朝倉慶氏の”金融講座”ブログより~ 5 | GTENさんから皆さんへ”伝えたい事”

GTENさんから皆さんへ”伝えたい事”

皆さんにも”役立ち”そうな情報発信をして行きます^^

株式投資の勧め


 日本では1989年暮れのバブル崩壊から、何と20年以上にわたって基本的

には株式市場の低迷が続いています。この間、いろんな投資話はありましたが、

基本的には国債かないしは低利ですが、元金保証の預金、並びに現金で資産を保

有していた人が救われたのです。
 一般的に日本人は投資に関しては保守的ですから、世間で言われているように

金利が安い、不景気で困ったという問題はあるものの、日本人のマジョリティー

は、この20年というデフレの期間、財産管理は完ぺきとは言えないまでも、そ

れほど酷い状態にはなっていなかったのではないでしょうか? グローバル・ソ

ブリン・ファンドとか外債とか株とか、投資話に乗った人達が火傷を負ったもの

の、日本人の大半はこのデフレ期で実質資産を減らすことはなかったというとこ

ろが大勢だったと思えます。これはお堅い預金好きの日本人の保守性が時代には

マッチして財産保全という意味では功を奏していたということでしょう。

日本の国家破綻は近い!?
 しかし私はもうこのデフレの時代の終焉も近いと思っています。
 昨年、東日本大震災で思わぬ悲劇が東北地方を襲いました。真面目に生きてき

た人々も理不尽に命を落としたのです。津波が容赦なく人々を飲みこんでいきま

した。私はたえず著作で警告を続けてきましたが、日本の財政はどう考えても持

続不能で、国債の暴落から日本の国家破綻が来る日も近いと確信しています。
 その時はまさに、全日本国民に容赦なく経済津波が押し寄せて人々の財産を奪

い去っていくことでしょう。この時は、今まで保守的で堅く、現金並びに預金、

国債などで資産を保有してきた人々は、その資産をインフレによって実質的にほ

とんど失う局面が訪れると思っています。まさに理不尽な津波に東北の人々が流

されたように、日本人の資産も経済津波と共に消え去ってしまうことでしょう。
 この劇的なタイミングがいつか? ということは難しい判断になりますが、私

は、もう現金などの資産はそれほど多く持たずにいわゆる現物資産、株、不動産

、金や貴金属などに資産をシフトすべきであると思っています。

 ここで、最近の国家破綻の例を見て、国家破綻した国々でどんなことが起こっ

たか? ということを株や物価、賃金などの動きを比較してみてみたいと思いま

す。まずはアフリカ南端の国、ジンバブエの例です。ジンバブエでは、1兆倍と

いう激しいインフレに陥って経済が破綻しました。これは有名なドイツの第1次

世界大戦後の賠償金支払いによる大インフレに匹敵するケースです、このケース

を追ってみましょう。


ジンバブエ、アルゼンチン、日本の株価、賃金、物価の推移(※クリックすると

拡大して見られます。)
資料:日経ヴェリタス(12/4)

