暴走する”患者さま” by 久坂部羊~ジーク勤務医!~ | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

『自分が被害者になることから我々はある種の満足感を得る。不当さに対する憤りが人生に意味を与えてくれるからだけではない。それが前宵祭の灯りのように魂の暗闇で明滅する悪意の炎を弱めてくれるからだ。』

                ホッツァー「情熱的な精神状態」

563 名前:卵の名無しさん 投稿日:2007/11/22(木) 16:53:52 ID:AsMpaHDo0
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561 名前:卵の名無しさん 投稿日:2007/11/22(木) 16:52:25 ID:AsMpaHDo0
我々は、一つの科を失った。これは敗北を意味するのか?否!始まりなのだ!厚労省に比べ我が勤務医の戦力は10万分の1以下である。にも関わらず今日まで耐え抜いてこられたのは何故か!諸君!我が勤務医の主張が正しいからだ!

一握りのエリートが巨大な利権にまで膨れ上がった厚労省を支配して60余年、日本の隅々にまで奉仕する我々が自由を要求して、何度厚労省に踏みにじられたかを思い起こすがいい。勤務医の掲げる、医師一人一人の自由のための戦いを、神が見捨てる訳は無い。

私の盟友、諸君らが愛してくれた産科医は壊滅した、何故だ!?

戦いはやや落着いた。諸君らはこの戦いを対岸の火と見過ごしているのではないのか?しかし、それは重大な過ちである。厚労省は聖なる唯一の日本医療を汚して生き残ろうとしている。我々はその愚かしさを厚労省のエリート共に教えねばならんのだ。産科医は、諸君らの甘い考えを目覚めさせるために、逃散した!戦いはこれからである。

我々の団結力はますます向上しつつある。厚労省とてこのままではあるまい。諸君の恩師も先輩も、厚労省の無思慮な抵抗の前に辞職していったのだ。この悲しみも怒りも忘れてはならない!それを産科医は逃散を以って我々に示してくれたのだ!

我々は今、この怒りを結集し、厚労省に叩きつけて初めて真の勝利を得ることが出来る。この勝利こそ、無念のうちに逃散した医師全てへの最大の慰めとなる。

勤務医よ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ勤務医!勤務医は諸君等の力を欲しているのだ。

ジーク・勤務医!!

562 名前:卵の名無しさん 投稿日:2007/11/22(木) 16:53:07 ID:AsMpaHDo0
我が、忠勇なる勤務医たちよ。今や、厚労省幹部の半数が、我が逃散戦法によって想定外の大混乱に陥った。

この輝きこそ、我ら勤務医の正義の証しである。決定的打撃を受けた厚労省に、いかほどの戦力が残っていようと、それは、すでに形骸である。

あえて言おう、カスであると!

それら、軟弱の集団が新たな通達違反戦術を打破することはできないと、私は断言する。日本医療は、我ら善良な勤務医に管理運営されて、はじめて、永久に生き延びることができる。これ以上、机上の空論を続けては、日本医療そのものの存亡に関わるのだ。

厚労省の無能なる者どもに思い知らせ、明日の未来のために我ら勤務医は、立たねばならんのである!

ジーク・勤務医!

ジーク勤務医!ジーク勤務医!(以下略)


【溶けゆく日本人】快適の代償(2)“怪物”患者「治らない」と暴力
>医療従事者が患者やその家族から暴力や暴言を受けるケースが増えているという。医療機関のリスクマネジメントを担当する東京海上日動メディカルサービスの長野展久・医療本部長は、「治療がうまくいかないなど、患者にとって不本意な結果になったときに、その怒りを医療従事者にぶつける傾向がある」と指摘する。

>患者がこうした怒りを医療従事者にぶつける背景には、医療への過剰な期待がある。かつては「仕方がない」とあきらめるしかなかったことも、医療の進歩で、「どんな病気でも病院に行けば治る」「治らないのは医師の治療方針が間違っていたせいだ」と考えてしまう患者が多くなったという。

毎日新聞に代表されるマスゴミのみならず、国民の医療に対する過剰な期待も問題だと久坂部先生は前々から指摘されてきましたが、ようやく時代が追いついてきたのかな?

