アカデミー賞、発表されましたね。


作品賞   「それでも夜は明ける」
主演男優賞 マシュー・マコノヒー(「ダラス・バイヤーズクラブ」)
主演女優賞 ケイト・ブランシェット(「ブルージャスミン」)
監督賞   アルフォンソ・キュアロン(「ゼロ・グラビティ」)
助演男優賞 ジャレッド・レト(「ダラス・バイヤーズクラブ」)
助演女優賞 ルピタ・ニョンゴ(「それでも夜は明ける」)


ダラス・バイヤーズクラブはすべりこみで見ていました。

ほかの作品はほとんど見ていないから比べられませんが、マシュー・マコノヒーの演技は堂々たるものだったと思います。

ジャレッド・レトって、ほとんど見分けがつかないような役でした。これも圧巻でした。


しかし。


ディカプリオが取れなかったのはちょっと残念。

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は、賛否両論あるでしょうが、かなり力の入ったおもろい作品だと思います。


童顔とはいえ、お顔がアップになるとさすがに小じわが目立ついいおっさんになってきたディカプリオさん。

顔のつくりで役が制限されるのはある程度仕方のないことですが、それも生かした今回の役だったし(そこそこいい歳だが成長しない男)、何せむちゃくちゃがんばっていたから、何か取ってほしかったなぁ。

ああ、でも、「がんばってるなぁ」と思わせてしまうのは、どこかになんか無理があるからなのかもしれないです。お話に集中できないし。トップスターの性ですかね。

とはいえ、ウルフ・オブ・ウォールストリートは、本当にスゴかったです。そのうち感想を書きたいです。


ダラス・バイヤーズクラブも間違いなく素晴らしい作品なので、まだやっていたらぜひ見に行ってください。


ところで、マシュー・マコノヒーはウルフ・オブ・ウォールストリートに少し出てきます。

ディカプリオが初めに就職する会社にいる変な上司で、ランチの席でいきなり変な話をし、胸をどんどん叩きながら♪ん~ん~と歌いだす人。


あのシーン、なかなか強烈でした。

『デッドマン・ダウン』を見てきました。

 なんでこれを選んだかというと、私は本当は『ムード・インディゴ』が見たかったのですが、自動券売機でチケットが買えなかった。あとでよく見ると、入場者数管理のため窓口でしか売っていなかったのである(たぶん、ソファー席)。


 時間ぎりぎり(ほぼ開始時刻)だったので、もう売ってないのだろうと勝手にガッカリし、じゃあ別のを選ぼうと思ったところ、時間が合ったのがこの『デッドマン・ダウン』と『人類資金』だった。


 『人類資金』はないな、と思った。『デッドマン・ダウン』にしてみよう、ゾンビ映画かもしれない。


 だが、ゾンなことはなかったぜ



 監督:ニールス・アルデン・オプレヴ

 出演:コリン・ファレル、ノオミ・ラパス、テレンス・ハワード、ドミニク・クーパー、イザペル・ユペール

 公式サイト:http://deadmandown.jp/


 お話:ネタバレあり。


 どういう組織っていうのかよくわからないけれど、マフィアの一歩手前みたいな組織(不動産業ということになっている)のボス、アルフォンス(テレンス・ハワード)のもとに脅迫文が届き、仲間が殺される。

 組織の一員であるヴィクター(コリン・ファレル)は、仲間のダーシー(ドミニク・クーパー)とともに犯人を捜す、と見せかけて自分が犯人である


 そんなとき、ヴィクターは向かいのマンションから手を振る女性ベアトリス(ノオミ・ラパス)と知り合いになり、ディナーに向かう。

 デートの終わりがけ、ベアトリスは思いがけない取引を持ちかけてくる。


 *


<ここから全部ねたばれ。でも、映画の早くでわかるし、公式サイトにも載っている>


 ヴィクターは、実は以前アルフォンスの雇ったアルバニア人たちに家族を殺されたハンガリー人で、復讐のために組織に潜入していた。

 ベアトリスは自動車事故に遭い、顔に大きな傷を負ってしまった。運転していた男は酒を飲んでいたが、三週間で自由の身。ベアトリスは笑顔も職も失って、自分をこんな目に遭わせた男を憎んでいた。


