「進化する自由」ならぬ進化する何か | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

コーヒー一杯からでも哲学できると嘯いたフッサールはともかくとして。

先日のゲーム脳一笑記事の関連からの派生。
ボクらは「桃鉄」で日本地理を、「信長の野望」や「三国志」で歴史を学んだ
>知識の量が増えるといった効果は確実にあると思います。ただ、私が考えている教育的な効果は4段階あるんです。最初は教科書を読むのは嫌だけど、ゲームならば取っつきやすくなる「モチベーションを作る」効果。次の段階に、先ほどいった「知識が増える」効果。これは繰り返しプレイしていれば、漢字や英単語と同じように自然と覚えていきます。この次には「歴史に対する認識を深める」効果が挙げられます。というのも、知識の積み重ねによって、その時代のイメージをプレイヤーが思い描くことになりますよね?これが教育効果としては高いレベルにあると考えています。

>そしてRPG、特に最近ではオンラインゲームのMMORPGですが、これにはさらに高い効果があると思っています。それと言うのは「人間の行動様式に対する」効果なんです。例えば協調性や人格形成であるといったものが、ゲームを通して可能になる。

ルイス・キャロルだったと思うのですけれど、「教訓は探そうと思えばそこら中に転がっているさ、見つける気さえありさえすれば」みたいなもので探そうと思えば知はそこら中に転がっているという話。

以下 無茶苦茶長いかも。

始めはコーヒーの代わりにバナナ↓
【徹底】バナナはおやつに入るのか?【検証】

43 名前:ウィリンク 投稿日:05/01/21 02:28:21
哲学的アプローチの論理的手順

1、(バナナとは何か>>5>>8よりむしろ)おやつとは何か
 御八つ、八つ時(午後三時頃)に食べることから。
 午後に食べる間食。お三時。
  三省堂「大辞林 第二版」
 cf.デザート>>9
 原意はコース料理の最後に供される料理
 すなわちデザートとおやつの違いは食後か食間かの違いである。

 >>32の言うように「弁当に入っているか否か>>4>>27」「皮の有無>>4>>10-20>>30」は食事として食べる用意にあるかという問題に含まれるもので「おやつとは何か」という問いをもって答えが導き出されるものである。

44 名前:ウィリンク 投稿日:05/01/21 02:28:54
2、生徒対教師、あるいは生徒対生徒
 「バナナは・・・」の質問は、当然に生徒から先生に対して投げかけられる問いである。この質問は素朴な疑問というよりはむしろ、>>2の指摘にもあるように問われるべくして存在する問い、であり、答えるための問いではなく問うための問いなのである。様式、儀式>>38=存在理由 単純に権力者による規制>>34への反抗とも読めるが権力の集中は、万人の闘争を防ぐため>>36に行われるものであるからこの確認作業の起因は生徒対生徒の権利をめぐる争い主権の正当性の確認でもあった>>37>>40。

3、バナナはおやつか?
 1の条件(食間)を満たせばバナナは一般的に考えればおやつにすることができる。それどころか、おにぎりですらおやつになりうるのだ!!
 しかし遠足が教室という閉鎖的関係をそのまま戸外に持ち出した
 <形式だけの自由>である以上、この質問から逃避することはできないし、この質問を繰り返すことが唯一<形式だけの自由>を告発する手段なのである。

4、バナナはお菓子か?
 果物です。>>21
 近年の問題として、お菓子と果物のボーダレス化>>26>>29がある。
 cf.肉まんはお菓子か?

110 名前:考える名無しさん 投稿日:05/01/24 02:38:03
バナナはおやつではない。なぜなら、「バナナである」と「おやつではない」という二つの表象は必然的に結びついており、アプリオリな綜合判断をなすからだ。次に問題になるのは、どうしてこの綜合判断が可能になるか、を演繹することであろう。

111 名前:T 投稿日:05/01/24 03:41:36
>>110
反論です!

・「バナナ」と「おやつではない」は必然的な連結を持たない。

つまり言語によって「バナナがおやつではない」と言表化されることによって「バナナ」と「おやつではない」が連結されるのである。つまり連結された「バナナがおやつではない」という言葉が連結という効果を持って意味を持ち始めることになる。よって、バナナという言葉からはいかなる述語となる解釈は導き出されない。

なおしかし、「バナナが果物である」という一つの真理は、すでに「バナナは果物である」という我々の事前理論によって既にあるだけなのである。そしてこれを、アプリオリな統合判断と呼ぶことができる。

112 名前:考える名無しさん 投稿日:05/01/24 03:45:58
>>111
「バナナである」と「おやつでない」は、つねに近接して現れており、この二述語の観念連合は、帰納的にはかなりの蓋然性を持っている。

