回顧録ーMemoirs of the 1980sー -8ページ目

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

本編では書かなかったことが、
まだどこかに散らばったまま残っている。

若い頃の話もあれば、
中年になってからの出来事もある。
笑える日もあれば、
胸の奥が少し痛む夜もある。
時系列も関係なく、
ジャンルも統一されていない。
ただ、そのどれもが
“俺の人生のどこかに確かにあった時間”だ。
ここには、
こぼれ落ちた断片たちを
気ままに拾い集めた記録を残していく。

 

ビデオテープから始まる、静かな連鎖

 

いつの頃だったか、はっきりとは覚えていない。
ただ、ある日エーイチがふらっと俺の家にやって来て、
古臭いビデオテープを一つ置いていった。


「これ、見ておけよ」


それだけ言って帰っていく。

あいつらしい、説明のない渡し方だった。


テープには、丸っこい、かわいらしい字で
「東京物語」
と書いてあった。
その字を見た瞬間、俺はすぐにピンときた。
ああ、これは“あの子”の字だな、と。

 


エーイチはエーイチで、
あの子から確かに影響を受けていたんだ。
映画の趣味も、価値観も、
あの頃の空気も、
全部がこの一本のテープに詰まっているように思えた。

 

それから何年経ったのかは分からない。
ただ、俺が40歳になった頃の話だ。


ある日、昔よく聴いていたバンドのCDが再販されたことを知った。
そのバンドの中心にいたのは、
エーイチが若い頃にちょいちょい電話していた“あの子”だった。


案内にはメールアドレスが書いてあった。
俺はふと思い立って、そこに連絡を入れた。


「俺だよ」


と名乗り、直接CDを購入した。


すると、ほんの少しだけメールのやり取りが生まれた。
その中で、彼女は素直にこう言った。


「エーイチ君にはすごく影響受けたな」


その一文を読んだ瞬間、
胸の奥がふっと温かくなるのを感じた。

エーイチも、あの子も、
お互いに影響し合っていたんだな、と。


若い頃のブランコの記憶も、
ビデオテープの「東京物語」も、
25年後の病院での偶然も、
全部が静かに一本の線でつながっていく。


なんだよ、これもいい話じゃねえか。
思わず笑ってしまった。