後編〜 ROSS LONDON STEPNAC 6× & No.4 MK1 奇跡の出会い | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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私自身が、ワクワクドキドキ出来る事だけを記事にします。
〜 SINCE 2015.4.8

さて、前回に引き続き、今回は、

 

ROSS LONDON STEPNAC 6× 及び、No.4 MK1

 

世界的にも貴重なオーバーホール記録を交えながら、

 

両者の違いを見ていきたいと思う。

 

 

とりわけ、No.4 MK1 の詳細の公表は、

 

世界で初めての事になると思われるので、

 

願わくば、国外の ROSS LONDON マニアの方にも

 

届く事を祈りつつ・・・

 

 

 

早速 まずは、No.4 MK1 だが、対物側のプリズムカバーに

 

小さな止めネジがあり、これを外さないと、

 

対物筒も、プリズムカバーも外せない。

 

尚、この止めネジは、STEPNAC には存在しない。

 

 

No.4 MK1 には、STEPNAC には無い、

 

このような隠れ止めネジのようなものが随所にある。

 

 

 

 

 

 

No.4 MK1 のプリズムカバー、ピントリングには、

赤いペンキが付着していた。

 

これは前オーナーの粗相によって、付いてしまったらしいので、

クリーニングの際に落とさせて頂いた。

 

尚、プリズムカバーは真鍮製のようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

接眼側、対物側、双方のプリズムカバーをクリーニングする。

 

対物側には、イギリス陸軍のブロードアローのマークが刻まれている。

 

 

 

 

 

クリーニング後、プリズムカバー裏には、

新たにシーリング処理を施した。

 

 

 

 

 

 

こちらは、STEPNAC のプリズムカバーだが、

裏側に、油性の靴墨のようなコールタール状の物質が、

ベットリと付着していた。

 

こちらもクリーニングを行い、新たにシーリング処理を施した。

 

 

 

 

 

 

次に対物側の鏡体内部の様子だが、

 

経年の汚れや、異物混入等がなかなかに酷い状態であった。

 

 

 

 

 

内部に、埃や異物混入がかなり見られる。

 

内部の内壁には、遮光、迷光等の対策の為の

黒塗りが、かなり丁寧にされている。

 

 

 

 

 

 

 

こちらは、STEPNAC の対物側の鏡体内部。

 

No.4 MK1 と同様、内壁に黒塗りがされており、

プリズムにも同様に遮光板が乗せられていた。

 

「R」のスタンプは、ROSS の頭文字だろうか?

左右双方の対物側の内壁に確認された。

 

尚、No.4 MK1 では、接眼側の内壁に、Rのスタンプがある。

 

プリズム押さえの金具も、材質が異なっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

No.4 MK1、STEPNAC、それぞれのクリーニング後の

鏡体内部の様子。

 

No.4 MK1

 

 

 

STEPNAC 6×

 

 

 

 

 

 

双方共に、下陣笠も汚れが酷かったが、

やはり、この部分も材質が異なっている。

 

どうやら、No.4 MK1 には真鍮製の部品が多用されており、

STEPNAC の方は、アルミ合金に置き換えられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

No.4 MK1、STEPNAC、それぞれの対物部のオーバーホールの様子。

 

プリズムに遮光板が装着されていたり、

鏡体内部の内壁に黒塗りがされていたりするが、

対物レンズには、遮光筒のようなものは

装着されていないようであった。

 

 

 

 

 

No.4 MK1 は、やはり真鍮製の部品が多用されている。

 

 

 

 

 

 

 

続いて、こちらは STEPNAC 6×

 

 

 

 

 

 

対物レンズが収まる周囲にも、黒塗りがされているが、

各所剥がれ落ちていたので、修復を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対物部の部品点数、構成等は、No.4 MK1 と同様のようだ、

 

尚、今回のSTEPNAC の個体は、No.4 MK1 同様に、

偏心リング、及び 固定リングが真鍮製であったが、

アルミ製の個体も存在する。

 

