第5回:担任ジンとの抗争 | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

ジン──それは俺の担任教師である。
某武道系大学、剣道部出身の体育教師。
アホ学校には必要不可欠な、腕っぷし自慢の武闘派教師。
こいつには3年間、何度となくぶん殴られた。


最初は──掃除の時間。
ふざけて3階のベランダからホウキを放り投げたんだ。
失敗したね。ばっちり見られてたね、ジンに。
案の定、いきなり往復ビンタ。
「人に当たったらどうするつもりだ、大けがだぞ」
「それぐらいわかってるって。馬鹿じゃねえんだから、ちゃんと下を見て投げてんだからよ」
って口ごたえしたら、今度はパンチが飛んできた。
さすがに俺もブチ切れて、「殴るほどの事かよ」って噛みついた。
したらもう止まらない。10連続パンチだぜ。顔、腫れたぜよ。
いや、いや、ほんといい時代だったよな。
教師の暴力、当たり前。


そしてその夜──なぜかジンの奥さんから家に電話がかかってきた。
母親が対応したんだが、話はこうだ。
ジン、家で晩酌してるうちに、つい漏らしたらしい。
「今日、生徒を殴った。顔がはれるほど殴った。やりすぎた」
それを聞いた奥さん、
「すぐに謝罪の電話をしなさい」って言ったらしい。
でもジンは「酒も入ってるし、きちんと話できる状態じゃない」って逃げたんだって。
で、代わりに奥さんが謝ってきたってことなんだな。
武闘派ジンも、家に帰れば弱気なオッサンだった。


なんか笑っちゃうね。くっくっく。