>教育現場で教師に理不尽な要求をつきつける親のことを“怪物”にたとえて「モンスター・ペアレント」と呼んでいるが、同じように医療現場でモラルに欠けた行動をとる患者を「モンスター・ペイシェント(患者)」と呼ぶようになっている

モンスター・ペアレントといい、モンスター・ペイシェントといい、教師や医師を守るためにこの手のレッテル貼りは必要かもしれないと思い出してきました。

>治療費の不払いも大きな問題となっている。日本病院会など4病院団体が平成16年にまとめた調査では、加盟する5570病院での未収金総額は年間推定373億円にのぼり、3年間の累積は853億円だった。とくに救急と産科で未収金が多いという。

ただでさえ、赤字病院ばかりということを忘れないでくださいね。

>厚生労働省は6月、「未収金問題に関する検討会」を立ち上げた。委員を務める永寿総合病院(東京都台東区)の崎原宏理事長は「日本は皆保険制度で、誰もが医療を受けられるが、それが逆に『治療は受けて当たり前』の意識につながり、診察に対して感謝の気持ちがなくなっている気がする。万が一このまま未収金が増えれば、皆保険制度が崩壊し、病院の閉鎖も増え、治療を受けられない人が増える可能性もある」と警鐘を鳴らしている。(平沢裕子)(MSN産経 11.14)

日本の医療がいかに恵まれているか、日本医師会は病院待合室で「シッコ」放映を義務付ければいいのにw


「飛び込み出産」が急増、経済苦や産科施設減が背景
>大阪市浪速区の愛染橋病院に今年1~7月、20週以上で未受診のまま陣痛や異常を訴えて駆け込んできたのは、19歳~40代の18人。「妻が無職で夫の欄が空欄」か「夫婦ともに無職」が11世帯、生活保護を5世帯が受けていた。同病院など府内2院が96~00年に受け入れた205人のうち、カルテから未受診の理由が分かる99人の半数が「経済的理由」をあげた。

ただ、このような貧困の問題(まさに給食費未納問題と同様に)も、モンスターのレッテルを貼らないようなまさに国の介入が求められている…というか金出せ!

>神奈川県産科婦人科医会が、周産期救急搬送システムの8つの基幹病院を調べたところ、03年に20件だった飛び込み出産が、07年1~4月には35件。通年では100件を超える見込みだ。 同県内では産科医不足などで昨年度、7病院が産科を閉じた。調査をまとめた横浜市立大学の平原史樹教授は「妊娠は病気ではないという安全神話が広まったところに、分娩施設の相次ぐ閉鎖が追い打ちをかけた。健診費が比較的安い公立病院から産科が撤退、収入が少ない若い貧困層が健診を敬遠している。


なんという悪循環。

>未受診出産は、医師不足でかつかつの現場をさらに疲弊させている。日本医科大多摩永山病院が、未受診妊婦41人を分析したところ、子が死亡したのは4例。周産期(妊娠22週~生後1週間)の死亡率は、通常の約15倍だった。11人が出産費用を支払っていなかった

でもって毎ゴミ新聞みたいな、蝿の手にかかるとこの前段部分が抜け落ちて、「たらいまわし」たと病院の責任ばかり問うんだからたいしたものです。

>調査した中井章人・同大教授は「医学的にハイリスクで、高次医療機関でしか対応できない。未収金のリスクもあり、病院側の負担が増す」。奈良で11病院に搬送受け入れを断られ死産▽千葉で16病院に断られ切迫流産▽大阪で19病院に断られ自宅出産。8月から相次ぎ発覚したケースはいずれも未受診妊婦だった。(朝日新聞 11.17)