 ヴィクターがポール(映画の最初に、冷蔵庫に詰められてた人)を殺すところをベアトリスが見ていて、初めてのデートの終わりに「黙っていてほしかったら、代わりに事故を起こした男を殺してくれ」と持ちかける。

 これはなかなか刺激的な出会いで、面白かった。(ヴィクターは細心なようでおマヌケだとか思ってはいけない。)

 いくらなんでも、全然素性のわからない人に携帯電話の番号なんか教えないだろう、と思ったらそういう理由だったわけ。それでも多分しないと思うけど。


 この後、「復讐」をキーワードに二人は接近していくけれど、ヴィクターが非常にお堅く、ベアトリスも遠慮がちなので、とても好感が持てる。

 しかし、ある意味非常に地味で、ちょっと変化に乏しい感じもする。


 それでも決行の日はやってくるのだが、肝心なところでヴィクターはベアトリスに用を頼み、ベアトリスはヴィクターを助けたいのでこれをフイにしてしまう。

 そんな超重要な仕事、絶対他人に任せないと思う。でも、任せないと、この流れではヴィクターは死んでしまうので、仕方ないといえば仕方ない(笑)


 一方で、ダーシーは組織の中で手柄をあげて出世しようと犯人を追い続ける。

 追い続けて、とうとうヴィクターにたどり着いてしまう。


 で、ベアトリスがヴィクターに頼まれたことをちゃんとしなかったせいで……と言いたいところだけれど、単にタイミングの問題で、ヴィクターが待っている倉庫には誰も来ず、諸々入れ違いになる。

 このへんの展開は面白かったです。


 最後にアルフォンスのところに乗り込んでいく理由は、もう復讐ではなくて、ベアトリスになっている。

 このへんは、純粋にいいな、と思いました。

 でも、あれだけ復讐しようとがんばっていたのに、それでいいのか? とも思いました。

 決着は結構あっけなかった。でも、ガンアクションが見たいわけじゃなかったから、全然問題ない。


 そして、ノオミ・ラパスの盛大な鼻血。


*


 よく見てみると封切り初日でしたが、全然人が入っていなかった。

 こんな映画をしているのも知らなかったぐらいだし、『ムード・インディゴ』のチケットを買えていたら、きっと見なかった。


 しかしながら、非常に良くできた作品だったと思います。

 ただ、あんまり新味がないというか、真面目すぎるというか。ヴィクターの復讐とベアトリスの復讐の動機がかなり違っているので、釣り合いがとれていないのもリアルでいいと思いましたが、何分きっちり収まりすぎていて、収めようとしていて、ヴィクターはどこかで見たようなストイックな男性に、ベアトリスもどこかで見たような普通の女性ぽくなってしまっていたかな。


 ふらっと入って観るなら、アタリの部類といってもいいかも。

 でも、ちょっとしたら忘れちゃうような気がします。

『エリジウム』を見てきました。


エリジウム ビジュアルガイド (ShoPro Books)/小学館集英社プロダクション
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監督・脚本:ニール・ブロムカンプ『第9地区』

出演:マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー

公式サイト:http://www.elysium-movie.jp/


◆お話


 22世紀、貧しい人々は荒れ果てた地球に住む一方、富裕層は「エリジウム」と呼ばれる宇宙コロニーに移り住んでいた。エリジウムはまさに天国。あらゆる病気が克服されている。

 マックス(マット・デイモン)は、地球に住む工場労働者。犯罪歴があり、警察にはつい反抗的な態度をとってしまうが、工場に勤め真面目に生きていこうと考えている。


 しかしある日、ある事故がもとで、余命5日を宣告されてしまう。

 生きるためにはエリジウムに行くしかない。

 だが、エリジウムに住めるのは富裕層だけ。地球からの「移民」は強制送還されてしまうのである。


 マックスは、エリジウムへの不法侵入の手引きをしているスパイダーのもとを訪れるが、そこでひとつの条件を持ちかけられる。

 それは、エリジウムの住人をひとり誘拐し、その頭の中にあるデータを盗み出すことだった。



◆思ったこと(一部ネタバレあり。反転してください)


