『ある闘いの真実』~いまさらながら 韓国元大統領・全斗煥死去の報に接して | 一松亭のブログ

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『1987、ある闘いの真実』(2017年)は80年代後半、全斗煥(チョン・ドゥファン)による軍事独裁政権下の韓国で、民主化を勝ち取るために命がけで闘った人々の姿を描いた作品でDVDも出ています。多くが今まで語られていると思いますが、今この時期に取り上げるのは、韓国元大統領・全斗煥死去が報じらたからです。映画中では「閣下」と言われ、実際のニュースの画像が出てきます。


北のスパイ疑惑をかけられ拷問を受けた大学生・朴鍾哲(パク・ジョンチョル)の死をめぐり多くの人が真相究明に向け闘った姿を描いた映画です。大学生の死を知った多くの人達が自らの職に求められる本当の正義を拠り所にしながら自身を危険にさらし真実を追求してゆきます。全斗煥政権下ですから、それは文字通り身体どころか命の危険を伴うもので、それでも一人一人の闘う強い意志はさらに多くの人に受け継がれ広範な運動の波となってゆきます。警察側も含め一人一人の多面な人物描写も見どころで、ラストにかけての高揚感の広がりに圧倒されます。
この事件を題材にした韓国の漫画に「沸点」(作:チェ・ギュソク、発行:ころから)がありますので紹介しておきましょう。


民主化に向けての過程で多くの若い人が亡くなり「烈士」として語り継がれてゆきますが、最大の犠牲者を生んだのが1980年の光州事件であるこことには異論はないでしょう。23日大統領府報道官は「心のこもった謝罪がなかったのは遺憾」と述べています。
韓国元大統領・全斗煥の1月前にやはり韓国元大統領・盧泰愚の死が法じれれましたが、二人は陸士の同期でした。この二人による粛軍クーデターを描いた韓国ドラマに「第五共和国」がありますが、全斗煥をイ・ドックァが演じ、そっくりと評判でした。なお盧泰愚がソ・インソクでした。二人ともドラマの時代劇でお馴染ですね。



映画の冒頭、大統領のニュースのシーンの背景にバーデンバイラー行進曲が流れるのですが、本当に韓国でニュースに使っていたのでしょうか、それとも監督が意識して使ったのでしょうか(ここはわかりません)。第一次大戦時にドイツで作られた行進曲で、アドルフ・ヒトラーが好きで自分が登場する時に流させていたので当時のニュース映画やレニ・リーフェンシュテールの「意志の勝利」で聞くことができます。
「行進曲」といえば光州事件の犠牲者で市民軍の指導者ユン・サンウォンと1978年に不慮の事故で亡くなった労働活動家パク・ギスンの追悼(霊魂結婚式)のために制作された「ニムのための行進曲」(あなたのための行進曲)という曲があり、今も歌い継がれ5・18記念式典の象徴歌としても歌われています。全斗煥を送る歌にはこれがよいでしょう。趙博さんのバージョンですが、最後にお聴きください。