未収になるリスクは高いわ、死産で訴訟のリスクは高いわで受け入れるメリットはないですね。せめて、そのような患者からの診療費は割増請求できるといった仕組みがないかぎり。


医師不足で臨床研修見直しへ
産婦人科と小児科の医師不足を解消するため、厚生労働省は、医師免許を取った医師に2年間義務づけている「臨床研修」の制度を見直す方針を固めました。現在は2年目に行っている産婦人科と小児科の研修を1年目から受けられるようにして、早い時期から親しんでもらい、志望する医師を増やすことにしています。(NHKニュース 11.19)

早い時期から親しんでもらいって理屈付けはギャグですか?単に臨床研修制度が現実と遊離していたということでしょうが。


分娩中止に思う
お産ができる病院が減った理由は、産婦人科医が「分娩を取り扱えない状況に追い込まれた」ことによる。医師が「過誤」でなく、「医療の不確実性の結果」と捉える事象が、結果が悪ければ「過誤の疑いがある」とされ、逮捕や訴訟が相次いだ

助産所の活用より、産婦人科医を増やすこと、今働いている医師が分娩を続けられ、止めた医師が再び取り扱える体制整備を考えることの方がよほど大切だろう。救急でも同じ現象が起こっている。追い込んでいるのは誰か、よくよく考えたい。(足立智和)(丹波新聞 11.19)

足立智和記者(*^ー゚)b グッジョブ!!何も付け加えることなどありません!!!まさに大手マスコミよりも、地方紙の方が地元に密着している分現実がよく見えているのでしょうね。

で、追い込んでいるのは誰かという点で↓↓↓

憂楽帳:医療事故
>時計の針は午後10時を指そうとしていた。診療を終えた薄暗い医院の待合室。看護師に通されて2時間後、男性医師がようやく姿を見せた。だが、手術用の大きなマスクとキャップで顔をすっぽり覆い隠している。取材に応じるのかと思ったら受付ごしに「家宅侵入だ」と叫ぶ。「待たせたのだから顔ぐらい見せてくださいよ」と呼びかけたが、奥に姿を消した。

>医師は結局、妊婦が死亡した医療事故をめぐる訴訟で看護師にうそを証言させ、有罪が確定した。手術で子どもが死亡した別の病院では担当医が書類を改ざんしたのに、教授が「医学部も卒業していない親に情報を与えても分かるはずがない」とふんぞり返った。密室性と専門性は大きな壁だった
 
>10年度をめどに厚生労働省の機関「医療事故調査委員会」(仮称)が発足し、再発防止に向け刑事責任より行政処分の模索を優先する。しかし、中心メンバーは同じ医療関係者。原因究明が少しでも身内に甘くなると、医療現場に与える影響も大きい。苦しむのはいつも被害者や遺族。そのことだけは忘れないでほしい。【小出禎樹】(毎日新聞 2007年11月19日)

なんという悪意に満ちた記事。毎ゴミ新聞が地域医療を崩壊させたということだけは忘れないでほしいです><


・小児科医はパンク寸前!?夜間緊急外来の”奇妙”な混雑(R25より)

06年以降に休止した診療科数(07年10月日本病院団体協議会調べ)

1位 産婦人科   71
2位 小児科    67
3位 精神科    34
4位 耳鼻咽喉科  33
5位 皮膚科    33


以下 久坂部羊氏「暴走する”患者さま”」

まずは【おまけ】

564 名前:卵の名無しさん 投稿日:2007/11/22(木) 16:56:23 ID:15b03xnv0
アメリカでの出産
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/reader/200607/2006070800020.htm
流産手術の費用 in アメリカ
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/reader/200406/2004061700121.htm

