ムoooooブ! 第四話 | 魔法結社ふゆMA!

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お前とはまた出会えるような気がしてた…ようこそ。

このSSは 『最悪』 です。

不謹慎で、思慮が浅く、読めば多くの方が気分を害する可能性が高いです。


これは報道にも、作品にも、事件にも悪意を向けるものではありません。
また、特定の行動を推奨するものではありません。

それら三つの出来事が、 『過去の事実』 であり、それぞれ善も悪もない要素として扱っています。



この物語は、ムoooooブ!という題名です。
この物語は、山村での連続怪死事件がテーマで、主人公の少女は親の離婚騒動がトラウマになり、斧を使って敵を殺していくというストーリーです。



上記に納得した方以外は読むことを止めるようお勧めします。

また、以上を精読した上においても、なお不謹慎で、思慮深さに欠け、何より下品です。

あなたは18才以上でしょうか?
自分の行動に責任がもてるでしょうか?
日常にあたり障りなく行動できますでしょうか?

つまり、ふゆのん本人は読む対象としては懸念されるということです。



それでは、どうぞ。 不快になれます。














冷たいような、暖かいような。
海の底の砂の上。
息はもうもたないけれど。
力が抜けていくのが心地よかった。


何かが私を引っ張り上げる。
気圧がかかる。
空から落ちる。


目が覚める。



「ふぁい……。 もしもし……?」



自分でも抜けた声を出したものだと思った。
体だけ起こされて、魂がまだついてきてなかったのかもしれない。



「やあ、お姉ちゃん。 僕だよ」



一気に醒める。
これは、ケータイ!? 電話がかかってきて。
私、寝てた!?
いつから? 今何時? あの後何が……。



「とりあえず連絡とっておこうと思ってね、深夜に失礼するよ。
 さっきは時間なかったしさ」


「ん……、ああ…」



くそっ! 寝惚けてる…! 頭が回らない。
適当に会話して時間を稼がないと。



「ふふ。 別に隠さなくったっていいよ。 ぐっすり寝てたんでしょ?
 というか、気を失ってたってのが正しいかな?
 長い時間過度のストレスを受け、その後血を洗い流すためにシャワーを浴び、疲れがドッと出てベッドに倒れ込む…。 そんなところだろうと思うよ。
 現に、もう既に数回メールしたけど気付かなかったみたいだしね」


「ぐっ……。 うるさい…! 早く用件を言え!」


「あは。 怒らせるつもりじゃなかったんだよ、ごめんごめん。 寝起きは怒りっぽくなるしね~。
 それと、メールは嘘。 一通もしてないよ。 大事な話だからね。
 あとさ、大声は止めてくれるかな、母さんに電話がバレるとそっちも困ると思うけど?」



このガキっ!! いつもいつも人をおちょくりやがって!

落ち着け、落ち着いて頭を働かせろ。 こいつの言いなりになるな私。
握って、開いて…。



「…用件は?」


「うん。 まず僕はチクったりしない。 誰にもね。 これをキッチリ理解してもらいたい。 それが一つ。
 もう一つ。 僕からの提案を呑んでもらいたい。 これはもちろん、そういう意味で話してる」



……つまり脅し。
向こうの要求を呑めば言いふらさないが、断われば…。
パターンだ。 ゲスがっ!


私の選択肢。
ヤツの言う事を何でも聞いて、奴隷みたく生きる。
ヤツを排除する。
ヤツが暴れる前に自首してしまう。


警戒している相手を殺すなんて無理だ。
……こうなってしまえば、三つ目がいい。 糞のような命令を聞かずに済む。



「あーあ、この間が怖いなぁ。 僕はそっちに危害を加える気はないって言ってるでしょ?
 やれおまえのカラダは俺のもんだ、とか、やれ何百万よこせ、とかは言わないって。
 僕だってお姉ちゃんが怖いんだよ? 一対一じゃ絶対敵わない。
 だからなおさら脅したりなんかしないって」



