EARTH KOHGAKU GELBON 6×25 大日本帝国陸軍 双眼鏡 完全レストア | BLRM ブラッキー リッチモア ~ Be Lucky Rich More!! のブログ

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ギター、双眼鏡、オーディオ、 趣味関連の記事を書いていく予定です。
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私自身が、ワクワクドキドキ出来る事だけを記事にします。
〜 SINCE 2015.4.8

 

 

普段は、カールツァイスイエナや、カールツァイスの

 

古い双眼鏡の修理をさせて頂くことが殆どなのだが、

 

今回は、非常に珍しい双眼鏡の 修理依頼があった。

 

 

戦前に我が国で、オペラグラスや、

 

グッチと呼ばれた 豆カメラ等を中心に

 

光学機器を製造していたが、終戦と共に消えてしまった、

 

幻の、アース光学 EARTH KOHGAKU K.K.

 

GELBON 6×25 という 大日本帝国 陸軍で使用されていた、

 

軍用の双眼鏡だ。

 

 

言わば、我が国の DIENSTGLAS である。

 

 

1940年台 前半頃の製品だと思われる。

 

実に、約80年前の製品である。

 

 

 

 

 

 

 

( 画像は、お預かりした時の状態。)

 

 

 

 

何でも、依頼のあったお客様のお祖父様の形見の品、

 

という事で、それはそれは、大切な宝物であるとの事。

 

 

 

実際に戦場で使用された双眼鏡・・・

 

 

戦争を体験されたお祖父様の、激動の生涯を想うと、

 

何とも言い難い、神妙な気持ちとなり、

 

修理を始めさせて頂く前に、思わず 

 

双眼鏡を前に、合掌 黙祷をさせて頂いた。

 

 

 

 

オーナー様からのリクエストは、以下の通りであった。

 

・ 光学系を極力、完全な状態にしたい。

・ とりわけ、レティクルは可能な限り 良い状態で生かしたい。

・ タッチペイントは全て除去して欲しい。

  ( 傷や、塗装の剥げは可 )

・ グッタペルカは張り替えて欲しい。

・ 完調な状態にレストアして欲しい。

 

 

今回は、グッタペルカの張り替えもあったので、

 

1ヶ月程、納期を頂戴するよう お願いした。

 

 

 

まずは、外観から状態を確認する。

 

 

やはり古いものなので、全体的に、くすんでおり、

 

グッタペルカは色褪せし、ヒビや割れが見られ、

 

いつ剥がれてもおかしくない状態であった。

 

 

プリズムカバーの GELBON 6×25 や EARTH KOHGAKU K.K

 

等の文字も、くすんで 不鮮明な状態であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

対物レンズ周りは、遮光の為の溝も切られ、

 

とても、丁寧で精巧な作りである。

 

 

 

 

 

対物レンズカバーを外す。

 

金色に見えているのは、恐らく真鍮だろう。

 

 

 

 

 

続いて、対物レンズ、対物側のプリズムカバーを外す。

 

 

 

 

驚いた事に、プリズムカバーの裏側に、

 

密閉が目的なのか、緑色の粘土のようなものが、

 

詰められていた。

 

匂いといい、質感といい、正しく 粘土である。

 

 

 

 

 

 

 

まずは、これらを取り除き、クリーニングを行う。

 

 

クリーニング後は、不要なタッチペイントを除去し、

 

プリズムカバーを磨き上げた。

 

 

 

 

 

対物側の鏡体内部

 

 

プリズムを押さえる金具も、錆を落として、

 

磨かせていただいた。

 

 

 

 

 

 

プリズムを外した状態。

 

初期のデルトリンテムを彷彿とさせる構造である。

 

 

プリズムの台座が一段低くなっており、

 

プリズムが、しっかりと固定される構造である。

 

 

1Qマークが無くなった後年のデルトリンテムよりも、

 

ずっと精密な造りであった。

 

 

 

 

対物側のプリズム。

 

 

アース光学 GELBON 6×25 のプリズム画像は、

 

