29年前とのカービング比較 | 角目好き

角目好き

四角いライトいかがです?

息子の用事に付き合って待っている間、図書館で雑誌を読んでいた。スキーグラフィック2024年3月号。

 

スキー雑誌らしく、”小回りでは膝を引き込む”、”大回りではターンマックスで膝を伸ばす”、”急斜面でもフルカービングに見えるにはターン導入に前屈して腰をひねって前方移動する”とか、技術解説が延々と続いた。

 

ボードと同じ動きなのだけれど、使う技術が違えば発想も違う。雑誌の説明をボードに当てはめると、”ラジアスの小さい板に乗ればSLになる”し、”板を体から離していけば板は立つ”し、”急斜面のターン導入ではテール荷重のままのテール振り出し量を初めに意識する”となる。

 

書いてないことを言えば、切り返しは開放した板の反発を頼ればいいし、着地するノーズの向きとエッジ角の調整で次のターン弧を決めればいい。メタルが入ったハンマーヘッドのロッカーボードだから、後方に載っていても加重がノーズにまで伝わるので、ノーズからエッジを立ててターンに入ってもしっかり噛ますことが出来る。ここに前後に動くプレートを乗せれば、詰まることもサイドカーブがねじれることも無いので、急斜面やアイスバーンのハイスピードでもためらうこと無く同じ動きが出来る。

 

雑誌には国内技術戦選手の最新カービングの写真がたくさん載っていた。見ていると、2本ラインの方がコーナリングが安定していて速いのは当たり前だと改めて思った。まるで2輪と4輪のコーナリングスピードの違いのようだ。

 

写真の選手の両足の膝頭は水平に近くにセットされているが、内足のエッジをもっと立ててしまったら2本の円弧にならないので内股気味が正しい。内足の膝をここまで上げても、骨盤はこれ以上傾けられないから上体はリーンアウトさせるしかない。上体の荷重が逃げてしまうが内足荷重には出来ないのでこれが限界だ。しかし切り返しで踏み変え動作ができるので速くて安定する。

 

さすが国内4連覇中のチャンピオンの滑りは、誰よりも外足を遠くに置き、限界まで倒し、体軸を誰よりも傾けている。

 

 

 

 

この写真は29年前のスキージャーナル1995年の2月号に掲載された国内第2シード選手の滑りだ。長野五輪に向けた初代ナショナルチームをかけた戦いだ。コースがくの字に折れ曲がり、この先の崖の手前にたつ旗門を真下で切り返し、続く急斜面で落とされないようにするために限界まで回し込んでいっているシーンだ。ここでのスピードは60km/h位だろうか。現代の一枚バーンでのパラレルGS勝ち抜き戦では決して見られないシーンだ。

 

両膝を垂直に重ねて骨盤も傾けて、一本のエッジに荷重している。スキーで言うところの内足の外エッジだ。現代とは違って板のカービング性能が低く、ハングオフする必要がある。またトップとテールのエッジグリップが弱くてどこに飛んでいくのかわからないので、板を体から遠ざけて外足化することが出来ない。同じ理由で板の反発も期待できないので逆ひねりで倒して切り返しに備えるしか無い。そんなか細い一本ラインの限界で戦っている気迫が今でも伝わってくる。

 

用事から戻ってきた息子に2つの写真を見せて聞いてみた。「どう思う」。すると、「お父さんのほうがカッコいいね」。子供は正直でいい。部活を何にするか考えている息子。自分がカッコいいと憧れるものに熱中すればいい。どこに行っても幸せそうにニコニコしてくれれば、親としてはそれでいい。私はドライバーではなく雪山のライダーが好きだったというだけの物語りだ。