「Pure×Cure」
発売間もないのでプレイ検討中、プレイ中の方はお読みにならないことをお勧めします。
久方ぶりのPCゲー(昨年は2本だけです。「クラナド」
と、「Fate/stay night」
←こちらは最新作「Fate/hollow ataraxia」発売後まとめて記録します。)としてほんわかと楽しめました。
男女共学の学校に4ヶ月だけ赴任することになった新米の男性保険医と彼を巡る女の子たちの心の交流を描いたものとなっています。このソフトの魅力は主人公である「ひーちゃん」ではなく、女の子たち同士の戯れ(会話、心配り、交流)にあります。そのことは主人公自身が自覚的であり、保健室(そして各人が巡り合うような最初の一押し)という場の提供に留めようと意図的に介入を減らそうと心がけていることにも表われています。
それは4ヶ月という限定された時間しか持ち合わせていなかったということに由来するのではなくて、昨今の「スクールカウンセラー」導入に見られる動きとは一線を画する子どもたちの可塑性への信頼に基づいているように思えます。それがおそらく保健室を包み込む優しく愛しい空気、雰囲気として魅力そのものとなっています。
ですからこのゲームの魅力は、ファーストプレイ時(何回やっても新たな分岐のない繰り返しになるので)にその場が醸成されていく過程(一人、一人と加わっていくことで保健室という場が共同体化していく)とその場が損なわそうになったときに取り戻そうと苦悩する主人公以外のキャラの動向に集約されます。
一方、主人公が抱え囚われている好きな人を失ったという過去は、その星を巡る回想を含めて消化し切れていないせいか、主人公に対する感情移入を阻んですらいる。それは最終話「先生の卒業式」において端的に分かる。彼女が星好きだったという設定→星=桜→主人公の卒業式という一連の流れにおいて過去と現在の繋がりが説得的に描かれないないため唐突感に目を奪われ感動を呼び起こしくくすらしている。これは主人公だけではなく、その他のキャラについても同様で保健室共同体に加わるまでの問題と、その後明かされる、降りかかる各人攻略ルートの問題が保健室という場を巡る物語に拒絶反応を起こしてしまっている。
この拒絶反応という観点でこのゲームを改めて見ると、その他の問題点も色々と気付く。ゲームシステムとしてアドベンチャーパートにバリエーションが無いのに一度にぐるーっとほとんどの会話を同時選択できてしまうため、特に各人攻略ルートを定めた際には単なる作業と化し(スキップもできるが)大半の会話が無用なものとなってしまうこと(むしろ会話のバリエーションを増やせないならば選択場面においては1つしか選択できないシステムをもっと増やすべきだった)。
同様に診察モードもゲーム性を増そうという意図やよしなのだが、問題数が少ないこと(しかも内容も似たものばかり)、ご褒美絵の一つ(おまけで一つだけ)もないため単なる苦痛な作業となってしまう。
エロゲーとしての実用性についてはあまりうんぬんしたくもないけれど(フルボイスだからいいという意見もあるかも)、どのキャラを攻略してもその行為が単調、変化が乏しいように見えて仕方が無い(同じ行為が目立つ)。それに絵自体少ない上に顔と身体のバランスがおかしくない(特に胸)?
色々と書いているけれども、最初に記したように保健室共同体は本当に魅力的なのでその空気を吸うだけでも価値はあると思います。
個別キャラについて
橘果林 評「もうすこしがんばりましょう」
保健室共同体の包容力の象徴、ムードメーカーとしてとても微笑ましい存在感を放っています。ただ主人公にとっては共通の傷を抱える人物としてその傷の癒しあいと妹→恋人の流れがやっぱり…でその魅力を損なってしまっています。
吉野みずき 評「たいへんよくできました」
保健室共同体のリーダーとして、また個別キャラとしてもとても魅力だと思います(私の一押しです)。その頼られるお姉さんとして精一杯背伸びをしている状態から、一人の女の子として恋人になっていく過程は非常に可愛らしいです。そして主人公が囚われている過去と直面するという点においてももっとも整合性、説得力のあるシナリオとなっています。
何はともあれ、
_ ∩
( ゚∀゚)彡 メード!裸エプロン!
⊂彡
冠城遙南 評「もうすこしがんばりましょう」
天然のネコぶり(しかもゴスロリ!)がその懐き具合も含めて飼育したーいという感情を掻き立てられます。ただ引越しを契機としての不登校から保健室登校、そして教室への復帰という流れが感動的だったのに、やっぱり攻略ルートで撃沈。親の離婚騒動の現実感の伴わなさかげんが、父親の設定、母親の関わりとあいまって底の浅さが露呈。親子間、夫婦間、親と教師の間の触れ合いを描く手間を惜しんでは総てが融解していきます。
神楽坂月乃 評 「がんばりました」
保健室共同体の吸着剤として前半の頑張りが特に目を引きました。保健室を舞台とするという点でその病弱という設定を余すところ無く活かしています。ただ惜しむらくは病弱だけに留めておけば良かったのに…どうして解離性人格障害などという設定を絡めますか?むしろ病弱キャラとは別にもう一人加えるべきでした。人格が消滅するとかいわれても説得力に乏しく、萎え。
西原翔子 評「たいへんよくがんばりました」
保健室共同体の守護神。斜に構えてクールに振舞い、他を寄せ付けない生き方を選んでいたがゆえにその共同体の包み込む優しさの価値を最も痛感し大切に守り抜こうとした。そして攻略ルートにおいてクールなポーズをかなぐりすてて共同体を取り戻そうとする孤高の頑張りとそれを支える保険医のセットはとっても魅力的です。あとはHシーンがもう少し萌えられたらよりよかったように思います(巨乳キャラにしない方が良かったように思います)。
朱雪梅 評「もっとがんばりましょう」
…存在理由がよく分からない。チャイナドレス?攻略ルートは拒絶反応以前の問題です。
軍司都 評「がんばりました」
可も不可もない非常にオーソドックスなシナリオ。保健室共同体の構成員というよりは主人公のお姉さんという役割。過去の柵を解き放っての先輩から恋人への流れは果林ちゃんよりは恵まれていたように思います。
その他参考;「スクールカウンセラーに望まれるもの」