和貴と二人で、公園までの道のりを歩いた。
手を繋ぐことには抵抗があったが、目の前に続く歩道がバージンロードのように、父と息子の軽い足取りを祝福した。
閑静な住宅地の中にある公園は、近代的な辺りの風景とはまるで正反対だ。
住宅地のほぼ真ん中に位置しているものの、何故かその公園だけがタイムスリップでもしているかのように寂れていた。
同じ地域にある幾つかの公園の中で、人気のないその公園を選んだのは、子供の開校記念日で公園に出てくる他の親子に遭遇しないためだった。
下手な劣等感を抱きたくなかったのだ。
思いもよらぬ形で出来たこの時間を、丁寧に、丁寧に扱い何かを掴むことが出来れば、俺の中にあるDVサイクルの優しい時間に留まっていられるかもしれない。
真貴子と冷静に話をするためにも、この時間は重要だったのだ。
「パパ、何でこっちの公園なの?遊ぶもの、すべり台しかないよ・・・?」
「んっ、まあ・・・、いいじゃないか。ちょっと待ってろよ。」
少し不満そうな和貴ではあったが、何故かいつもの緊張感が沸いてこなかった。
小学校2年生でも、公園の遊具で遊びたがるのだということを学んだ。
「ほらっ、これ、飛ばしてみろよ。」
俺は真貴子が読んでいた広告で、紙飛行機を作った。
「すっご~~いっ!パパっ、これ、すっごいよく飛ぶよぉ~!」
「そうだろぉ。パパ、紙飛行機作るの上手いんだぞ。」
狛江市のマンションに引っ越した後の数ヶ月間、和貴と二人で遊んだ時と同じ公園で、カラフルな色の紙飛行機は、和貴の手から何度も離陸を繰り返していた。
真貴子に話し始めたのは、結局は和貴と真理が眠った後になってしまった。
どうしても今話さないと、和貴と過ごした時間を無駄にしそうな気がしたのだ。
残してあった食器を洗っている真貴子に声を掛けた。
「なあ、真貴子。」