 日経ヴェリタス(12/4)の資料によれば、ジンバブエの消費者物価はイン

フレが酷くなった2006年末から2008年7月末にかけて15億倍になりま

した。
 一方その間、70銘柄で構成されるジンバブエの産業株指数は同じく2006

年末から2008年11月19日にかけて1兆倍強になったのです。さらに4銘

柄で構成される鉱山株指数は同期間に17兆倍へとなりました。百貨店を経営す

るメイクルズの株価は2007年末の0.00085ジンバブエドルから200

8年11月19日には10京5,000兆ジンバブエドルへと上昇しました。余

りに単位が変わり過ぎてピンときませんが、京の単位は兆の上になりますから、

その京の単位の上にまで上昇した株もあったということで理解すればいいと思い

ます。
 2008年11月19日というのは、ジンバブエではその日まで株が現地通貨

ベースで取引がなされていたということで、この日を最後に取引所は閉鎖、翌2

009年2月18日に、米ドルベースで取引再開となったわけです。
 資料(グラフ1)で示したように、このハイパーインフレの間、労働賃金より

も消費者物価の上昇率が高く、さらには消費者物価の上昇率よりも産業株指数の

上昇率の方が高く、さらには株では、鉱山株指数が産業株指数よりも高くなった

ことは注目です。
 日本が仮に財政破綻から国家破綻に陥った時に、株や不動産、現金など資産ベ

ースの動きはどうなるか? というのは正確に予想するのは難しいところですが

、このジンバブエにおけるインフレ爆発時の労働賃金、消費者物価、産業株指数

、鉱山株指数の比較は参考になるところです。 

ハイパーインフレ時に、株の保有は有効?
 常識的に考えても、インフレに対応できるのは国際的に通用する企業群です。

特に鉱山株などの資源株はインフレには大きく反応しますし、マネーの価値が無

くなる過程でその価値が他の資産に比べて暴騰状態になっていったのは注目で、

日本のケースでも同じことが起きると考えられます。また産業株指数が消費者物

価を凌駕したことも注目です。当然、1兆倍という激しいインフレでは、経済は

完全に破綻しているわけで、その間、多くの企業が立ち行かなくなり、倒産状態

に陥っていったと想像されます。その情勢にあって、代表的な産業株指数が消費

者物価を凌駕した事実は、このようなハイパーインフレ時には株の保有は極めて

有効であることを示していると言えるでしょう。70銘柄で構成された産業株指

数ということは、その企業群の中には倒産した企業や倒産すれすれの企業、また

、インフレに乗じて利益を得た企業もあったことでしょう。それらの平均値とし

て、株式が消費者物価の600倍になったことは興味深い事実です。明らかに、

インフレ時の株式投資の有効性を物語っていると言えるでしょう。またジンバブ

エのケースでは、海外に株式を上場していた企業もインフレの影響を免れました


 次に2001年12月にデフォルト宣言をして国家破綻したアルゼンチンのケ

ースを見てみましょう(同グラフ1参照)。アルゼンチンは国家破綻した200

1年12月末、株式指数であるメルバル指数は295ポイントでした。これが1

0年経って、2011年1月には高値3700ポイントまで約12.5倍に急騰

したのです。この間、当然国家破綻ですからインフレ状態となったわけですが、

消費者物価は10年間で2.5倍ということです。このケースでも株は完全に消

費者物価を凌駕しています。
 面白いことですが、アルゼンチンの株価をみると、アルゼンチンが国家破綻を

した2001年末から上昇が始まってきたのです。それに至る1996年から2

001年末までの5年間は、株価は半分弱に暴落していたのです。これも興味深

いケースです。普通であれば国家が破綻したわけですから、そこから株価は奈落

の底に落ちていくようなイメージを抱きます。ところが逆なのです。国家破綻す

るまでは株価は下げ続け、破綻した後は、10年に渡る上昇相場の始まりとなっ

たわけです。この事実にはどうして? と不思議に思うかもしれません。ところ

がこれこそが株式市場の持つ先見性というものです。
 国家破綻になれば企業が潰れていくのは当然ですが、それ以上の激しいインフ

レが襲うということもあるわけです。アルゼンチンの株価はこのインフレを予見

して、国家破綻直後から上昇が始まったというわけです。そしてその後、10年

間で株価が完全に消費者物価を4倍も凌駕して上昇しているのは興味深いところ

です。

日本ではもう、資産を株や不動産にシフトすべき時期?
 翻って日本はどうかといいますと、これはアルゼンチンが国家破綻するまでの

5年間に株価が下がり続けたケースと似たような段階にあると思います。ヴェリ

タスの解説によれば、日経平均は1996年末を100とすると、2011年末

には44まで下落してまさに半値以下です、その間消費者物価は1.5%の下げ

、まさにデフレです。そして労働賃金は5%近い上昇だったのです。こう見てい

