続々・ひよっこ雑感~その3 | 徒然逍遥 ~電子版~

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こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。


これまでに気付いたことちらほら。


◆別離はあっさり
みね子が故郷を離れるとき、優子が向島電機から青森へと帰郷するとき、等は少々時間を割いて情感に訴える感じがしました。


しかし、みね子がすずふり亭にやってきてからは別れが生じるときは、かなりの急展開で詳細を端折っておりあっけなく終わる印象です。


最大の別離は島谷青年との件です。
しかし、彼が立ち去る間際の当事者同士、関係者間でのやりとりは一切描かれませんでした。

島谷青年はみね子とバーで話し合うのを最後に姿を消します。ヒデともあかね荘の大家さんとも接触した形跡はありませんでした。彼のいない部屋がちょっとだけ提示されるのみ。これには唸らされました。
従来ならあり得ないほどの省略ぶりですよね。


 

すずふり亭の高子が三男の兄貴と結婚を決めた件。
彼女もプロポーズに対して受諾の意思表示をしたあと姿を消します。余韻はほとんどありません。


時子があかね荘を去る件。
コンテストで優勝した後、祝勝会もないまま慌ただしく去って行きました。拍子抜けするほどあっけなく。


早苗があかね荘を去る件。
いきなりの旅立ちです。ほんの数分でさようなら。あっと言ふ間のできごとでした。これまた余韻も何もありません。


島谷青年の件以外は、おめでたい愛と青春の旅立ちです。が、それにしてもです。これほどまでに省略されるとは。


ベタなフォーマットでいけば、高子も時子も早苗もみんなから祝福される賑々しいエピソードとして描出されるところ。何しろ高子と早苗は去ることが決まってから出立するまでには多少の間があったはずですから。


そこを一切省く。ここらへんも意表を突く脚本ですね。15分間で全てが片付くとは。

特に島谷青年の帰郷は見事なまでの端折り具合が素晴らしいと感じ入りました。自分にはできない発想です。


もしかしたらですが、この設定はヒロインの将来を見据えてのことなのかな、と思えました。卵の殻から抜け出しつつあるみね子の前向きな姿勢、能動的に他者を助くる立場への転換。そして“明日がある”という高度成長期の明るい将来を信じる時代の雰囲気。これらの表出かも、なんて。

みね子の人生初の大恋愛と大失恋。その後遺症を想像するにつけあまりにも不憫でなりません。が、その後みね子は彼との思い出に浸ったり、ぼんやりして仕事が手に付かないなんてことになりません。

大きな葛藤を抱えながらも父親捜索の大命題を忘れずに前向きに(空元気かもしれませんが)日常生活をこなしていきました。


さて、例外的なケースをひとつ。みね子の伯父さんが帰るときが挙げられます。
彼が田舎に帰る前には、すずふり亭とあかね荘のメンバーとの間でちょっとしたやりとりに時間を割きました。最後にみね子との会話もありましたし。


これって特にハッピーでもアンハッピーでもない、親戚がちょっと滞在して帰るみたいなケースです。それなのにこれほど時間を割くとは。


これももしかしたらですが、人の一生は喜怒哀楽色々経験すれども、いつまでも過去にとらわれずに今と将来をしっかり見据えて己の人生を目一杯謳歌しようではないか。という伯父さんの人生訓。

これが『ひよっこ』のテーマとも通低するメッセージだからじゃないでせうか。


滞在中に思いがけず伯父さんのトラウマ級の戦争体験が語られたのは示唆的です。あかね荘とすずふり亭双方の世代を越えたメンバーに。


思えばこのドラマは、戦争の後遺症と戦後の繁栄が交差する日本再生揺籃期の時代を『ひよっこ』に見立てていたのかも知れません。
それを庶民レベルで、名も無き一人の女性の成長にフォーカスして描いてみせたように思えます。


みね子の、農業→工業→サービス業、と転身していく様はまさしく戦後近現代日本の産業構造変化に対応しているかのようです。それと軌を一にしてみね子は成長。孵化したひよこも大人になります。


別離の考察から大分ずれましたが、そこは徒然なるまま。どうかご勘弁を。

 

本日も最後までお読み下さりありがとうございました。

 

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●連続テレビ小説『ひよっこ』雑感~その3→https://ameblo.jp/g-matsumoto/entry-12279118222.html

●続・ひよっこ雑感~その1 →https://ameblo.jp/g-matsumoto/entry-12294307994.html
●続・ひよっこ雑感~その2 →https://ameblo.jp/g-matsumoto/entry-12294316915.html
●続々・ひよっこ雑感~その1→https://ameblo.jp/g-matsumoto/entry-12314003151.html
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