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回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

1985年前後から90年くらいまで、

エーイチに引っ張り回されて映画ばっかり観てた。


あいつは妙に映画にハマってて、

俺を連れていくのが当たり前みたいな顔してた。


最初の頃は石井聰亙の流れだ。
狂い咲きサンダーロード、爆裂都市、水のないプール。
どれも観たあと頭がガンガンするようなやつばっかりで、


「なんでこんなのばっかり選ぶんだよ」

 

と思いながらも、結局ついていってた。


そのうちエーイチの中で“名画座ブーム”が始まった。
ジャンルなんて完全に無視。
気になったものを片っ端から突っ込んでくる。


東京物語。
大人はわかってくれない。
なぜかガンバの冒険まで。


もう意味がわからない。
名画座の暗い館内で、エーイチは前のめりで観てるのに、
俺は横で缶ビール飲みながら
「また変なの連れてきやがって…」とブツブツ言ってた。

 

そして極めつけが『罪と罰』だった


あれは本当に地獄だった。
暗い。
重い。
陰鬱。
画面の空気がずっと湿ってるみたいで、観てるだけで気持ち悪くなる。
酒飲んでたせいもあって、途中で何度も寝た。
でも起きると、まだ同じような暗いシーンが続いてる。


「これ、永遠に終わらないんじゃないか?」


本気でそう思った。
名画座の椅子に沈み込みながら、
時間の感覚がどんどん狂っていく。
映画というより、修行だった。



あまりにも気分が悪くて、
そのあと ピンク映画を観直して帰った。
頭をリセットしないと帰れなかった。
あの“暗黒の3時間20分”を抱えたまま家に帰ったら、
途中で倒れると思った。

 

 今思うと、あの頃の映画は全部エーイチとセットだった
エーイチがいなかったら、
狂い咲きも爆裂都市も、
名画座の東京物語も、
あの地獄みたいな『罪と罰』も観てない。
あいつが連れていく映画は、
いつもどこか偏ってて、
でも妙にクセになるものばかりだった。