本編では書かなかったことが、
まだどこかに散らばったまま残っている。
若い頃の話もあれば、
中年になってからの出来事もある。
笑える日もあれば、
胸の奥が少し痛む夜もある。
時系列も関係なく、
ジャンルも統一されていない。
ただ、そのどれもが
“俺の人生のどこかに確かにあった時間”だ。
ここには、
こぼれ落ちた断片たちを
気ままに拾い集めた記録を残していく。
45歳、離婚と再出発と西船橋の夜
45歳の頃、俺は離婚を経験した。
離婚って、経験者にしか分からない苦しみがある。
悲しみ、切なさ、感情の浮き沈み、言い出したらキリがない。
結婚式で祝ってくれた人たちへの申し訳なさ。
自分の両親、相手の両親への負い目。
そして何より、娘に悲しい思いをさせたことだろう。
それに金だ。
相手にはそれなりの額を置いてきたし、
ここから娘を4年間大学に通わせる学費、養育費。
さらに自分の新生活の資金も必要だ。
もう、にっちもさっちもいかない状態だった。
首が回らない。
首の皮一枚だけで生きているような、そんな45歳の崖っぷち。
そんな時、俺には小さな──いや、とても大きな幸運があった。
幸運という言い方は少し違うかもしれないけれど。
長年しがみついて働いてきた大手企業で、
人員削減のための早期退職募集が始まったのだ。
俺は迷わず手を挙げた。
そして、かなりの金額を手にした。
もちろん不安はあった。
今後の就職、生活、娘の未来。
でも、娘の大学の学費も、養育費も、自分の新生活の資金も払って、
それでも十分に残るだけの額だった。
あの時の俺には、それが命綱だった。
そして俺は、西船橋の賃貸マンションで新生活を始めることになった。
足枷の外れた俺は、新たな自由を得た。
45歳の再出発だった。