皆さん、よくご存知の 「 1Q 」マーク であるが、
このマークが意味するところの 真の理由、真相が、
長い間、この国では謎のままであった。
デルトリンテムだと、1951年辺りから、1970年代初期辺りまで、
デカレムやテアティス、ノビレム 等は、もっと後年まで、
この 1Qマークが刻まれている。
1Q ・・・
つまりは、First Quality ファーストクォリティ の略である。
さて、果たして、このマークに、
意味があるのか!? 無いのか??
長い間、我が国の双眼鏡マニアの間でも、
過去にも、よく議論が交わされていたようだ。
ネット上等でも、1Qマークとは何なのか?
どういう意味があるのか? 等の質問をよく見掛ける。
また、このマークに 特別な意味は無い、
と考える識者も、少なくなかったようである。
さて、最近になって、私はこのマークの真相を、
ようやく知り得る事が出来た。
私のサイト上では、一足お先に触れているのだが、
今回は、より詳しく 掘り下げて書こうと思う。
この、1Qマークの真相に触れるのは、
少なくとも、私の知る限りに於いては、
我が国では 初めての事、と思われる。
つまりは、本邦初公開となる。
今後、この1Qマークを巡る議論に、
ようやく 終止符が打たれるだろう。
結論から言うと、この 1Qマーク は、
当時の 東ドイツ( DDR ) に設立された、
ドイツ品質 製品検査局 (DAMW) によって、
非常に厳しい試験をパスし得た製品にのみ、
授与されたものであり、
名誉の象徴、世界最高品質の証、とも言える、
正に、ファースト・クォリティの証明 であったのだ。
時は、1950年。
旧 東ドイツ( DDR ) において、新たに設立された、
公的な、品質マークの授与機関である、
この ドイツ品質 製品検査局 ( 以下 DAMW )での
1Q 品質検査試験に、各メーカーは、
任意で 申し込む事が可能であった。
また、申込みは 製品毎 にする必要があった。
メーカーとしてではなく、1製品として試験を受ける。
よって、1Qマークは、
個々の製品に 与えられたマーク なのである。
これで、カールツァイスイエナの製品で、
・ 何故、1Qマークのあるものと、
無いものが存在するのか??
・ 何故、製品によって、
1Qマークが刻印されていた時期や、
その期間に差があるのか??
・ 何故、時々 1950年台や60年台の
デルトリンテム等でも、1Qマークの無い個体が
存在するのか??
それらの疑問は、全て 解消されるであろう。
この 1Qマークの 認定期間は、1年間であり、
1Qマークを維持する為には、
毎年 新たに、再検査を申し込み、
品質検査試験を受ける必要があった。
また、DAMWに 1Qマークの認可を得る為、
品質検査試験を申し込み、その為のテスト等、
全ての掛かる費用は、製造業者の負担 であった。
という事は、少なくとも、
次の5点を、我々は予想する事が出来る。
1. DAMWの厳しい品質基準を試験を
パスする自信の無い製品や、
基準を満たしていない事が 明白な製品は、
はなから、検査を申し込まないであろう事。
2. メーカーとして、全ての製品を、
品質検査に申し込むには、費用も掛かる為、
メーカーとして、力の入れている製品や自信作のみを、
1Q検査試験に申し込むであろう事。
3. 1Qマークを授与された製品に対して、
技術者をはじめ、社員は誇りを感じていたであろう事。
4. 1Qマークの試験に挑もうとする製品は、
その製造段階、材料の吟味、部品の精度を含め、
想像以上に厳しい品質管理が為されて、
製造されていたであろう事。
5. 実際に、1Qマークが授与された製品の、
事実上としての、圧倒的なクォリティの高さ。
では、この DAMWの品質基準とは、
一体、どのようなものであったのか!?
この DAMWの試験基準は極めて厳しいもので、
それは、次のような基準を満たす事が必要であった。
・ 世界最先端技術の実現、世界最高峰の品質である事。
・ 世界市場で、競争力が十分にある事。
・ 顧客の要望を満たし、クレームが0件である事。
・ 安全規制への準拠。
・ 材料、加工方法、表面処理、構造、及び 機能、
それらに関して、極めて高い品質を達成している事。
これらを総合的に考慮し、推察すれば、
後年、デルトリンテムから 1Qマークが消えた理由、
イエノプテムには、最初から1Qマークが付いていない理由、
それらは、自ずと見えてくるだろう。
本ブログでも、これまで何度も、
デルトリンテムの年代による、塗装の質の違い、
工作精度の差、等にも触れて来たのであるが、
なるほど、1Qの刻印が消えた 後年の個体では、
塗装の質の悪化や、工作精度の落差も、
必然的と言うことだろう。
正しく、
1Q マークは、嘘を付かない なのであった。
ちなみに、この DAMW の制度は、
1950年~1990年 まで存在した。
これまで、大した意味は無い、等とも考えられていた、
この 1Qマークであるが、真相は我々の想像以上に、
否、想像を遥かに超えていた、と言うべき事実であった。
その製品のクォリティの高さを、証明する、
何よりの動かぬ証拠であったのである。
私はこれまでも、本ブログ内で、
当時の技術者が威信と誇りを、1Qマークに刻んだ、
等と、推測して書いていたのだが、
その威信と誇りは、工員達の勝手な思惑ではなく、
ましてや、私の勝手な妄想でも、推測でもなく、
明確な事実を根拠にしたものであった、
という事になるだろう。
ここで、一つの疑問が生じる。
この1Qマークが、当時の東ドイツの
公的な機関から授与されたものであるなら、
カールツァイスイエナ以外に、他に、
1Qを取得したメーカーや双眼鏡は無いのか??
と言う事である。
結論から言えば、DAMWから、
1Qを授与された 製品を製造した 双眼鏡メーカーは、
カールツァイスイエナ ただ一社のみ、である。
ここまで来ると、カールツァイスイエナの、
1Qマークのある製品と言うのは、
もはや、水戸黄門の印籠並みの、
絶対的な象徴と言えるのかも知れない。
デルトリンテム、ビノクテム、テアティス、デカレム・・・
貴方がもし、これらの 1Qマークが刻まれた、
カールツァイスイエナの双眼鏡をお持ちなら、
尚一層、愛着が湧くのではないだろうか!?
尚一層、手にする度に、景色を覗く度に、
喜びを感じるのではないだろうか!?
少なくとも、私はこの事実を知ってから、
より一層、デルトリンテム等が、愛おしくなったし、
敬意の念も、より深まったように思う。
1Qが刻まれた双眼鏡を手にする事、
それは、当時の世界最高品質、最高性能の
双眼鏡を手にする事なのである。
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