人は誰しも、日々慣れ親しんだ空間や人間関係の中に安らぎを感じる。緊張感を感じることもなく、その環境の中でだけ本当にリラックスできる。
それとは逆に、初めてのところに行ったり馴染みのない人の輪の中にいると、軽いストレスを感じる。自分ではそこに居たいと思っていても、無意識的には、そこから何とかして離れようという力が働いてしまうんだ。
いつも行くレストランより高級なお店に入ると、場違いに感じることがあるかもしれない。自分にはお洒落過ぎる・ふさわしくないと感じて、すごく居心地が悪くなる。
料理はすごく美味しいはずなのに、味もよく分からない。普段食べている、馴染みのある料理の方がやっぱり美味しいと思ったりするんだ。
でももし、そういうお店に通うステージの自分になりたいという思いがあるとしたら、その場違いと感じる感覚が必ず妨害してくる。意識的には行きたいと思っていても、無意識は場違いだからそのステージには行きたくないんだ。
例えばゴルフなどをしていても、している人は必ず、今自分はこの位のスコアレベルだという認識をもっている。
もちろん、その日のスコアがそのレベルより低ければ、今日は調子が悪いと感じるだろう。でも、調子が良すぎてかなりのスコアでまわっているときも、すごく居心地が悪いんだ。
今日はでき過ぎだと感じて、こんな良いスコアが続くはずがないと場違いな感覚になる。この感覚が無意識に働いて、後半はしっかりミスショットを連発することができる。終わってみると、やっぱり自分はこの位のレベルだよねと納得できるところに落ち着くんだ。
自分のステージを上げるには、その上がったところの自分を当然と考えられるような、自意識過剰なくらいの認識が重要なんだ。
日本では、謙虚なことが美徳とされているけれども、もちろん周囲に対してはそういう態度を示すことは大切だ。でも、心の中では、自分なら当然だ・自分ならできて当たり前だというくらいの認識でいる。
オリンピックで活躍する人たちも、インタビューでは関係者の方々のおかげですと言っていても、自分ならできる・自分だからできると思い続けてきたからそれだけの結果が生まれるんだ。
心から自分の力ではなく、関係者の方々のおかげと思うような心持ちでは、世界の頂点には立つことはできない。
人は必ず、無意識に慣れ親しんだ環境に戻ろうとする。行きたいと思うステージを場違いと感じてしまうのなら、まずはその環境が普通だと感じられる自分を作る。
その空間や人の輪の中に慣れることができれば、逆にこれまでの環境の方が居心地が悪くなる。そうなれば、勝手に居心地の良い環境の方へ自分が向かうようになっているはずだ。