 ひとことでいうと、「いまひとつ」でした。

 あ、でも、期待してハードルがぐーんと上がっていただけで、面白くなかったわけではありません。


『第9地区』と同じく「移民」の問題がキーとなります。

 前作は、南アフリカに突然やってきて棲みついてしまったエイリアン(エビ)と、彼らを「移民」として迎え入れる人間の話でした。

 今回は人間同士。宇宙まで行ったのに、スケールはしぼんでしまった感じがしました。


 体がぶっちぎれたりぶっ飛んだりするB級感は残っていました。スーツを体に直接ボルトで留めちゃって血がにじんでいたり。「あだだだだ」みたいなのはありました。

 でも、ぶっとび感も痛みの後のすっきり感(=強くなった感)も少ない。ちょっと爽快感に欠けるというのか。


 そう、全体的に、「なんか遠慮してるの?」という……。


 まずね。


 エリジウムの描写がかなり少ないのです。エリジウムに住んでいる人間たちが、とにかく優雅に暮らしているのはわかるのですが、地球にいる人々を、そして彼らがやってこようとしているのをどう思っているのかわからない。

 ジョディ・フォースター演じるデラコート長官が一人、不法侵入を「違法」な手段を使ってでもはねつけ続けている、その理由は本人が語る一言しかない。長官が移民を恐れて嫌っているのはその一言でわかるのですが(役者の演技に依るところが大きいでしょう)、話が進むと権力主義者のようにも見えてくる。

 その割に危機管理力に乏しい(笑)

 あのラストからしたら、さっさと医療ポッドを送ればいいじゃん。そしたらわざわざ地球から来ないって。


 あと、マックスはロボコップ手術を受ける(エクソ・スーツのことだよ)のですが、なぜかシャツの上から手術されてしまう。確かに、あのデザインだと、あとから服着られないですよ。でも、そりゃないだろって。

 そんだけ(?)苦労しているのに、あんまり強くない!

 最初だけちょっと強かったけれど、クルーガー(シャールト・コプリー:『第9地区』の主人公ヴィカス)があんまりにも強くて嫌な奴(こいつは遠慮していない)なので、迫力負けしている。

 ところで、クルーガーが持っている日本刀みたいの、かっこよかったです。


 マックスが遭遇する事故は怖かったです。「ありうるな」と。

 工場労働者がどんな境遇で働いているか。そして事故が起きたとき、管理者は、社長は、どんな対応をするのか。

 このへんの描写は優れていると思いました。本当に怖かったです。


 しかし。


 字幕訳の問題ですが、「照射線を浴びた」と書いてありましたけれど、要するに放射線ですよね? 違うの?

 ぐーぐる先生に聞いてみましたが、「照射線量」とか「照射する」という言葉はすぐ出てきますが、「照射線に被曝(ひばく)する」って言わなさそう。

 英語がよくわからないから、なんともわからない。

 でも、少しあとでマックスは「間接被曝させてやる」ってスパイダーを脅していたから、やっぱり放射線のことじゃないんだろうか。(ちなみに、この「間接被曝」の使い方は間違っている気がする。映画の中の人物の認識、ということだろうから責めないけれど。)


 まぁ、それは訳の問題として、お話に戻ります。



 いろいろおかしいなと思うところはあって、たとえば……


 マックスは誘拐のターゲットに、自分が働いていた工場の社長カーライルを選ぶのですが、このカーライルの頭の中にはエリジウムを揺るがすようなすごいデータが入っている。もちろん、マックスはこのことを知りません。単に復讐のつもりで選んだのでしょう。

 このへんのストーリーの展開は面白かった。



 ただ、カーライルは自分の頭から問題のデータを抜き取ると死ぬように設定していたのですが、なんでそんなことしたの??