くと、この1990年台から2011年までは現金並びに国債を保有していた人

達だけが損することもなく、デフレに対応してマネーの価値を維持していたこと

が見てとれます。
 しかし今後、日本は持続不能な財政から国家破綻に陥っていくのは必至と思い

ます。その時は今までの投資スタイルが100%変わって、インフレに随時対応

できる株式投資の必要性が高まってくるものと思います。一般的には庶民の暮ら

しは厳しいこととなるでしょうが、その極めて苦しい不景気の中で、株は恒常的

なインフレを受けて上がり続けるでしょう。財産3分法とは昔からの習えですが

、私は国家破綻秒読みのこの局面では、もう株や不動産に資産をシフトすべきで

、これらの上昇の流れは10年単位で続く可能性があると思います。終戦後、1

945年から1989年まで株も土地も上がり続けました。まさに日本はインフ

レ、経済発展の時代だったのです。
 そして1990年初頭から、バブル崩壊、衰退への道が始まったのですが、国

家の借金、国債の無尽蔵の発行、借金生活で漬けを貯めていきます。この間はデ

フレの時代です。そしてこの借金生活が強制的に国家破綻によって不可能となり

ます。その瞬間から今度は、悪性のインフレが始まってくる長いインフレのトレ

ンドに入ると考えるとどうでしょうか? こうしてインフレからデフレ、デフレ

からインフレへと日本は根本的な変化を体験するわけです。当然それに応じた資

産運用が重要です。
 こうして今、お堅い投資で現金だけ、国債だけを保有してきた日本のほとんど

の人達が今度は資産保全の対応に苦慮する時代が訪れることでしょう。
 バブル崩壊に戸惑って、また株が上昇する時が来ると信じて大きな損失を抱え

た投資家達、彼らの身になってみればわかりますが、人間というものは弱いもの

で、同じトレンドが1945年から1990年へと45年間も続いたら考えも変

化させることはできません。成功体験があった人はなおさらです。同じように2

0年にわたって続いたデフレの時代の記憶は、今の人達にとっては抜け出すこと

のできない身にしみついた経験でしょう。しかし、永遠に続く流れなどないので

す。インフレが来てデフレがきて、またインフレが来て経済は繰り返します。「

賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」と言いますが、変化の歴史を感じ取った

人達だけがこれからの時代の勝利者となっていくことでしょう。

 では、どのような金融機関に資産を預ければ安全といえるでしょうか? 一般

的に考えれば大手の金融機関が安全ということになります。それはそうかもしれ

ません、たとえば三菱東京UFJですが、このような日本一の金融機関が仮に倒

れるようなことがあれば、日本は国家として立ち行かなくなってしまいます。い

うならば、主要金融機関は日本そのものと言えるでしょう。しかし、一方で、仮

に国債の暴落が起これば、日本の銀行や生損保はそのほとんどがこの国債投資に

依存していますから、財務的には全滅という事態に陥っていきます。こう考える

と国債が暴落した地点では預金封鎖するか、あるいは日銀が無尽蔵のマネーを刷

って対応するしかありません。どちらのケースも激しいインフレです。 

国債暴落の影響が比較的軽微な金融機関は?
 一方、主要金融機関の中にあって、この国債暴落の影響が比較的軽微ですむの

は、ネット銀行です。これは国債を多くは持っていません。主に決済業務だけで

収益をだしています。そして証券会社です。証券会社は日本の場合は、その収益

は大半が手数料に依存しています。株式や投資信託、外債などの販売手数料で経

営が成り立っているわけです。これらネット銀行や証券会社なども国債暴落とい

う大混乱になれば、不測の事態が訪れる可能性もあります。ただこのケースで、

直接この国債を保有していないといことは強みです。銀行や生損保は国債が暴落

してしまえば、預かった資金が無くなってしまいますが、証券会社の場合は分別

管理といって国の指導で顧客資産と自分の会社の資産は別勘定になっています。

そういう意味では国債の暴落のような大パニックに安全なのは日本の場合は証券

会社と言えるかもしれません。
 もう少し、銀行と証券会社の収益構造を考えるとわかります。銀行や生損保は

預かった資金を運用して利益を得ているわけです。いわば顧客からのお金を自己

勘定で運用しているわけです、ですからこの運用に失敗すれば資金が残りません

。これが金融危機ということです。ところが日本の証券会社は顧客の資産を預か

っているだけです。その顧客が株を買おうが投信を買おうが国債を買おうが、証

券会社はその時に手数料をいただくだけです。証券会社が昨今のように手数料収

入の激減から赤字になることはありますが、日本では分別管理で、顧客の資産と

証券会社の資産は別管理ですから顧客の資産は常に存在しているわけです。もち

ろん混乱で株や投信が大幅な暴落ということはあります。しかしその資産が消え

ることはありません。