こんにちは。行政書士もできる往年の映画ファンgonzalezです。
訪問ありがとうございます。
もうすっかり全国各地でのフィルム・コミッション活動が活発化するようになった現今。ローカルな佇まいが妙にリアルな生活感を漂わせ、場面の背景を味わい深いものとしている例が多々あり。
殊に、北関東辺りは都心からも高速道路であっという間。しかも田舎家屋やら街並やら田畑山林、廃屋廃校舎廃墟各種取り揃えて御座います。なので、栃木県や群馬県はロケ地として使いやすいようで。
そんな僻地に天使が舞い降りたお話。
『セーラー服と機関銃-卒業-』 (‘16) 118分
梗概
浜口組との抗争の手打ちの結果、解散するに至った独立系老舗ヤクザ「目高組」。今は元組長のjk星泉店長の下、元組員がスタッフとしてカフェを運営中。その街に大企業を隠れ蓑にしたヤクザが参入。
泉は地元の危機に「目高組」を復活させて浜口組代貸と結託。資金力豊富で市長、マル暴刑事らを配下におさめた経済ヤクザと対峙する。
薬師丸ひろ子主演作(‘81)の後日談を、角川映画40周年記念作品としてとして製作。
ただ後日談といっても登場人物を含めて物語の設定が全く連続していないので、これはこれで前作を知らずとも観ることができるように仕上がっている。
主役には “1000年に1人”の逸材と謳われる橋本環奈嬢。
長谷川博己が浜口組幹部で環奈嬢のお相手役。狂敵に安藤政信。
脇を固めるのは、傀儡市長の鶴見辰吾。悪徳刑事に古舘寛治。そして武田鉄也と伊武雅刀。
組員二人、イケメン大野拓朗とスキンヘッド宇野祥平がいい味出してて大正解。
同級生男子三人組が北村匠海、ささの友間(名脇役笹野高史の息子)、前田航基(子供漫才「まえだまえだ」の兄)。
前作は主役に当時のスーパーアイドル薬師丸ひろ子を据えたものの明るい内容の作品ではなかった。というより画面自体が暗めで陰気っぽく、しかもアバンギャルド的な映像作品だった。
いわば70年代のATG作品の延長線上に位置するような映画。と言へば分かるだろうか。
決してアイドルを観に行って楽しかった、面白かった、癒された、つまらないが彼女を観られて良かった。みたいな感興が湧くことの無いものだった。
動員観客の大部分を占めたのは当然の事ながら薬師丸ひろ子見たさの男子たち。彼らがスクリーンを前にして困惑する様を容易に思い浮かべることができる。
まあ監督が相米慎二だからね。
そこまでではないが、本作もさほどには嬉しい楽しい愉快な映画とは言へなかった。天使な橋本環奈を目当てに足を運んだ若者たちにおもねるような作品ではなかった。そこは前作のDNAを継いでいると言へようか。
しかし、1作目が相米監督の強烈な独創的感性を際立たせ、分からないながらも記憶に残る作品に仕上がっているのに対し、本作はどうなんだろうか。
難敵・安藤政信のオフィスの壁に映像が投影されている場面は明らかに相米作品を意識したものだ。でも、何らの効果ももたらさない。
落命した長谷川博己にくちづけするのも前作に倣ってのことだろう。
それとかラスト近くでは環奈嬢の黄色いハイヒールを強調して撮っている。これも前作の赤いハイヒールを意識したものだろう。だが残念ながらこれ又ただそれだけである。
前作が相米監督が撮りたいように撮った結果よく分からなくなったのに対し、こちらはその分からなさの意味を分からぬまま表層的になぞっているようで、なんとも言へない悲しみを覚える。
制作側としては、ともかく敬意を払いつつも単純に前作を模倣する気は無かっただろう。何かこう、粗削りでも観客の感性を刺激し、記憶に残る第二弾を撮りたかったに違いない。
*巻頭一番。何故にブリッヂ?* *この衣装は一体?*
結果は?残念ながらそれほど印象深い映像作品とは言い難い。
例のオフィス内での映像上映シーンは前作よりもはるかにダイナミックさに欠けるし、映画館のシートでヤクの売人とのやり取りの妙も今一つ面白くなかった。柄本時生扮するT太郎の立ち位置も何ら活かされていない。
エンディングは奇妙な余韻を残した相米作品のような、変てこな後味を残すところまでいかなかったが、卒業証書を受け取った壇上で主題歌をアカペラで歌い出すところはどことなく相米チックな意表を突いた演出でここはまあ良かった。あ、鈴木清順っぽくもあるね。
ただ、エンドロールの最後の最後に何故か浴衣姿の環奈嬢に「快・感…」と言わせるカットを挿入してももはや何の意味も見出せない。唖然とした。とにかく決め台詞をどこかに、との思いが強かったのだろうが、それなら劇中で言わせなきゃ。機関銃はどこ行った。
そういや、物語の初っ端から夢の中での回想シーンにも「快・感…」が出てきた。これは期待感を高める効果を狙ったんだろうが、続く本編がちょっとアレなんで無意味に終わった。残念…。
何だろう、全てが今一歩手前のところで終わっているのは。
これって失敗作か?いや、そんなことはないと思いたい。だが、相米作品に及ばないのは仕方ないとして、これはこれで特色出していこうとしてもダメだった。という感じはある。中途半端で不首尾に終わる。やはり失敗?
