DEKAR 10×50 イエナ初のアッベ・ケーニッヒ プリズム 搭載シリーズ機 | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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私自身が、ワクワクドキドキ出来る事だけを記事にします。
〜 SINCE 2015.4.8

世間は相も変わらず、

 

うんざりするニュースばかりだが、

 

せめて今から少しの時間は、世間の事は忘れ、

 

皆様にとって、ワクワク楽しい時間となる事を願いつつ、

 

書いてみたいと思う。

 

 

 

さて、皆さんは、DEKAR 10×50 と言う、

 

カールツァイスイエナで初めての、

 

アッベ・ケーニッヒプリズム搭載モデルをご存知だろうか!?

 

 

前身となる、D.F. 10×  が、1914年に世に出て、

 

引き続き、同年に、DEKAR 10×50 が登場した。

 

( 名称が違うだけで、中身は同じ、)

 

 

 

DEKAR 10×50 、及び D.F.10×50 は、

 

1914年〜1924年9月頃までの約10年間 生産され、

 

主に、海軍など、軍用機として使用されたようだ。

 

 

ちなみに、1928年頃からは、ポロプリズム使用の、

 

皆さんもよくご存知の、DEKARIS  10×50 として生まれ変わる。

 

 

その後、CARL ZEISS JENA では、アッベ・ケーニッヒモデルは、

 

2度と作られる事はなく、その意味では非常に短い期間の

 

幻のようなモデルとも言える。

 

 

また参考までに、CARL ZEISS JENA初のアッベ搭載モデルは、

 

正確には 1911年に一足早く生産が開始した、

 

NOCTAR 7×50 ( D.F. 7× ) こそが、CARL ZEISS JENA 初の

 

アッベ・ケーニッヒ プリズム搭載モデルと言えるかも知れないが、

 

NOCTAR 7×50、DEKAR 10×50、DODEKAR 12×50、

 

この3機種のシリーズを、CARL ZEISS JENA初の、

 

アッベ・ケーニッヒ搭載モデルと呼べるのではないかと思う。

 

 

 

 

 

 

 

      ( 画像元 ハンス・シーガー博士 著書より引用 )

 

 

 

 

その、幻の銘機、DEKAR 10×50 が、

 

私の元にやって来たのである。

 

完全オーバーホールの依頼と言う事であった。

 

 

なんでも、依頼のあったお客様、仮に「Q様」としよう。

 

 

その、Q様が何度か双眼鏡の修理を依頼されていた、

 

某カメラ店さんに 持ち込んだところ、

 

分解不能という事で、返却されたそうだ。

 

 

私のところには、そう言った経緯でやって来る個体が、

 

少なからずあるが、今回もそのような経緯であった。

 

 

 

Q様より送られて来た、DEKAR 10×50 は、

 

どこもかしかも腐食しており、機能は完全に固着していた。

 

 

シリアルナンバーは、当初は錆で見えなかったが、

 

オーバーホール後に、1918年製である事が判明した。

 

 

 

DEKAR 10×50 ( または、D.F. 10× ) は、

 

1914年から製造が開始されたが、

 

本機はシリアル番号から、1918年の製造個体と判明した。

 

600台生産されたロットの中の1台である。

 

 

1918年、、、

 

そう、今から100年以上も前の双眼鏡なのだ。

 

 

それにしても、錆が酷い・・・

 

 

私は何とかして、この極めて貴重な幻の銘機を、

 

完全に復活させてあげたい気持ちで一杯になり、

 

胸が熱くなったのである。

 

 

 

↓ オーバーホール前の、DEKAR 10×50

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、これは、なかなか手強そうだ・・・

 

 

しかしながら、そう感じる程に、

 

私は興奮し、ワクワクするのである。

 

もう、殆ど病気か、変態である。

 

 

 

DEKAR 10×50 が届いたその日から、

 

私と DEKAR 10×50 の蜜月が始まった。

 

 

私は来る日も来る日も、朝から晩まで、

 

風呂に入ってる時も、寝床に入ってからも、

 

頭の中は、「 DEKAR 10×50 」の事で一杯になった。

 

 

何処から、どういう風に、アプローチしようか!?