113 名前:T 投稿日:05/01/24 03:58:36
>>112

「バナナ」という主語からは、事前理論によって「黄色」「果物」「甘い」「ブーメラン状」という述語は導き出されるが、「おやつではない」という述語は決して導き出されない。

「おやつではない」という述語は「おやつである」という言葉の否定文(判断)であり、「おやつがある」という対称関係にある文以外のいかなる述語も導き出されない。

・「おやつではない」は「おやつである」ではな・い。

というように。

114 名前:T 投稿日:05/01/24 04:00:16
>>113 補足
なお、事前理論は私流にいえば、待機理論としたいところでもある。

115 名前:T 投稿日:05/01/24 04:21:00

なお、判断文は基本的な区分では「人」・「場所」・「時」の条件を基本的に消去する。「・・・である」という言表は「・・・でない」を打ち消すものであり。「・・・ではない」という言表は「・・・である」を打ち消すものである。

つまり打ち消しが効果を持つということは、判断文は「・・・である」「・・・ではない」という判断が下されるまでは言表化されなくとも機能していると言うことである。これを時の区分を打ち消す効果と私は呼んでいる。つまり「・・・ではない」は一つの判断であり、それ以上のものではない。判断は施錠したり、解錠したりの効果を持つ。

ちなみに蓋然的であるかどうかは、「バナナ」と「おやつ」という二項の問題でありすでに>>111で述べたように、述語関係にはない。

しかし「おやつ」という述語からは「バナナ」という述語が導き出されるかもしれないが、それを取り決める手段は、先ほど言った事前理論をおいて他にない。「おやつ」からいかに演繹的に「おやつであるもの」を導き出そうとも、「おやつ」であると思われる『ジャムパン』には「おやつ」か「弁当」かという問題にはまったく何一つ答えられないのである。これは「バナナ」においても同様である。

明らかに不毛でしかないと思われる人もいるかもしれないけれど、過去はともかくとして現在の哲学なんて所詮こんなもんだって気がしない?言語ゲームのためのルール、哲学するための哲学、一枚皮を剥げばその下はバナナと対して変わらないと私は思う。もちろん、すべての哲学とは言い切らないし、それを悪いとは言わないよ。ただポストモダン末期に露呈したように大半の哲学は遊戯に堕して生産的な学問の地位は滑り落ちている。しかし一概に否定しないのはその遊戯圧倒的な淘汰、ノイズ、残骸の上に新しい知が出てくるという進化論の文脈に、今までの未解の答えを見つける可能性があるみたいということ。

↑の補足みたいなもの。↓の文章は本文がメインではなくてコメント欄に総てが集約されています。
倫理研第3回: 北田暁大 講演
># noname 『北田さんのリベラリズムとは、ようするに世間一般の常識的な態度を、ということだと理解します。もちろん、北田さんは、社会学者ですから抽象的な議論をされていますけど。もしそうであれば、わたしはそれに同意します。ただ、問題は、リベラリズムがどんなに優れた理論だろうと、それを実現する方法がないということです。啓蒙することなど、それこそネット上で不可能なことは自明と思います。この討議も、まじめに読んでいる人間はわずかでしょう。社会学会で発表したところで、何人が聞いているでしょう。これでは、どんなにすばらしいリベラリズムの思想も、机上の空論でしかないのではないか。北田さんは、あるいはここで討論されたかたがたは、自分の発言の実効性について、どこまで考えていらっしゃるのでしょうか。』

上で長々とハーバーマスやら引用したのに台無しのコメントです。次は恋愛とはそもそも幻想に過ぎず、そしてそれだからこそ既存の枠組みを打ち壊すエロスの力を発揮するというまさに近代小説のテーマみたいなものを体現したような内容↓
お前らネトゲでチャHした事ある?

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:16:11 ID:MvLkWeQB0 BE:285912768-#
うーんこんなところで告白することじゃないけど、俺、ROで♀キャラ使ってはじめたんだよな 銀色の長い髪の剣士が可愛かったから、イメージでチャット下手で、ソロでやってたんだよ

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:20:46 ID:MvLkWeQB0 BE:375259897-#
戦いに疲れて首都のはずれの草原の木陰で休んでたんだ ボーっとしてたらいつの間にか隣に知らない男の人が座っててさなんか話しかけられたんだよ

154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:23:52 ID:MvLkWeQB0 BE:190608948-#
最初はちょっと怖くて、逃げようかと思ってたんだけどその前にいきなり変な人にいじめられたりしたのもあったんだろうな でもそいつは優しくていい奴で、時間忘れて話し込んじゃっていつのまにか仲良くなっちゃったんだ その人がいろいろ教えてくれてさ その人はプリーストっていう職業だったんだ

