抜け落ちていた記憶/エーイチと自転車通学と恐怖の2人乗り | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

高校時代編は一度締めたつもりだったけど、どうしても書き残した話があった。
記憶の底に沈んでいたエピソードが、ふとした拍子に浮かび上がってきたのだ。
これはそんな“抜け落ちていた記憶”たちの話。

 

高校1年の頃、

エーイチは幕張から西千葉の学校まで、毎日自転車で通っていた。
もちろん学校は自転車通学禁止。
見つかれば停学だの学長訓告だの、面倒ごとになるのは目に見えている。

なのにエーイチは平然と“もぐり”で走っていた。


理由は単純で、
通学定期代を最初から小遣いとして使い込んでいたからだ。


当時の高校生なら誰でも一度は考える裏技だけど、
実際にやるやつは少ない。
でもエーイチは迷わずやるタイプだった。


そんなある日、放課後にエーイチの家へ遊びに行くことになった。


「俺、自転車だからさ。後ろ乗ってけよ」


深く考えずに荷台にまたがったのが、今思えば間違いだった。
西千葉から稲毛、新検見川、幕張へと抜ける最短ルートは、
道が狭いうえにアップダウンが激しい。


登り坂ではエーイチが立ちこぎを始めるたび、
振り落とされないように必死で荷台にしがみついた。


そして下り坂。
エーイチはノーブレーキで突っ込んでいく。
風を切るというより、風に殴られているようなスピード。
もし転んだら二人ともただでは済まない。
生きた心地がしなかった。


あの時、
エーイチの無鉄砲さと、どこか底知れない怖さを
初めてはっきり感じた。

 

それ以来、
エーイチの自転車の荷台に乗ることは二度となかった。

 

そんだけ(笑)

 

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