 

固着した箇所を、どのように分解するか!?

 

どういう順番で、オーバーホールを行うか??

 

それを行う為に、必要なモノは・・・!?

 

 

頭の中で、何度もシュミレーションを行い、イメージする。

 

 

私の日常は、いつもそんな感じである。

 

 

そして、作業が難航したり、行き詰まった時は、

 

風呂の湯舟に浸かっている時などに、

 

ふと、アイデアが閃いたりするのである。

 

 

そのアイデアを元に、専用の道具を作ったり、

 

足りないものを買い足したり、他の道具を応用したり、

 

既に持っている道具を改造したりと、

 

いつも、閃いたアイデアによって、助けられて来たのである。

 

 

さて、いよいよ作業手順のイメージも固まり、

 

DEKAR 10×50 のオーバーホールに取り掛かり始めた。

 

 

 

まずは、対物側から始めたが、DEKAR の対物は、

 

ユニークな構造をしており、画像のように

 

対物筒が伸びるようになっている。

 

 

これは恐らくは、カメラのレンズフードのような、

 

フレアや迷光を防ぐ目的だと思われる。

 

レンズコーティングが無い時代の、アイデアなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分解して対物レンズを取り出したのだが、

 

さすがに、100年以上も前の個体だけあって、

 

各所の汚れが酷かった。

 

 

画像のBefore の方は、

 

実はもう大分 汚れを取った後で、

 

写真を撮る事を思い出して撮影したのだが、

 

当初はもっと、汚れが酷かったのである。

 

 

対物枠周囲の青い部分だが、

 

フェルトのようなものが巻かれていた。

 

 

 

 

 

 

レンズも、汚れや曇りが、相当酷かったので、

 

徹底的に、クリーニングを行った。

 

 

 

次に 接眼側である。

 

 

まずは、接眼部分を外す。

 

 

 

 

 

接眼部を分解する。

 

文にすると、たった一行だが、

 

これがなかなか大変であった。

 

 

 

 

ピントリングのネジ切り部のクリーニングを行う。

 

上の画像と比較すると、

 

違いがよく分かるのではないだろうか。

 

 

続いて、接眼レンズをクリーニングした後は、

 

ピントリング部に、ヘリコイドグリスを塗る。

 

 

 

 

いよいよ遂に、錆で固着していた、

 

プリズムカバーを開ける・・・

 

 

プリズムカバーの下には、

 

更に金属のぶ厚いプレート板があり、

 

2重構造になっている。

 

 

ネジの一本一本まで、非常に頑丈で精密である。

 

 

 

 

 

 

 

アッベ・ケーニッヒのプリズムユニットが見えた!!

 

 

 

 

前に転がっている丸い部品は、

 

眼幅調整のロックネジである。

 

 

ここも、錆が酷く、眼幅調整の目盛りも

 

錆に埋もれて、目視が全く出来ないばかりか、

 

目盛りの存在さえ、分からない。

 

 

 

 

 

いよいよ、アッベ・ケーニッヒプリズムを取り出す。

 

何と 美しいのだろう。。。

 

 

それは、感動の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

それでは皆さま、じっくりとご覧下さいませ。

 

 

日本初公開の ( もしかしたら、世界初公開かも!?)

 

DEKAR 10×50 アッベ・ケーニッヒプリズムです。

 

 

 

とんでもなく美しいです。

 

とんでもなく精緻です。

 

メカニカルビューティーの極み です。

 

美し過ぎます。。。。。

 

 

 

100年以上も前に、日本がまだ大正の時代に、

 

こんなモノを造ってしまっていた、

 

ドイツと言う国は、何とも恐ろしいです。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやぁ〜、、、改めて、

 

カールツァイスイエナ と言う光学メーカーの

 

恐ろしいまでの知恵と技術力を思い知らされました。

 

 

100年以上も前ですよ!!

