アウフヘーヴェンⅢ | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

「他人を見下す若者たち」速水 敏彦 (著) みたいな本がAmazon.co.jp 売上ランキング:本で136位(今日現在)という数字をみて驚愕(こんなものが2つ☆なんてありえないので投稿用)。新書って実のところタイトル名がセンセーショナルで、俗情に媚びた鬱憤晴らしのような内容が売れるという媒体なんですか?

この書物なんてまさに「他人を見下す速水」という構図以外に何も読み取れません。仮にも心理を専攻に教鞭をとってきた人間がこんなにも雑な調査で心理傾向をでっちあげるんですか?「仮想的有能感」なる造語の調査で教師による客観評価を妥当性の根拠にしていますが二人、しかもその低、中、高の評価群の差はほとんど1点ですよ?そしてそんな粗末な調査だけでは自論の補強には足りないと思ったのか、正高信男やら香山リカやら歌詞分析(見田宗介先生の時分ならともかく、10年前にもはや無効になる「サブカルチャー解体論」で烙印押されたと思っていたのに、自己肯定の歌詞が増えているんですってエエェェ(´Д`)ェェエエ)、それどころか最近の若者は無神論なのがいけないとかほざきだす始末。

しかも読んでいると若者が何歳までを対称にしているのかすら分からない。60年代ころの若者から今の若者までいっしょくたにして批判しているわ、前半では今の若者はエネルギーが乏しいと批判したかと思うと後半では「仮想的有能感」を唱えて若者が我慢が足りないとか相互に矛盾しているようにしか思えない主張が混線していて意味不明の一冊です。

もうこの種の言説って言いっぱなし、言った者勝ちの様相を呈していますね。でもいつ時分もこんな愚者の仲間入りするか分からないと危機感をお持ちの方にお勧めが「論理で人をだます法」ロバート・A・グーラ (著), 山形 浩生 (翻訳) です。(。。。書評めいたものは読書に追いつかないし、きりがなくなるんであまりしない方針だったんだけどどうしたんだろう?)これ一冊で日常レベルそして↑のような愚書程度の判別は即座にできるようになる優れものです。論理学、統計、社会心理、マーケティング、ディベート技術などから実践的な知識を分かりやすい例文とともに収録してあって、1400円という値段も考えるとこれだけリーズナブルな「辞書」はないと思います。

ただあまりにも実用的であるがゆえに読者にはそれをあくまで他者の言説の真偽の判別にこそ使う、もしくは日常生活においてそのような言動をとっていないかという自省に使うといった謙抑的態度こそ必要になると思いますが。

【参考】
「竜に一人一人順に喰われていくのが嫌ならば竜を皆で殺すしかない。」 で触れたDHMOなんてまんまこれ
アウフヘーヴェン
アウフヘーヴェンⅡ