「出産費用は普通分娩で何事もなくて、130万円くらい用意すべきでしょう。ちなみに、流産して入院手術した知人は、実費だと1000万円ちかく(入院1ヶ月弱)でした。」
「ウルトラサウンド(エコー)1回200ドルです。もちろん、他の検査キットのお金も別。」
「保険がないと10分程度の診察(検査なし)でも平気で$200、$300と請求されますよ」
「NY在で出産費用は10年近く前で100万円以上かかりました。アメリカで三人出産しましたがそのたびに費用はあがっていましたので今はもっとすると思います。ちなみにこれは産婦人科の医者だけで、病院からの請求は別にきます。」
「NICUに入ると1泊500ドル以上掛かりますよ。後は妊娠中の定期検査は1回200―600ドル位掛かります」
「未熟児で一ヶ月ほど保育器に入った所医療費は2000万円を越えたそうです。保険のカバーは9割だったので自己負担だけで200万円以上です。」
「先月繋留流産をしてソウハ手術(B&C)を受けました。入院もせず日帰りでした。その後届いた請求書は合計で1万ドル、そのうち保険でカパーされなかった1000ドルが自分宛に請求されてます。」
「MRI撮るのも一枚10万円くらいかかる」
「保険がカバーされる(といっても、100%ではないでしょうけど)前の自己負担額が$5000、$7500なんて保険に入っている人も珍しくないそうです。ちなみに、$5000って「ひとりにつき」、です。」
「今は、私は不妊治療中ですが、日本でかかる費用の軽く3-4倍は越えています。」

日本も米国に年次改革要望書を突きつけられ、産科医療費もいずれはこれくらいになるだろう。愚民どもよ、医療の価値も分からず産婦人科医を叩いてウサ晴らししたツケがいずれくるだろう。せいぜい楽しみにしているんだな。

なんという呪詛⊂⌒~⊃。Д。)⊃


「医療界自身が生み出した医療崩壊加速の原動力 暴走する”患者さま”」久坂部羊/医師・作家(中央公論 2007.12号)

>最近、医療現場にもクレーマーが増えている。理不尽な苦情ばかりでなく、苦情・暴力も見過ごせない状況だ。クレーマー発生の背景には、医療者側にも大きな責任がある。それを踏まえた上で、まず現状を報告しよう。

久坂部先生の怖さは文字面からはあまり窺い知れません。以下の文章を読んで、クレーマーも医療者も悪いという無難な結論に至っていると読んだならそれは罠に嵌っている…そう私は思います。久坂部先生の結論とは、医療は聖職ではない、サービス業に過ぎなくなったと医者に目覚めを促す、各患者ではなくむしろ医者を救うものです。よりよい医療が単なる接遇技術に類するものというのは、ある種これまでの医療技術に重点を置く考えとは明確に一線を画しています。過大な期待や責任感に潰されようとしている医者(医療)を救うには、とりあえず患者はコミュニケーション技術でお茶を濁しておけばいいという冷めきった提案です。

…あとは、医療万能幻想を高めるか、極端なバッシングすることしかできないマスコミ死ねぐらいかな(笑)←私の好きな人はこんな人ばっかりや~。

(中略)

>暴言のあと、胸ぐらをつかまれる者、突き飛ばされる者があり、ある看護師は顔を殴られて骨折した。ちょっと聞き取りをしただけで、患者や家族の規則無視、理不尽な要求、暴言、暴力のエピソードは、枚挙にいとまがない。新聞報道によれば、昨年一年間に、医療者が患者側から暴力を受けたケースは430件、暴言や理不尽なクレームは990件にのぼるそうだ。教育現場で無茶な要求をする親を”モンスター親”と呼ぶらしいが、まさしく”モンスター患者”の襲来である。

省略しましたがエピソードと、この種の全体の数値への目配りを忘れません。

(中略)

>医療崩壊の原因に、医師不足が取り沙汰されているが、患者が急に増えたわけではない。患者一人に要する時間が増えたのだ。関連病院から大学病院に医師を引き揚げたある準教授はこう言った。