158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:28:51 ID:MvLkWeQB0 BE:268043459-#
そいつと会うまでは首都プロンテラっていうところと、港町イズルードっていうところと、その町と町を繋ぐ草原と、そのはずれにある砂漠と、その先のポリンっていう可愛いモンスターがいるところしか知らなかった そいつは優しくて、初心者で何も知らない俺に一から教えてくれた 装備も貸してくれた

162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:33:27 ID:MvLkWeQB0 BE:214434094-#
俺は、その草原の木陰でいつもログアウトして、ログインすると決めていた意味はないが、そういうきまりだった だから俺がログインすると彼はいつも目覚めた俺の横に妙なタイトルのチャットを出して座っていた 寝ていることもあった 俺はいつも決まって無口だった たまに口を開いても無愛想だった 俺が冒険に出かけようとすると彼はついてきて、俺が死なないように回復魔法や支援魔法を唱えてくれた 最初は悪いような気もしていたが、彼のいうところによると、俺のレベルが彼のレベルに近づき、PTを組むと勝手に経験値が入る仕組みになっているらしい 公正な取引、投資なのだそうな

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:41:52 ID:MvLkWeQB0 BE:71478926-#
俺ははじめこそ彼につれない態度をとっていたが、次第に彼と冒険に出ることが当たり前になっていった いつしか彼は俺の生活の一部になっていた 無口な俺と機関銃のように喋る彼 それはいつもの日常だった ふたりっきりで毎日過ごした 一日中イズルードの船着場で彼の話を聞いたり、草原をずっと散歩したり、おもちゃの国でケーキを集めたり、空中都市の城中の図書館でふたりで一日中本を読んだり(ゲームをつけっぱなしにして読書をした)時には彼の友達と一緒に恐ろしい古城で魔王を見学することもあった 毎日が楽しかった

174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:49:55 ID:MvLkWeQB0 BE:160825493-#
そんな平和な毎日に変化が訪れた それは、夏の終わりの涼しげな夕方だった 彼が突然妙なことを尋ねたのだ
「夏影はボクのこと好き?」
俺は返答に窮した 彼は俺を女だと思っていたようだ 俺は本気で困った 全力で困った

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:52:55 ID:MvLkWeQB0 BE:142956746-#
今、男だと言わなければ彼を傷つけてしまうのではないか しかし男だと言ってしまえば、彼の気持ちは宙ぶらりんになってしまう どうすればいいのか、本当に困った そこで俺はふと気づいた 好きか、と聞かれれば、好きだ、としか言いようがない 事実俺は彼に何か特別な感情を抱いていた それは恋だったかもしれないし、純粋に彼の人間性への憧れであり、信頼であったかもしれない

179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 06:56:13 ID:MvLkWeQB0 BE:160826639-#
だが俺は彼を女性から見た男の子として見ていた 彼は俺を無口で妙なお姉さんとして見ていた 俺は彼の中の俺というイメージを壊すことを恐れたのかもしれない また、彼に男だと言えば、彼は去るかもしれない 俺は怖かったのだ だから彼に嘘をついた 一生消えない嘘だ「私は女だ」と

183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:02:03 ID:MvLkWeQB0 BE:71478926-#
それからの俺の心は夏の嵐のようだった 彼を裏切ったという罪の意識と彼が俺に抱く特別な想いが交錯して、ごうごうと吹き荒れた・・・俺は彼を受け入れた 彼の魂の全てを受け止めた 彼が俺を好きだという想いはとても崇高なものに思えた 俺にはそもそもそういうケはない つまり同性愛など気味が悪いと思っていた だが彼を受け止めるということはそれを肯定することだった 俺は男だ いくら思考が女性に偏っているとしても、俺は男なのだ。そして彼も男だった。それが所謂悲劇なのだろうと思った それは背徳でもあった 彼は俺が男だと知らないのだ 深い裏切りだと思った

190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:07:31 ID:MvLkWeQB0 BE:47652342-#
以前よりも彼は俺と一緒にいたがるようになった どこに行くのでも彼と一緒だった ・・・つまりひと時も離れなかった 彼が俺の名を呼ぶたびにドキドキした 心臓が高鳴って胸の奥の一番柔らかい場所がぎゅっと締め付けられた 俺はあろうことか彼に恋心を抱いていたのだ もうおかしいなどと感じる暇もなかった 心のすべてで彼を感じていた 一分一秒を大切に生きた 女としての恋だった そう、俺はネカマになっていた 心さえも

