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回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

本編では書かなかったことが、
まだどこかに散らばったまま残っている。

若い頃の話もあれば、
中年になってからの出来事もある。
笑える日もあれば、
胸の奥が少し痛む夜もある。
時系列も関係なく、
ジャンルも統一されていない。
ただ、そのどれもが
“俺の人生のどこかに確かにあった時間”だ。
ここには、
こぼれ落ちた断片たちを
気ままに拾い集めた記録を残していく。

 

エーイチと、あの子、そして25年後の不思議な縁

 

二十歳そこそこの頃のことだ。
どこへ行った帰りだったのかはもう思い出せないが、
俺は車でエーイチの家へ向かっていた。


途中でエーイチが「ちょっと車止めてくれ」と言う。
言われるままに停めると、
あいつは迷いもなく電話ボックスへ向かい、
誰かに電話をかけていた。
戻ってくると、


「寄りたいところがあるんだけど」


とだけ言う。
俺は文句も言わず、指示された道を走らせた。


着いたのは、線路沿いの住宅街にある小さな公園。
車で待っていると、前から見覚えのある“あの子”が歩いてくる。
当時、エーイチがちょいちょい電話していた女の子だ。


エーイチは「ちょっと待ってて」と言って車を降り、
その子を連れて公園へ向かった。
二人は並んでブランコに座り、
楽しそうに話していた。

 

あのエーイチが、だ。
少し照れくさそうで、でもどこか誇らしげで。


俺は車の中で1時間ほど待ちながら、
なんだか微笑ましい気持ちになっていた。

 


その後の二人のことは知らない。
自然に離れたのか、何かあったのか、
そこは俺の知らない領域だ。


──そして25年後。


エーイチが病気の疑いで地元の病院を受診したときのこと。
待合室で「○○さん、○○〇男さん」という呼び出しが聞こえた瞬間、
あいつはハッとしたらしい。

昔、あの子の家の表札にあった名前だった。


診察を終えたその“○○さん”を見つけると、
エーイチはためらいもなく声をかけた。


「もしかして○○の○○さんですか。
昔、そちらのお嬢さんと仲良くさせてもらっていて…」


実際の言い回しは違うかもしれないが、
そんなニュアンスだったらしい。
そして、
あの子の父親と少しだけ会話を交わしたという。

 

あいつらしい。
若い頃も、25年後も、
エーイチはいつだって“ためらわない男”だった。