 だって、「俺が死んだら大事なデータもパーだぞ!」と駆け引きすることはできても、「俺の頭からデータを抜き取ると、俺は死ぬぞ」って何の役にも立たないじゃん。(何か見落としているだけかもしれないのですが、現時点では理解できていません。)

 これは単なるラストへの布石だったのでしょうか。

 まあ、この設定がなきゃ究極の選択にならんわけだが。


 ラストと言えば、マックスの幼馴染で看護師のフレイとその子マチルダ。フレイの身の上話はまったくなされず、「複雑なの」(本人談)で片づけられてしまう。

 まぁいいですよ。私はあんまり興味ないから。

 でも、マックスはかわいそうすぎるよ(笑)


 スパイダーは面白いキャラクターでした。

 マット・デイモンはもちろん実力派なんですけれど、ちょっと(元)犯罪者っぽさが薄くてお上品というのか、どっちかというとエリジウムにいそう……という気はしました。


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第9地区は面白かった。

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『アップサイドダウン 重力の恋人』を見てきました。


監督:ファン・ソラナス

脚本:ファン・ソラナス

出演:キルスティン・ダンスト、ジム・スタージェス

公式サイト:http://upside-down.jp/


◆お話


 二重重力により、上と下に分かれている世界。上の世界は豊かで、下の世界は貧しかった。

 下の世界で生まれたアダムは、叔母の手伝いで山に入り、そこで上の世界に住む少女エデンと出会う。

 その後も逢瀬を重ねる二人だが、上の世界の人間と下の世界の人間が接触するのはご法度。二人は引き離されてしまう。


 10年後、アダムは偶然、エデンがトランスワールド社で働いていることを知る。

 上と下の世界をつなぐ唯一の企業、「トランスワールド」。

 アダムはアンチエイジング(要するに皺伸ばし)の美容クリームの開発者として、トランスワールドに就職する。


 なんとかしてエデンに会おうとするアダム。

 しかし、下の人間であるアダムが上の世界に立ち入れば重罪。それに、下の世界で生まれた人間は下の世界に重力に支配されるのである。


 アダムは上の世界の物質(=重力)を身に着けて上の世界へ忍び込むが、逆の世界の物質にずっと接触しているとなんと発火してしまうのだ!


 アダムとエデンの恋物語やいかに。



◆ファンタジーです。


 一見SF風味ですが、ファンタジーだと思えば腹も立ちません。

 ファンタジーと思いましょう。絵本です。童話みたいなものです。


 突如として始まる設定の説明に腹を立ててはいけません。

 理屈を考えず、そういうルールだと思いましょう。


 いくつかレビューを見ていて「なるほど」と思ったのが、アダムは上の世界では常に逆立ちをしながら歩いているのと同じ状態なのだから、頭に血が上ってあんなにゆっくりできない、というものです。

「下の世界のものは下の世界の重力に支配される」という法則から、アダムがお手洗いに行くと、出したもの(小。腹痛じゃなくてよかったな!)が天井に浮かんでしまうシーンがあります。

 つまり、アダムの体内の血も同じ状態になるはずだ、ということです。

 確かにそうだね。


 SFだと思って見ると設定がおかしいし、第一、反物質(逆の世界の物質)を身に着けていると発火する、という仕組みがまったくわかりません。美容クリームも。

 別の世界の人間の接触は厳しく禁じられているはずなのに、ワリと簡単に行き来できるのも不思議です。この世界の人々は何につけ根本的な対策を取らないのでしょうか。

 設定は設定として良いとしても、同じことばっかりしているアダムがただのおバカさんにしか見えません(かわいいといえばかわいいですが)。

 考えている時間がなくてつい約束してしまう、というのはともかく、10年経ってまた同じことをするというのはいかがかと。

 10年経ったら少なくとも20代半ばだし、もうティーンの恋は卒業していてもいいのではないでしょうか。


 そもそも、どうしてそこまでエデンを好きなのか、よくわからない。ひょっとして下の世界に若い女性はいないの?

