第4回:エーイチ君のこと | 回顧録ーMemoirs of the 1980sー

回顧録ーMemoirs of the 1980sー

激動の80年代、荒れる80年代。
ヤンキーが溢れる千葉の片田舎で、少年たちは強く逞しく、されど軽薄・軽妙に生き抜いた。
パンクロックに身を委ね、小さな悪事をライフワークに、世の風潮に背を向けて異彩を放った。
これは、そんな高校時代を綴る回顧録である。

高校に入学して最初に仲良くなったのは、エーイチ君だった。
なんか薄気味悪くて不気味な奴なんだけど、初めから妙に馬が合った。


そんなエーイチ君は中学時代、とても成績優秀だったそうだ。
でも受験に失敗して、こんな学校に流れてきちまった。まあ、俺と一緒だね。


入学後、初の中間テストの結果が廊下に張り出された。
俺、40位くらい。エーイチ君も同じくらい。
「なんだ、大したことないじゃん」──そう思った。


それから数か月後、期末テストの結果が張り出された。
な、なっ、何だっ!?エーイチ君がトップになってるじゃんか!
マジか、嘘だろ!?一体全体、何があったんだ。
本人に訪ねても、ニヤニヤするだけで答えない。
……マジで天才かよ?


数日後、「帰りに家に寄ってけよ」と誘われるまま付いていった。
裏に回って掃き出し窓から部屋に上がり込むと、目に飛び込んできたのは──高級ステレオコンポ。
30万円くらいするモデルだった。驚いたね。


エーイチ君が一言。「これだよ」
ははーん、すぐにピンと来た。
どんなに生意気言ったり、つっぱっていようが、所詮は親元で暮らす高校生。
ただのガキだよね。
高校受験に成功した暁にはステレオコンポを買ってもらえるはずだったが、見事に失敗。
目標を失い成績は下降線。将来を危惧した親心──「良い成績を収めれば買ってやる」ってことだったんだ。
ステレオコンポ欲しさに懸命に努力したんだな。
「努力すれば夢はかなうのだ」の良い例だよ。


そして3年後、最後の卒業試験の結果が廊下に張り出された。
俺は下から数えた方が早いけどギリセーフ。
エーイチ君は下から3番目。
下には卒業させてもらえなかった○○君と○○さんの2人だけ。
つまり、卒業できた中では最下位。


波乱万丈、かっこいいね。ははは。

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