……くっ。 調子が狂う。 こいつとは合わない。 生理的に合わない。
掴み所がない。



「自首もおすすめしないよ。 お姉ちゃんの存在が傷付けられる。
 何かと説明を求められる事になると思うけど、それが警察、マスコミと伝わる内に伝言ゲーム。
 必死に紡いだ言葉は要約され抜粋されて原型もなくなる。
 元々、犯罪者の心理を健常者が理解するのだって難しいってのに、おそらく聞く方は型にハマった回答しか受け付けないんじゃないかな?
 大変なのはわかるけど、職務怠慢? 全部受け止めるつもりも時間もないなら、最初からやらなきゃいいのにって思うよ。
 
……大体、言葉って万能じゃないからさ。
 小指の第一間接だけを曲げる事を指す動詞ってないじゃん? 生まれた時から目が見えない人に景色を教えてあげられる単語もない。 ましてや人の感情なんてね…」



前言撤回。
少しコイツの事がわかってきた。

話したがり屋で、かなり固定観念の強い人種。 …きっとプライドも高い。
この手の人間とはまともに話さないに限る。 こっちの意見は端から聞く気がない。

これで頭以上に舌が良くまわるようなら、私にもチャンスがある。



「……そっちが私に危害を加える気がないってのは、…まぁ信じてみるわ。
 それで、条件はなに?」


「内容は、本当に信じてもらってからでいいよ。 急ぐ事でもないし。
 ぶっちゃけ、お姉ちゃんは今日何もなかったらどうするつもりだった?」



『今日何もなかったら』……、なんていい響きだろう。
どうするもこうするもない。
何事もなく、そのまま、そのまま……。

今までの過去が続いていた…!? 冗談じゃない!!
その過去が続いて欲しくなかったから!! ここまでしてでも!!!


…ぐっ。 落ち着け。 ダメだ、今はそんな事考えるな。
うぅ……。 泣くな…! 勝手に泣くな、私…!!
大丈夫。 握って、開いて…。



「僕らがさ、ふつーに大人になって、慎ましく幸せに暮らしていけると思う?
 無理だよ。 まず金銭的に、家庭をもてない。
 仮に家庭を築けるくらいに金に余裕があれば、今度は時間がない。
 そうすれば子供は親の影響を受けずに社会の影響を強く受ける。
 そして時代に見合った事件を起こす。 親の教育不足で。
 じゃあ家庭もなく、金銭的余裕もなければ、老後どうするの?
 僕らの前の世代はいいさ。 僕らが介護するんだから。

 でもなんで、あいつらは年金丸々もらってんの?
 国が借金増やして、財政立ち行かなくなってんのはあいつらが選んだ政治家が悪かったからでしょ?
 国を間違った方向に持ってったじじいばばあがなんで悠々と老後も金を貰えるのさ?
 国賊として老人全員処罰の対象でいいいと思わない? 道を間違った政治家は犯罪者でよくない?
 そしたら大分僕らも楽になると思うよ。 ま、そんなこと誰もできないけど」



…ガキの長広舌が続く。
言ってる事はわからんでもないが、わかりたくもない。
自分の世界でいくらでも言ってればいい。 その間は周りがバラ色に見えるのかもしれない。


くそったれ。 世界は依然としてドブの中だ。
こいつもドブの中にいる。 私もドブの中にいる。 …そういうことだ。



「どうやったら私が 『本当に』 信用したことになるのさ?」


「……まぁ、いずれわかるんじゃないかな。 自然と、必然と。
 ところでお姉ちゃん、オジサンは ちゃ ん と 殺 し た ?」



本当に心臓が飛び出たかと思った。
今更、…今更なにを!

落ち着け! 握って、開いて。



「カーテンは閉めた?」


握る。


「脈は確認した? 呼吸は?」


握る。


「死体は処理した?」


握る!


「道具は? 衣類は?」


握るっ!!


「今度はちゃんと、鍵は、閉 め た よ ね ?」


「なんで!!! なんでそんなこといちいち聞くのよ!!
 知らないわよ!! 私、あの後すぐっ!!」


「…いや、別に。
 ま、それほど心配しなくてもいんだけど。 無用心だねぇ。
 怖くないの?
 実はちょっとだけ生きてたとか、誰かが助け出したとか、ゾンビになって甦ったとか……」



ケータイを掴んだまま一階へ駆け降りる。
そんな…!? 死んだはず…!! おねがい死んでて!!








居間に、父はいなかった。






全身の力が抜けた。

床に落ちたケータイから、時陽がまだ何かしゃべっていた。

握った手から、血が滲んでいた。