そう、こうなったらもう前作の呪縛を脱して、直球ストレートで勝負をかける意気込みがもっともっと必要だったのではなかろうか。前作と真逆の世界観。
はっきり言ふと馬鹿馬鹿しいくらいにエンタテインメント性を前面に打ち出した娯楽作品。そこに活路が開けたのではないかと悔やまれる。
一例として『ミッション・インポッシブル』と『MI:2』を思い浮かべて欲しい。
1作目はTV版の延長線上でミステリ要素が強く正攻法で攻めた。あの音楽も健在。だが、続編はジョン・ウー監督の個性爆発。といった趣向でド派手なアクションシーン満載の活劇に仕上がった。しかも思わず苦笑してしまうような馬鹿げたシーンにも大真面目に取り組んでおりかえって清々しさを覚えるほどだ。『エイリアン』と『エイリアン2』も良きお手本だ。
であれば、主役に橋本環奈だよ。もっと輝かせようよ。弾けさせようよ。と言いたくなる。
天使ちゃんはそれなりの演技を魅せてくれた。だったらなおのこと天使を天使たらしめる映像世界を構築して欲しかった。
例へば、長谷川と手を取り合いにわか雨の中を駆けるシーンなどはワクワク感に満ちており表情も良かった。青春してる的な。これだよこれ。
さて、話は変わるが本作は2015年の夏に1か月間かけて映画のほぼ全編を高崎市で撮影したという。しかも、彼女はその間市内に在住していたことも判明(弊事務所調べ)(笑)
それはともかく、メインロケ地の高崎市と高崎フィルム・コミッション協力の下で撮影。市役所ビル内外での撮影もあり画面にちょいちょい写り込んでいた。マシンガンも市役所内で炸裂させたし(爆)
で、完成試写会に際してのホテルでの記者会見と上映館の舞台挨拶にご一緒したのが高崎市長。フラッシュたかれて写真撮られまくりの態。いや、メインの被写体はお隣の環奈嬢だが。
彼女曰く「ここ高崎に戻ってくることができてすごくうれしいです!高崎は第二の家です!」とのリップサービス付きで地元民は感涙にむせび泣く有様。とは言い過ぎですが。
確かに、画面に映る看板や掲示物、街中の建造物や裏路地、市庁舎や国道17号、橋梁や河川、といった背景はよく見りゃお馴染の景色ばかり。つうか日常的に自分の足跡を残してる場所。ロケ地巡礼の案内人もできる自信あり。山道から裏路地まで網羅しますよ。
*高崎中央銀座通り南側・北側・東側*
そんな見慣れた風景もスクリーン上では違った印象で新鮮に映るものだ。やはり映画は“枠(フレーム)”だね。
ま、『銀魂』のメインキャラを務める旬な女優を観ておくのも一興。あるひは地元民なら画面上でロケ地観察もできそうだし。でも期待したほど面白くないので、暇な時にはこの一枚的な感じでチョイスするのが良いだろう。
本日も最後までお読み下さりありがとうございました。
橋本環奈関連過去記事
●フィルム・コミッションが天使を招来『セーラー服と機関銃-卒業-』
●TVドラマ『今日から俺は!!』で大賀、矢本悠馬、橋本環奈を観た