193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:13:32 ID:MvLkWeQB0 BE:190608948-#
学校の帰り道、図書館で本を読んだ ゲームから少し距離を置こうと思ったきっと錯覚なのだと 俺は男なのだと 手に取る本は性とか、愛とか、恋とかの本だった だが俺を導いてくれるような本は見つからなかった 当たり前だ 仮想世界で女として男を好きになった人間なんてほとんどいない 俺はとんでもない異常倒錯者だ それでも彼と会うのはやめられなかった 彼は俺の持っていないものをすべて持っていた 彼と俺でひとつの人間だった 少なくともそのときはそう思っていた

203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:21:02 ID:MvLkWeQB0 BE:35739623-#
昼も夜も彼のことばかり考えていた そして女になることばかり考えていた彼好みの美少女になれたらどんなに素晴らしいだろうか しかしそれは妄想だ ふと覚めれば俺は男だ 華奢で色白で、小さな頃はよく女に間違えられたが、確かに男だ それが苦しかった 男はどう頑張っても女にはなれない 世の中の普通の人間はこのような苦しみなど経験しないのだろうと思った 男と女どうし、愛し合って結ばれるのだと

209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:27:34 ID:MvLkWeQB0 BE:381216588-#
ふとしたことで、彼と俺は一線を越えた チャット上でセックスを疑似体験する行為をしたのだ チャH、と呼ばれるものらしい 俺は女になりきった 彼が自分を際限なく求めるのをうれしいと思った 二人ともどこか似ていた 想像力が強い、とでもいうのだろうか 彼のつむぐ文章は俺の心を締め付けていくつもの言葉を生んだ 彼は自慰をしているようだったが、俺はとてもそういう気になれなかった 俺は彼が喜んでくれればそれでいいと思った 何度も行為に及んだ 首都の宿屋ネンカラスで 民家のベッドで 森の中で 時には街中でチャットを出して、やった

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:34:23 ID:MvLkWeQB0 BE:482477099-#
そんな虚偽と背徳の上にある平穏も、いつまでも続かなかった いつしか彼は"私"と"現実"で会いたいとこぼすようになった 仮想空間では我慢できないと 彼は奥手だったが、情熱家だった 俺はついに追い詰められた 言うしかなかった

"男"だと

223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:40:08 ID:MvLkWeQB0 BE:53609033-#
俺は怖くて体が震えた 言って、すぐにログアウトした ベッドにもぐりこんで少し泣いた

・・・それから2週間、ログインしなかった

他人を痛いほど好きになったのは初めてだった 初恋は女性だった 教育実習の女の先生だった 彼女は俺を子供としてしか見ることがない そんな感覚と、彼と俺の関係は少し似ていた 叶うはずのない恋を、ネットは創り出し、そして叶えさせた

それは未完成だった 男は女にはなれなかった あと何百年かかるのだろう 性別を完全に超えることができるまでは

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:51:06 ID:MvLkWeQB0 BE:89347853-#
2週間、俺は魂の抜けた人形のように暮らした 彼の存在は大きかった 俺の心の中枢部分を大きく占有していたのだ 俺は自分を何度も何度も責めた なぜ嘘なんてついたのだと自分が傷ついたことよりも、俺は彼が心配だった 体を合わせるだけなら、心は遠くにあってもできる それは単なる交尾だ 生物学的で科学的な行為だ 俺と彼は心と心の一等敏感で傷つきやすい部分をこすり合わせた 傷跡を舐めあう動物のように 彼はその傷口を俺に全て曝け出したのだ 俺を信頼していた だから俺はうれしかった だが俺は、どうだ 最低な人間だ 嘘をついて隠していた 彼は壁に向かって愛をささやいたのと同じだ 彼が曝け出した心にナイフを突き刺して逃げたようなものだ

俺は最低だ

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 07:56:21 ID:MvLkWeQB0 BE:148913055-#
あの日から2週間と少したったある日、俺は意を決してログインした 謝ろうと思ったからだ 謝って許されるような問題じゃないことは自覚している でも、それでも、謝らずにはいられなかった 彼のことを愛していたからだ 陳腐な言葉じゃない 彼を人間として深く愛していた 彼は行動で、愛は相手に注ぐものだと教えてくれた 男は惚れるところに価値があるのだと 愛とは一途なのだと だから俺は彼にすべてぶちまけようと思った 嫌われていても、本当の言葉を伝えようと思った

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 08:00:44 ID:MvLkWeQB0 BE:321651296-#
パスワードを入力して、ワールドを選択して、いつものサーバーに接続して、夏影をダブルクリックした 俺はいつもの草原の木陰に降り立った 彼を探そうと思った 彼がいないかもしれないなどということは微塵も考えなかった ふと見ると、彼がそこにいた 座って、チャットを出していた

