「電波男」という宣戦布告 | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

以前その発売の決定をお伝えしていた「しろはた」主催の本田透さま の魂の叫びの集大成である「電波男」 が実際に発売されました。

早速、購入し読ませていただきました。

いまや表紙のデザインと並んで本の売れ行きを左右する帯のコメントが

>『もはや現実の女に用はない。真実の愛を求め、俺たちは二次元に旅立った。』

>『にじげんでも いいぢゃないか をたくだもの。 とをる』

と激しく購入層を狭めていますが、一般書店だけではなくてアニメイト等のオタク御用達の店でも置いています(だから怖じることなく買うべし)。400ページを超えるあまりにも痛い熱い叫びに共感を覚えない人間はニュータイプたる資格はありません。一般教養としても必ず押さえて損はしないので買うべし(断言)!

この本のなかでも触れられている
岡田 斗司夫「ぼくたちの洗脳社会」
森川 嘉一郎「趣都の誕生 萌える都市アキハバラ」
それに
見田宗介「現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来」
を足して、この本も私の中でオタクにとっての預言書として聖典に加えます。

ある事物を相対化するにあたっての私の思考の根源は総てのものは時間と貨幣に還元できる(先輩に話したところ脳内物質も加えて欲しいとのこと)ということにあります。そのように相対化を徹底したあとで残るもの、徹底した後に見えるものが私にとっての有意味を担保する何かです。そのことを自分の中で整理するためにいろいろと書き散らしてきました。

ですから
恋愛・家族論
無神論
時間論
はカテゴリーで分類していますが総て連関した目論見のもとに書かれています。ただそれらのなかではあからさまなオタク賛歌は書いていません。それは総てを相対化したのちに残る何かとして位置づけていたからです。また、それを入れた途端に文章の説得力、切れ味が落ちるかと危惧(日和った)したからです。そのあえて避けて通っていた部分を本田氏が情念をこめて恐ろしいばかりの迫力で書かれています。

どのような経路を経てオタクになるかは人それぞれだと思いますが、本田氏のその血を吐かんばかりの悲惨な過去の自分(過去というか、つい最近までの)を曝け出して、オタクにならざるをえなかった経緯、思想には異様な説得力を帯びています。まさに正面から堂々と既存社会(それを「恋愛資本主義」と名付けておられます)に異議申し立て、宣戦布告をされています。その詳細は是非直接本書をお読みになって感じていただきたいです。

>『大衆というものはキリストが十字架におもむくとき、一体どんな態度をとったか?大衆というものは地球が太陽を廻るという真理に反対し、ガリレオを犬のように四つんばいにして引きずり回したではないか。その真理を肯定するのに大衆は五十年もの歳月を要した。多数が正しいのではない、真理そのものが正しいのだ。』

                              イプセン

その他関連記事としては(本書を読み終えたあとに一読していただければ幸いなことこの上ないです)「イノセンス」に関しての記事 及び、「クラナド」に関しての記事 をあげておきます。