 ジム・スタージェス演じるエデンは確かにかわいらしいですが、どういう人間なのかほとんど描かれていなかったので……そんなこと考えなくていいですか、そうですか。


 こういうお話のプロトタイプって、ロミオとジュリエットだと思うのですが、恋があり、障害があり、それを乗り越えて結ばれるか、うまくいかず悲恋で終わる。

 この話の場合、恋に落ちた理由がわからず、障害を前にして本気で乗り越えようとしているのかどうなのかよくわからず、結局すべて他力で乗り越えるので、「ふーん、よかったね」というかんじです。


 なので、かなり長い時間同じようなことを見せられている気分になってしまいました。


 しかし、やることはしっかりやっていたという笑撃のラスト



 映像はとてもきれいです。絵本ぽいから、好き嫌いは分かれるかもしれません。

 しかし、通常画面では上下に人がいても特に酔わなかったのに、下の世界で下の人同士が交わすごく普通の会話のシーンでちょっと気分が悪くなりました。カメラ回りすぎ。


 ボブ役のティモシー・スポールがきっちり脇を固めていました。


 なんせファンタジーです。ロマンスなんです。

 難しくない、純粋で害のないきれいなお話ですので、デートムービーには良いのではないでしょうか。

 クソ甘いロミオとジュリエットに興味のない方は、寝てしまわないように気を付けてください。


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 ガッチャマンを見てきたような気がします。


 監督:佐藤東弥 『ごくせん The Movie』 『カイジ1・2』

 脚本:渡辺雄介

 演出:松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽、濱田龍臣、鈴木亮平

 公式サイト:http://www.gatchaman-movie.jp/

 評判:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130830-00000001-nkgendai-ent



 ◆お話

 いきなり襲撃してきたギャラクター(どっから来たんだ!)のせいで、地球の半分は壊滅状態に。

 彼らは不可視のシールドに守られ、人類の武器は役に立たなかったのである。

 ギャラクターに対抗するための力を秘めた「石」を使いこなせる「適合者」は800万人に1人。微妙な数だ。


 ある日、東京に巨大なメカが出現、秘密会議の会場を襲う。


 ガッチャマン、出撃だ!


*


 ……というようなところから始まったような気がします。


 出撃命令が下る前に、なぜか町をぶらついているメンバーたち(潜入しているらしいが、いまいち「潜入」の意味がわからない)。


 そのあと、獅童が出てきてベルク・カッツェが出てきて、衛星からレーザーが発射されるからとかってそれを食い止めに行って、なんとかかんとか。


 最後の出撃の直前、ひたすら任務を優先させる健に、竜とジュンが「おかしい」と食って掛かる。

 そこへジョーが出てきて「おまえら寝てろ。俺だけ行く」。

 南部博士「全員で出撃だ」

 しぶしぶ全員出て行ってゴッド・フェニックス(テスト飛行もしていないという)に乗り込む。

 チームの心はバラバラ。


 こんなんで大丈夫なの!?的な緊張感は特になく、みんなわがままに見えるだけ。甚平がいちばん大人だ。

 このへんは見せ場のつもりだったのだろうが、かなりペラい。


 5人は敵基地へ潜入。


  ↓ なんやらかんやら格闘する


 健「俺は一千万人を助けるために一人の命を犠牲にするという考え方を否定する」

 と長い言いにくそうなセリフで急に任務第一主義を否定し始める。


  ↓ なんやらかんやらで任務成功する


 さんざん単独行動をとって迷惑かけまくりのジョー「おまえら、最高だ!」

 あんた、最後のミッションでは健以外のメンバーとなんの接点もなかったじゃないか!


 一同、笑顔で帰還。



 ( ゜Д゜)



 ◆思ったこと


 ガッチャマンじゃなくても良かったんじゃない?

 というか、作った人たち、ガッチャマンのこと好きでもなんでもないだろ?