ネット上、恐らくは 初登場となるだろう。

 

 

もっとも、プリズムに限らず、内部も含め、

 

全て、世界初公開 となるのではないだろうか。

 

 

いずれにせよ、極めて貴重なショットだと思われる。

 

 

 

 

 

 

プリズムは、経年を考えると、カビもなく、

 

保存状態が良かったのか、とても綺麗な状態であったが、

 

わずかに曇りが生じていたので、殺菌処理の後、

 

可能な限り クリーニングを行った。

 

 

 

 

 

次に、接眼側に手を付ける。

 

上陣笠内は、ご覧の通り、長年の汚れが酷い状態であった。

 

 

また、分解を試みた、傷があるようだ。

 

 

 

 

クリーニング後

 

 

 

 

 

接眼筒を外す。

 

接眼筒には、精巧なローレット加工がされている。

 

非常に 精緻な造りである。

 

 

 

ちなみに、アイカップ部分も レストア処理し、

 

出来る限り、美しい状態となるように努めさせて頂いた。

 

 

恐らくは、ベークライト製だと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

既に、お気付きの方も、いらっしゃるかも知れないが、

 

この双眼鏡の、いたる所に 「3」 の文字 が彫られてある。

 

 

対物側の縁、陣笠内、プリズム、プリズムカバー裏・・・

 

まとめると、次の画像のような感じとなるが、

 

この 3 は一体、何を意味するものなのであろうか??

 

 

 

 

 

 

 

接眼側のプリズムカバーを外す。

 

 

 

 

接眼側のプリズム押さえの金具も、磨かせて頂いた。

 

 

 

 

 

 

接眼側のプリズム。

 

 

対物側と違い、方向性が決まった形状となっている。

 

 

非常にタイトな造りで、プリズムを取り外すのに

 

なかなか苦労した。

 

 

また、接眼側は、対物側以上に 曇りがあったので、

 

こちらも、殺菌処理の後、徹底的にクリーニングを行う。

 

 

 

 

 

 

 

次に、グッタペルカの張り替えである。

 

( 実際は、こちらの作業を先にしています。)

 

 

 

まずは、 グッタペルカを剥がしていきます。

 

経年で、色褪せし、劣化が進んでました。

 

 

 

 

 

グッタペルカを 全て 剥がした状態 ↓ 。

 

茶色く見えるのは、接着剤である。 ( 恐らくは膠 と思われる。)

 

 

 

 

 

 

グッタペルカを剥がして、初めて露見したのであるが、

 

右の鏡体には、腐食が見られ、左の鏡体には割れがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

腐食部分、残った 膠(ニカワ) も 全て 取り除く。

 

 

 

 

 

 

 

 

錆と、元の接着剤を 完全に取り除いた後、

 

軽くサンドペーパーで仕上げる。

 

 

ちなみに、縞々のゼブラのような模様は、

 

今回の傷ではなく、元々の状態である。

 

 

恐らく、接着剤がよく効くように、

 

敢えて傷を付けていると思われる。

 

 

 

 

裏側も同様に処理を行う。

 

ここまで、下地を仕上げたら、いよいよ

 

新たに、グッタペルカを張り直していく。

 

 

もちろん、天然のグッタペルカや、当時のものは

 

入手不可能なので、代替品となるのは仕方がない。

 

 

 

ちなみに、このグッタペルカの張り替え作業で、

 

最も困難なのは、間違いなく 型取りである。

 

 

一から、型を取る必要があり、1mmの誤差も許されない。

 

しかも、複雑な曲面構成のボディーである。

 

言わずもがな、非常に難しい作業であった。

 

 

 

新しく、グッタペルカを張った状態。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に、右の接眼側にある、軍用機ならではの、

 

レティクルレンズである。

 

 

 

この レティクルレンズは、極めて 曲者で、

 

プリズムのクリーニング以上に、非常に難しい。

 

 

目視では、全く 認知が出来ないような、

 