 

日本はまだ、大正時代ですよ!!

 

あまりにも凄くないですか!?

 

 

 

アッベ・ケーニッヒプリズムはユニット型なので、

 

全ての面のクリーニングは出来ないのであるが、

 

可能な面だけ、クリーニングして、慎重に元に戻す。

 

 

最後に、プリズムの位置を調整し、光軸を調整する。

 

これがまた、なかなか大変で面倒な作業なのである。

 

 

 

全ての光学系のクリーニングと調整を行った後、

 

最後は、錆を取り除いた後の外装の仕上げである。

 

 

実は、これには、色々と悩まされた。

 

 

錆を落とした過程で、塗装も剥げてしまっているので、

 

( 錆びた時点で塗装は既に崩壊している。)

 

金属地のままにするか、それとも塗装をするか・・・

 

 

色々と考えていた挙句、今回もやはり、

 

風呂に入っている時に、ふと閃いたのが、

 

ブルーイング処理をする、と言う事であった。

 

 

これは、別名 黒錆加工とも言われ、

 

モデルガンや、鍛造鋼のナイフ等で、よく行われる手法だが、

 

有害な錆の再発防止にもなり、正に一石二鳥である。

 

 

 

個人的には、  DEKAR 10×50 には、

 

結果的に、この ブルーイング処理が、

 

非常にマッチしたように思っている。

 

 

 

非常に渋く、重厚でありながらも、

 

悠久の歴史の重みも感じさせてくれる、

 

そのような 雰囲気になったように思うのだが、

 

如何だろうか、、、!?

 

 

ちなみに、プリズムカバーとブリッジ( 羽根 ) 等では、

 

処理を少し変えている。

 

 

ブリッジ( 羽根 ) 部分は、下地を

 

鏡面に近くなるまで磨き上げ、より丁寧に、

 

プリズムカバーや接眼筒 等は、

 

敢えてラフに仕上げた。

 

 

眼幅調整の目盛りも、目視出来るように復活した。

 

 

 

 

 

 

 

 

また、この DEKAR 10×50のグッタペルカは、

 

後のものとは違い、材質が 革 であった。

 

 

なので、革専用のクリーナーで汚れを落とした後、

 

保革クリームを塗布しておいた。

 

 

ちなみに、DEKAR 10×50 が登場した、

 

1914年頃の個体は、革ではなく、

 

硬質ゴムのような材質だったようだ、

 

 

また、プリズムカバーの止めネジが、

 

本機のように3本ではなく、4本となっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、オーバーホール前の状態と比較してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、皆さんが気になるのは、

 

この DEKAR 10×50 の見え味だろう。

 

 

実はこれには、私も驚いたのである。

 

 

全てのオーバーホールが完了して、

 

覗いてみた DEKAR 10×50 の見え味は、

 

目を疑うくらいに、シャープであり、ヌケが抜群で、

 

とても繊細で美しい世界が、そこにあったからである。

 

 

FOVは、87m/1000m と、少し狭めで、

 

決して、広い視界ではない。

 

 

しかしながら、

 

何も足さない、何も引かない、

 

そんな アキュレイトでニュートラルで、

 

それでいて、非常に美しい像に、

 

一瞬、心が奪われてしまった。

 

 

何度も言うが、100年以上も前に、

 

カールツァイスイエナは、

 

既に双眼鏡の性能を、究極まで昇華させていた、

 

と言っても、過言ではないかも知れない。

 

 

今回、このような貴重な機会を与えて下さった、

 

オーナーの Q様には、心より感謝申し上げる次第である。

 

 

ここまでお読み頂きまして、

 

ありがとうございました。

 

 

皆様の明るい未来を、そして平穏無事を、

 

心より お祈り申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

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