772『無法松の一生』→心の琴線に触れる物語 | 映画横丁758番地

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生きているうちに一度は(何度でも)観ておきたい映画について、変幻自在・巧拙緻雑・玉石混淆で書いています。

福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)生まれの作家・岩下俊作(1906-1980年)

の小説『富島松五郎伝』(第10・11回直木賞の候補に)が原作であり、

「無法松の一生」とのタイトルで、映画化、ドラマ化、舞台化が幾度となくされて

います。

 

主人公は、無学でいささか喧嘩早い富島松五郎という名の人力俥夫。

ちなみに、その「人力俥夫」(じんりきしゃふ)とは、

~人力車をひくことを生業とする人のこと~

と説明されていますから、現在では観光地以外ではほぼほぼ見かけることの無い

絶滅危惧種的な職業ということになりそうです。

 

その松五郎が、ある日のこと堀に落ちて怪我をした少年を助け、家まで送ります。

少年の父親は陸軍大尉であり、これが縁で松五郎はこの家に出入りするように

なるのですが、その大尉は雨天の演習で風邪を引き急死してしまいます。

 

家長を失くした夫人は、息子が気の弱いことを心配して松五郎を頼りにし、

また、頼りにされた松五郎自身は夫人と息子に献身的に尽くしていくのでした。

そして、お話の最後の最後に、多くの日本人の心の琴線に触れるであろう

名場面が用意されています。

 

本作を見た人にしか通じないのかもしれませんが、念のために触れておきます、

~(ずっと後年になって)松五郎は夫人の家を訪ね、夫人に対する思慕を

 打ち明けようとするが、どうしても言い出すことができず、

 一言「ワシの心は汚い」との言葉を吐いて、夫人のもとを去った~

 

さらに、

~その後、松五郎は酒に溺れ、遂に雪の中で倒れて死んだ。

 彼の遺品の中には、夫人と息子名義の預金通帳と、大尉の家からもらった

 祝儀が手を付けずに残してあった~

 

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「無法松の一生」 1958年 監督:稲垣博  

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   三船敏郎 / (子役) / 高峰秀子

 

配役は、三船敏郎(松五郎)と高峰秀子(大尉夫人)という

日本映画を代表する男優・女優ニ大スターの共演になっています。

 

この他にも、大尉役に芥川比呂志(作家・芥川龍之介の長男)、

さらには土地の顔役に笠智衆など、そうそうたる顔ぶれです。

 

また監督は、稲垣浩が務めましたが、こんなエピソードが語られています。

~稲垣浩が1943年(昭和18年)に製作した『無法松の一生』を、

 自らリメイクした作品。

 前作では検閲によりカットされたシーンがあり、本作でその無念を晴らした~

 

その「検閲によりカットされたシーン」については、残念ながら

寡聞にして存じません。

なお、本作は第19回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しています。

 

 

アンティークな作品が多くて恐縮至極にございます。

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