微小なチリですら、付着していると、

 

大きな異物となって、見えてしまうからだ。

 

 

私は、作業部屋の空間は、埃は勿論の事、

 

空気中の微小なチリも、極力無くすよう、配慮しているが、

 

そうしないと、いくら拭き上げても、

 

この レティクルレンズの異物や汚れが取り切れない。

 

 

チリを引き寄せてしまう、微弱な 静電気も要注意だ。

 

 

 

そもそも、このレンズを取り外すのも

 

細心の注意が必要である。

 

 

 

クリーニングしては、接眼部を元に戻して確認し、

 

異物があれば、また外して、クリーニングのやり直し。

 

 

何度も何度も、これを繰り返し、

 

ようやく、納得の行く状態となる。

 

 

 

次に、レティクルレンズの角度を合わせるのだが、

 

これも、同様に、接眼部を元に戻して確認し、

 

角度が悪ければ、また外して調整・・・

 

 

これを何度も繰り返し、65mmの目幅で、

 

平行となるよう、調整して行く。

 

 

ある意味、光学系のクリーニングや調整で、

 

最も、骨の折れる作業かも知れない。

 

 

 

アース光学  GELBON 6×25 のレティクルがこれである。

 

 

 

 

 

 

横の目盛りだけでなく、縦にも目盛りがあり、

 

とても、精密な印象を与える、レティクル( レンジファインダー ) である。

 

ちなみに、この レティクルがあると、双眼鏡は

 

「光学兵器」 とみなされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、この EARTH KOHGAKU GELBON 6×25 の、

 

プリズムカバーの文字は、何と 象嵌(ぞうがん) 仕様なのである。

 

 

 

象嵌とは、工芸技法の一つなのであるが、

 

彫刻された文字に、錫などの金属を流し込み、

 

その上から塗装を重ね、

 

彫刻に流し込まれた金属地が見えるまで、

 

その塗装を研磨して行く・・・

 

 

と言った、とても手の込んだ 工芸手法である。

 

 

この美しくも、貴重な象嵌で彩られた文字を、

 

極力 美しい状態に磨いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての作業が完了し、完全にレストアされた、

 

アース光学 GELBON 6×25 のお姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考え得る限り、光学系も蘇った、

 

この EARTH KOHGAKU  GELBON 6×25 の見え味は、

 

とても、素直で 日本らしい、たおやかで、

 

清々しくも美しい像であった。

 

目や脳が疲れにくい、とても自然な像である。

 

 

ノンコーティングという事もあり、さすがにコントラストは低いが、

 

十分に明るく、レティクルも鮮明で、

 

今でも十分、実用可能なレベルである。

 

 

MADE IN JAPAN  の底力を垣間見たような、

 

とても精密で、丁寧な造りの双眼鏡であり、

 

日本の技術力の凄さ、他の真似から吸収し、

 

昇華させるスキルの高さを、改めて、感じ入った。

 

 

 

今回、家宝とも言えるような、大変貴重な品を、

 

下名に託して頂き、本当にありがとうございました。

 

この場を借りて、あらためて 深く感謝申し上げます。

 

 

 

 

最後に、後日 オーナー様より、

 

大変嬉しいご感想を頂戴しましたので、

 

それを追記にて、以下に掲載させて頂きたいと思う。

 

 

 

「 先刻、現物を受領致しました。

 

  素晴らしい出来映えです。言葉もありません。

 

  当方の思惑通りに完璧に仕上げていただき、

 

  心より、御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

 

  これほど見事に蘇らせて頂いた、匠の技に敬服致します。

 

  近々、墓参りに出掛けますが、とても良い報告が出来そうです。

 

  また、ブログ記事にしていただいた事で、

 

  いつでも我が愛機の再生状況を確認することが出来ます。

 

  これほど、嬉しい事はありません。

 

  我が家の家宝として、大切にしていく所存です。

 

  本当にありがとうございました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後まで、閲覧下さり、ありがとうございました。

 

感謝

 

 

 

 

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