また、やはり対物レンズの遮光筒は、

STEPNAC にも見当たらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて、接眼部のオーバーホールだが、

No.4 MK1 は、アイカップにも 隠れ止めネジがあり、

これを外さないと、アイカップが取り外せない。

 

尚、この止めネジも STEPNAC には存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

この時代の軍用機等によく見られる、接眼筒と鏡体の固定ネジ。

 

これを緩めないと、接眼筒を外す事が出来ない。

 

 

 

 

 

 

STEPNAC の方は、前オーナーが、

この固定ネジの存在を知らずに、

無理矢理に力任せに外そうとしたと思われる、

かなり深い傷が付いていた。

 

我が国の、偕行社 等の十三式双眼鏡でも、

同様の傷が付いた個体が非常に多い。

 

場合によっては、接眼筒が鏡体に装着不可な程、

ダメージのある個体も時々見掛ける。

 

こう言った個体を見ると、胸が痛い。

 

自身でメンテナンスを行おうとする、

チャレンジ精神は素晴らしいが、

双眼鏡のオーバーホールをナメ過ぎである。

 

 

 

 

 

 

 

接眼部を分解して、ピントリングのオーバーホールの様子。

 

No.4 MK1 は、グリスが固着し、かなりの汚れも見られた。

 

 

 

 

 

 

 

No.4 MK1 左右の接眼筒とピントリングを分解した様子。

 

文字にすると、たったの一行だが、

 

ピントリングが固着していた為、ここに至るまでに、

 

実は、かなりの労力と時間が費やされている。

 

 

 

 

 

 

 

クリーニングを行う前に、

まずは接眼レンズを取り外したのだが、

No.4 MK1 は、何と!!

レンズを固定する固定リングを、

更に固定する為の、非常に小さなネジが、

ピントリングの端に仕込まれていた。

 

何とも芸が細かい。

 

STEPNAC には、この小さな止めネジは勿論、存在しない。

 

画像はクリーニング後に、レンズを装着したもの。

 

 

 

 

 

 

止めネジを外して、レンズを順に取り外すが、

非常にコストの掛かった、贅を尽くした感のある構造であった。

 

 

 

 

 

 

FOV= 192m/1000m もの広視界を誇るが、

意外にも、エルフレ型のレンズ構成で、

この時代の広角双眼鏡に多く見られる、

非球面レンズは採用されていないようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

接眼レンズには、コバ塗りがされていたようであったが、

やはり剥げてしまっていたので、

再施行を行なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

レンズを取り外した後、

まずは各所、徹底的にクリーニングを行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピントリングは、接眼レンズの収納筒も兼ねているが、

内壁には、丁寧にコバ塗りがされていた。

こちらは全く剥げておらず、非常に良い状態を保っていた。

 

また、ピントリングは真鍮製で、

敬意を込めて、ピカピカに仕上げさせて頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いてこちらは、STEPNAC の接眼部を分解した様子だが、

ピントリング部の構造が、No.4 MK1 とは、

少し違っているようであった。

 

また、ピントリングはアルミ合金製であった。

 

 

 

 

 

 

 

ピントリング内の接眼レンズ収納筒の内壁は、

No.4 MK1 同様に、コバ塗りがされていたが、

剥がれ落ちてしまっているのか、

もしくは、コバ塗りはされておらず、

単に、接眼レンズのコバ塗りが付着していたかの

いずれかだと思われるが、

恐らくは、後者のように思う。

 

せっかくなので、No.4 MK1 同様に、

コバ塗りの施行を行なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

接眼レンズの方も、コバ塗りが剥げてしまっていたので、

再施行を行う。

 

ちなみに、本機に限らず、CARL ZEISS JENA製でも、

はたまた、日本光学製であっても、これまでの経験上、

50年以上前の双眼鏡は、大抵の場合、

接眼レンズ、及び、対物レンズのコバ塗りが、

剥げてしまっている。

 