俺は少し戸惑ってからチャットに入室した 数秒してからウィンドウに文字が打ち込まれた 「おかえり」と

259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 08:08:39 ID:MvLkWeQB0 BE:95304544-#
俺は固まった 返答に窮した いつかの俺みたいだった しかしそんな様子の俺にはかまわず彼は言った

「今日はどこへ行こうか」

俺は困ったが、彼はやはりかまわずに勝手に行き先を決めてしまった 狩りをしながら 俺は言った 全部ぶちまけた 洗いざらい曝け出した 彼は舌を出して首を横に振るモーションを出して言った「そんなこと気にしてないよ」俺は尋ねた 裏切ったことに怒ってないのか、と

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 08:16:14 ID:MvLkWeQB0 BE:47652724-#
彼は言った 本当のところを言うと少し残念だ、と 自分が恋した女の子はコンピューターの中にしかいないのだから、と パソコンの中のAIに恋してしまう漫画の主人公みたいだ、と でも、本当は男なのにネットではこんなに素直で可愛い女の子になるんだね、って俺は何度も感謝の言葉と謝罪の言葉をつぶやいた ありがとう、ごめんなさい、と彼はこうもいった 男の子がネットではかっこいい女騎士になって、恋をするなんて、SF小説みたいだ、って

ふたりはSFの主人公だったのだと思う

新しい時代の新しい恋愛の形だと思う

彼とは男だと分かった後も何度も愛をささやきあった チャHもした ネットで何度もデートした 楽しかった

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 08:22:20 ID:MvLkWeQB0 BE:321651296-#
俺は女性として魅力的だったのだろうと思う 鏡のように相手の好みの女性になれるのだから女性よりも高次元の存在なのだろう

だが、川が流れ、風が吹き、雲が旅をするように別れがやってくるものだ 始まりのある物語には必ず終わりがある そんな不思議で倒錯的で情熱的な恋にも終わりが来た

彼は本当の女の子と仲良くなったのだ

浮気、とか、そういう感情は不思議と湧かなかった 逆にホッとしたような気がした 少し幸せで空虚だった

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 08:29:07 ID:MvLkWeQB0 BE:381216588-#
会う回数も減り、二人とも少しづつ現実に覚めていった ログインして、彼が木陰にいなかった日、wisを入れようとしてふと思った

もう、いいのではないだろうか?

俺はありったけの金を使って、着飾って、教会でそのスクリーンショットを撮った それと、彼との思い出のスクリーンショットををCDに焼いた

そしてそのままログアウトしてアンインストールした それから、二度とログインしていない

今も夏影は管理会社のサーバーの電子の海の底で眠っているのだろう あの瞬間をとどめたまま あの恋の記憶を持ったまま 俺の身代わりになって

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2005/06/01(水) 08:33:26 ID:MvLkWeQB0 BE:214434094-#
('A`) 恋は性別を超越します それをネットは可能にしました そして俺はホモじゃない 不思議な体験でした

おそらく↑のやりとりについて、誇張物語乙とか、別に新しくも何も無い。古くはビンや風船を介した友達になろう手紙とか、読者欄を使った呼びかけの同士の間でも同じような関係はあったじゃないかという考え方も出来ると思います。ただこの関係においては両者でともに旅をして同じ美しい風景を見たという現実ではありえないような強烈な経験を共有できたということ、そしてその思い出をデータとして永遠にもてるということ、そのことの意味を真剣にでもなくていいので余韻にひたりながら想いを巡らしてもいいように思います。



ネットがどんどんノイズだらけでつまらない場所になっていくというまるで戦前を懐古するおじさんのような意見もちらほらでてくるようになったけれど…私はそうは思いません。


『砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているからだよ。』

                        サンテグジュペリ

Comments
自分が美しいと思った物語についての感覚を某か共有してもらえるのは本当に嬉しいです。元スレが倉庫入りしたのでこのまま埋もれてさせてしまうのはもったいないと思い転載しました。チャット、文字のみでは絶対に伝えることのできない繊細なやりとりをお互いに文間を読むことで成立させえた(一方からの報告では分からないとする向きもあるとは思いますが)その奇跡に馳せるとき…萌えますね。
commented by 遊鬱
posted at 2005/06/05 22:45
『お前らネトゲでチャHした事ある?』、ものすごい感動しました。萌えー。
自分のツボに入りまくり。残念ながら元スレは倉庫入りのようですが、
この物語に出会わせてくれたことに感謝します!
commented by 唯石
posted at 2005/06/05 02:09