こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
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今年は太眉女優・平裕奈主演『ReLifeリライフ』が公開。“記憶・忘却”がドラマを盛り上げる。
そうくれば我らが太眉女優代表格の早見あかり作品も忘れちゃいけない。
『忘れないと誓ったぼくがいた』 (‘15) 94分
梗概
高校三年生の葉山タカシ(村上虹郎)は自転車で接触事故を起こしそうになる。路上に落ちるネックレス。それが織部あづさ(早見あかり)との出会いだった。
後日彼女が同じ学校に通っていることを知り強烈に魅かれていく。彼女はケータイも持たず住まいも教えてくれない。しかも、学友たちも彼女の事を良く知らないらしい。実は彼女の告白によると、皆が自分の事を忘れてしまうとのこと。でもタカシは、ぼくは忘れなかったと主張。彼女は、それはタカシが特別だからと言ふ。半信半疑のまま彼は夏期講習に通いつつ彼女との時間を共にする。
ところが、あづさの誕生日が近付くにつれタカシも徐々に彼女のことを忘れ始める。壁一面にあづさの写真を貼り、彼女の特徴や情報や約束を書きつける。そんな彼の努力を知った彼女は最後の賭けにでる。
自分が周囲の関係者から忘れ去られるという恐るべき超常現象。
もちろん劇中ではそのシステムは解明されないし、生じる矛盾点もスルーしなきゃいけない。これは観る側が大前提として心しておかねばならぬ。
そうして観れば怪談じみた話である。
あなたの親もクラスメートも担任教師も、職場の仲間も、配偶者がや兄弟姉妹がいれば彼らも。全世界人類があなたという人間に関する記憶を喪失し、あなたが誰だか分からなくなる。常に初対面の未知なる人物としてしか認識してもらえなくなるのだ。『リライフ』どころの話じゃあない。
結構深刻な問題だが、夏の日差しが眩しく、虹郎の暑苦しい顔立ちも手伝って画面は夏真っ盛りの態。そこにあかりんという爽やかな風が涼やかに吹き抜ける。一種のファンタジーものである。
そう、本作はあかりんを観るためか原作を読んだから観てみるか、ほぼこの二つの動機で観られる作品だろう。
主演二人が村上虹郎と早見あかり。この二人が所謂等身大のキャラを演じる。
では、ネタばれ全開でいってみよう。
全体の流れとしては、タカシがあづさを忘れないと誓ったにもかかわらず、何人たりとも抗し難い不可思議な作用により彼女を忘却していくプロセスをじわじわと描いていく。
殊に自分の記憶が危うくなったことを自覚し、危機感を抱いて何とか歯止めをかけようと様々な工夫と努力を重ねる姿に心打たれる。
リマインダーとして絆創膏を貼ってもらう。スマホのアラームをセットする。部屋の壁一面に彼女の写真、初めての出会いと印象、容姿の特徴、いつどこで何をしたか、果ては名前など基本的情報までをびっしりと貼り出す。
にもかかわらず無自覚のうちに徐々に忘れていく様をたんたんと映していく。
我々としては何とももどかしく思い、何らかの逆転が生じることを切に願いつつ見守ることになる。
あづさは彼が留守中の部屋でその壁のおびただしい掲示物を目にする。自分への彼の想いが満ち溢れている。彼の切実な願いが溢れている。あづさを絶対に忘れない。落涙するあづさ。
彼女が立ち去るとすぐにタカシが帰宅する。彼を解放したかったのだろうか、部屋の壁は地肌を見せている。あづさが全てきれいさっぱり処分して立ち去ったのだ。全く気付かないタカシ。彼もまたきれいさっぱり忘却しているのだ。我々は絶望的気分に陥る。
PCに記録されていた見覚えの無いファイル。開くと二年生の時の動画。そこにはあづさとの思い出があらん限り記録されていた。
そして我々も思い出すだろう、出会いの際に路上に落ちたあのネックレス。驚くべきことにそれは以前タカシから贈られたものだったのである。
つまり、彼らは一年と経たぬ前に恋に落ちていたのだ。リセット。アゲイン。
運命的にもタカシは再びあづさに出会い心魅かれた。タカシのことを、あなたは特別だ、と言った理由も今わかった。
物語の終局はより切ない。
必死であづさあづさ、とつぶやき続ける。そうしないと名前を忘れてしまうのだ。しかし、いざ本人を目の前にしつつも彼女をあづさと判断できない。文字通り顔と名前の不一致。
あっ、彼女があづさだった。と気付く。名を叫びつつやみくもに駆けるタカシ。だがもはや一切の記憶が消えゆくのは時間の問題であろう。
でも、もしかしたら三度目があるやも知れぬ。との期待も残る。
だがしかし、それが繰り返されるとしたらあづさにとっては責め苦以外の何物でもなかろう。
忘れないと誓ったぼくがいた。とは、自分がそう言ったことを覚えている人の言葉である。
そして、でも誓いを果たせなかった。無念である。と続くはずである。
ところがタカシは誓いも誓いを反古にしたことも記憶にないはず。
そんなぼくがいた、ということを記憶していない。
であればこのタイトルは誰の記憶に基づくのであろうか。タイムパラドクスのような不思議さを秘めている。
ところで、あづさ=あかりんみたいな子が自分のクラスにいたらどうしたろう。
洋画を観て育った身としてはこんな顔立ちが結構好きだったりして。所謂ハーフ顔。そして太眉。忘れるわきゃあない。もう気になってしようがなかったはずだ。
幸か不幸か修学旅行で同じグループになったりしたらどうだろう。嬉しさと緊張のあまり挙動不審で歩行すらもぎこちなくなってしまいそうだ。
早見あかりには女優業でさらなる研鑽を積んでもらいたいものだ。
*『福家堂本舗-KYOTO LOVE STORY-』* *『銀魂』*
さてさて、小説は映画とは設定が異なっている。むしろ原作本の方がまだ得心できるんじゃないだろうか。図書館にも置いてあるだろうから気になる方は手に取って見ると良い。
平山瑞穂著「忘れないと誓ったぼくがいた」 新潮社より刊行。文庫化されている。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。