つまりは、メーカー、機種に関係なく、

50年以上前の双眼鏡で、中古市場に出ている殆どの個体は、

レンズのコバ塗りが剥げてしまっていると

考えて良いと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に双眼鏡の要、プリズムのクリーニングの様子。

 

No.4 MK1 は、ご覧のように、当初はカビが酷い状態であった。

 

幸い、カビ痕が残る事なく、綺麗な状態が蘇った。

 

 

 

 

 

 

 

続いて、STEPNAC のプリズム。

 

ROSS LONDON は、自前で国内にて、

ガラス材の供給を行ったと思われるが、

CARL ZEISS JENA で使用される、

Schott社のガラス材とは、かなり質感が異なる。

 

No.4 MK1 とも、少し質感が異なるように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

STEPNAC の方も、カビが発生していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

全てのクリーニング、オーバーホールを終えて、

光軸調整を含めた、最終調整に入る。

 

念の為、鏡体内部にアルゴンガスも封入させて頂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

完成後の姿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部品に真鍮を多用した、No.4 MK1 は、

STEPNAC よりも、約90gも重い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、完成後に、STEPNAC、No,4 MK1、

 

それぞれを覗いてみた。

 

 

ROSS LONDON の最高傑作、STEPNAC と、

 

幻の名機、No.4 MK1 は、一体どんな世界を見せてくれるのだろう。。。

 

 

ただ、残念ながら、両者共に接眼レンズや対物レンズ等、

 

光学系ガラス材が、少々劣化している兆候があった為、

 

やれる限りの事は全て行なわせて頂いたとは言え、

 

本来の完全な状態のパフォーマンスを

 

確認する事は出来なかったのだが、

 

それでも、FOV = 192m/1000m の広い視界は圧巻であり、

 

また、周辺の歪みも非常に少なく、

 

極めて優秀な光学設計だと感じられた。

 

 

ただし、光学系の劣化の兆候の影響を差し引いても、

 

CARL ZEISS JENAや、Busch、HENSOLDT、LEITZ、

 

はたまた、KRAUSS 等と比べてみた時に、

 

同じノンコートレンズでも、若干コントラストが低く、

 

透過感が少々劣るように感じた次第だ。

 

恐らくは、ガラス材の差なのではないか?と思われる。

 

 

もっとも、こう言った 戦前の名機は、

 

そもそも、存在そのもの自体に大きな価値がある訳で、

 

ましてや、No.4 MK1 のような歴史的にも価値のある、

 

幻の名機は、拝めるだけでも幸せと言うものだ。

 

 

やれ、コントラストがどうとか、周辺歪みがどうとか、

 

そう言った一般論的な凡庸な評価は野暮だと言うべきかも知れない。

 

 

 

 

それにしてもである。

 

前回の、Busch Hellux 6×36 も広視界であったが、

 

こう言った広視界の双眼鏡を覗いていると、

 

何とも開放的で、非常に気持ちが良く、

 

一般的な視野角の双眼鏡が非常に窮屈に感じてしまう。

 

 

私個人的には、やはり広視界タイプの双眼鏡が好みのようだ。

 

特に、景色観望は広視界タイプに限る。

 

 

 

最後に、このような歴史的にも極めて貴重な双眼鏡を、

 

手掛けさせて頂くご縁を頂いた事、

 

そして、それをこうして世に公表させて頂けた事、

 

全ては、私を信じて託して頂いた、オーナー様のお陰であり、

 

本当に、心より感謝申し上げる次第である。

 

 

もし「感謝」と言う言葉以上に、

 

感謝の気持ちを伝える言葉が存在するのなら、

 

その言葉を贈りたいと思うくらいに、

 

大変にありがたき幸せである。

 

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

いつもお読み頂き、本当にありがとうございます。

 

皆様に幸多き事を心より願っております。

 

感謝

 

 

 

〜 お陰様で5周年 〜

皆様方には、心より感謝申し上げます。

 

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