話なのだ。
インターネットの普及、特にSNSの普及によって世界の水彩の情勢も容易に見ることができるようになった。
その結果、もはや “本当の水彩” は完全にその地位を確立し、ワールド・スタンダードとなりつつある。
それは決して“線画に淡彩”ではないし、アクリル画でもない。
元々、水彩画は英語で"watercolor"という。
"transparent(透明)"とわざわざ言わなくても透明水彩のことを指す。
※アクリルで描いたら “アクリル画” であって水彩画ではない。
透明水彩絵の具の特性を駆使し自由に表現するのが“水彩画”という認識の下、海外の水彩画界は百花繚乱、大変魅力的だ。
そして、近年、日本でも“本当の水彩”が再度普及し始めた。
ここ15年位の間の出来事だが、確実に広まりつつある。
さらに、デジタル離れなのか、若い人の水彩画に対する評価が変わってきていることも同時に進行しているようだ。
今後の日本の水彩画の動向から目が離せない。
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