 原作と設定が違っていても、ストーリーが違っていても、スーツが違っていても、ハッキリ言って面白くなくたってカッコよくなくたって別にかまわない。

 でも、「ガッチャマン」というタイトルを戴くのであれば、気に入る・気に入らないはともかく、せめて「ガッチャマンを見た」と思って映画館を出たいものです。

 まぁ、カッコ良くないガッチャマンって、無いわけですけど。


 で、今回思った主なこと。


 俳優さんたち、おつかれさまでした。

 逆境にめげず、よくがんばっていたと思います。


 剛力さんはともかく、甚平と竜の適当な扱いぶりはかわいそうでした。

 竜の「お母さん」の伏線(?)は途中で放り投げられ、竜の存在も投げられた。


 役どころとしては、ベルク・カッツェがおいしかったのではないでしょうか。諸所で指摘されている通り、ドロンジョ様のレプリカのようではありましたが。

 カッツェとジョーが対峙するシーンの綾野剛、見ていて痛々しいというか可哀そうでした。お芝居の問題というより、撮り方の問題じゃないかと。演出してやれよ。


 アクションシーンは悪くはないというか、「こんなものかな」と思えばこんなもので、想像していたよりは良かったです。

 でも、原作のアニメ自体がそもそも実写っぽくてカッコいいからなぁ。

 あと、ギャラクター基地に潜入したんなら、お約束のかおりがプンプンでもホールで戦ってくれてよかったのに。


 健は走るのが遅そうだった(笑) それに、腕を振らずに忍者っぽく走ってほしかったです。

 これも撮り方の問題じゃないかと思いますが。


 ところどころにギャグ要素らしきものが織り込まれているのですが、これがなんともいえず浮いていました。



 ◆不思議なセリフ


 「俺が見えるか、悪党ども。実体もなく忍び寄る白い影が」


 言い方がカッコいいので騙されかけたがちょっと待て。

 「実体もなく忍び寄る白い影」ってそりゃ幽霊だろ

 実体を見せずに忍び寄らないと!

 ホンが間違っていたのだろうか。セリフの覚え間違いだろうか。

 決め台詞にしたかったんだろ? 誰か気づけよ。


 そして、ジュンのセリフ。


 「醜いスーツを着せられて云々」


 これは制作サイドの自虐ですか? 笑えないですが。



 ◆ガッチャマンってなんだったのか


 ガッチャマンは石の「適合者」たち5人の集まりで、本作中ではガッチャマンとか科学忍者隊とか呼ばれることはなく、エージェントと名乗ったり呼ばれたりしています。


 別にいいんですけど……。「『ガッチャマン』って響きがカッコ悪いから口にすんのやめよ」的な何かでしょうか。ちょっと寂しかった。


 ガッチャマン(としておきます)は一応5人いるのですが、健とジョー以外はお飾りでした。

 健とジョー以外というか、桃李と剛以外は。


 この映画を見ると、ガッチャマンという人たちは、「適合者」として生まれたことに葛藤を抱きつつ、様々な思いを胸に戦うヒーローというより、くだらないラブコメとどうでもいい痴話喧嘩を繰り広げる、私怨にまみれ私闘ばかりしている人々でした。



 映画館はかなり空いていて、全員女性でした。

 タツノコのアニメグッズを眺めるのは私だけで、皆さんは松坂桃李の写真の入ったクリアファイルやパンフレットを買い求めていました。


 松坂桃李と綾野剛が出演するものはコレクション的な意味で全部見るんだ、という方々だったのでしょうか。しかし、もっとこの二人の魅力を引き出せる作品はあるでしょうから、これにこだわる必要はないのでは。


 ガッチャマンファンは喜ばないだろうし、俳優のファンは別にこれでなくてもいいだろうし、子どもたちからはカッコいいヒーローに見えないだろうし。


 まぁ、まとめると残念な映画でしたが、ひとつ、地味に南部博士に似ている岸谷五朗の地味ながんばりは、なかなか良かったです。


 ラストだけなぜかホラー風味でしたが、続編を作るつもりなのでしょうか。

 やめといたほうがいいんじゃないかなぁ。


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 なんでジュンはスカートじゃなかったんだろう。

 確かに、パンチラしながら戦うのはおかしいですよ。

 でも、そんなところにリアルはいらないのに。