残像①クララサーカス | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

エーイチの背中を夜の闇に見送ったあの夜、
胸の奥にぽっかりと穴が空いたようで、どうにも眠れなかった。
灯りを消して目を閉じると、
静かな暗闇の向こうから、遠い昔の気配がゆっくりと立ち上がってきた。
20年前の笑い声。
若さの匂い。
あの頃の俺たちの、どうしようもなく眩しい時間。
忘れていたはずの光景が、
ひとつ、またひとつと浮かび上がってくる。
最初に蘇ったのは、
エーイチに誘われて観に行った、あのクララサーカスの夜だった。

 

エーイチからの誘いの電話はいつも突然だ。


「明日、空いてるか」
「空いてるよ」
「じゃ7時に本八幡で待ってるから」


それだけ言ったらガチャンなんだよな。
どこに行くのか、何をしに行くのか、いつもわからない。


本八幡駅に着くと、エーイチは改札口前でしゃがんでビールを吞んでいた。
「これ、呑んじゃって」って俺にビールを差し出す。
ビールを呑み終えると「じゃ、行こうか」って歩き出す。

 

画像はイメージです(あくまでもイメージだからwww)


到着したのはルート14ってライブハウスだった。
店に入ると、そこには懐かしい顔があった。

クララサーカスのユミルだ。


「あっ、アキオ君だ、来てくれてありがとう」


もう会ったのは5年ぶりぐらいなのに、

顔も名前も憶えていてくれて、ちょっと嬉しかった。

 

クララサーカスのことは噂には聞いていたんだけど、

実際の音を聴くのは初めてでワクワク、ドキドキだった。
ステージライトを浴びてメンバーがステージに現れる。
ボーカルとバイオリンとキーボードだけ、3人のシンプルな構成だ。
ユミルは小っこくて、痩せっぽちで、大人しそうな女の子なんだけど、

歌い始めると狂気と恍惚というのか、豹変してしまうんだ。


バイオリンの落ち着いたイントロから始まって、

突然、キンキン声のボーカル。
脳天に突き刺さるようだ。


でも慣れてくると、そのキンキン声がシットリした感じに聴こえてきて、

とても不思議な歌声に感動し、聴き入ってしまった。


これ以来、すっかりお気に入りになってしまい、

クロコダイルをはじめ、都内ライブハウスへクララの追っかけ。
足しげく通うようになったのだった。