「最近は患者への説明や書類作りに、以前では考えられないほど時間を取られる。だから、人手を増やさなければやっていけない」

>妥当な範囲の説明は、もちろん必要だろう。しかし度を越した説明を求められても、対応しなければならないのが現状だ。大学病院にかぎらず、勤務医の激務化の一因は、クレーマー及びその予備軍への説明にあるのはまちがいない。医療崩壊は、医師がやる気を失ったことも原因のひとつだと指摘されている。懸命に治療し、精一杯患者のために尽くしても、感謝されない。それどころか、苦情を言われ、さらなる要求を突きつけられる。そういうクレーマーが医師のやる気をそぐ。

この辺りまでは単純なモンスター患者への批判に見えるんですがね。

(中略)

>医療者はクレーマーを批判するが、クレームの原因を考えれば、医療者の応対に問題がある場合も少なくない。患者を見下したような態度、あきれたようなため息、患者の心配を鼻先で笑うなどなど。これらは明らかに医療者に非がある。だから批判はブーメランになるのだが、医療者にも言い分がある。医療者がなぜそんな態度をとるのか。あまりに非常識な相談、厚かましい要求、見当違いの心配・・・・・。

>互いを非難しあっていては溝は深まるばかりだ。顧客相手の業界ではそういう応対はしない。常に顧客は優位で、尊重される。

(中略)

今や医療は聖域ではなく、サービス業としての認識が求められている。それなしにクレーマーを批判しても、元はといえば医療者の驕りがクレーマーを生んだという逆批判を生む結果にしかならない。

ここがポイントと思います。モンスター患者批判も、医療側の問題も指摘しているように見えて、要は医療無理スンナという帰結にいっています。

>クレーマーの増加は、患者と医療者の信頼関係が崩れたせいだろう。その理由はいくつか考えられるが、まず第一は医療ミスの多さである。1999年に横浜市立大学附属病院で起こった手術患者の取り違えは、医療の信頼を一気に低下させたといわれるが、今年の9月、似たようなミスが東京・築地の国立がんセンターで発生した。日本のがん治療の最高峰で、そんな初歩的なミスが繰り返されるとはあきれたが、調べると二年前にも愛知県がんセンターで同じミスが起こっていた。

さらには相次ぐ医療界の不祥事。今年の後半だけでも、妊婦のたらい回し、病院長の収賄事件、覚醒剤使用容疑、病院職員の架空入院による水増し請求など、悪いニュースは途切れる暇がない。これでは信頼しろという方が無理である。

この辺りは話半分に受け止めるべきです。その著書で悪いニュースばかり報道するマスコミ批判を展開された久坂部先生の見立てとして、既に「医療崩壊」を治療するに、「医療」を単に擁護、マスコミ批判を展開する段階は過ぎた、手遅れとなったということでしょう。

>その一方で、医療に対する期待と幻想は日々高まるばかりだ。これだけ医学が進歩したのだから、手術も検査も出産も安全で当たり前という認識。だから結果が悪いと、すぐ医療ミスが疑われる。

>医療費の自己負担が増えたことも、患者の意識を変えた一因であろう。金を払っているのだから、客扱いしろという感覚。負担が増えたのにサービスが同じでは、納得がいかない患者側の気持ちはわかる。しかし、医療側は収入が増えたわけではないので、新たなサービスを求められても困る。国はそのあたりの”機微”をもう少し説明してほしい

>ほかにもいろいろあるが、結局のところ、いちばんの理由は、医療に対する認識のギャップだろう。一般の人は医療の情報を、新聞やテレビから漠然と受け取っている。マスコミ情報はきれいごとが多いので、つい医療は安全で当たり前だと思ってしまう。一方、医療者は、医療が決して安全ではなく、偶然に左右されるものだと知っている。ここに「医師なら当然」という感覚に温度差が生じる。「当然」の範囲がずれているのだから、互いに信頼などできるわけがない

マスコミ、国、そして国民に認識を変えてもらって、今の医療を守るより、それらの認識を逆手にとって医療水準を維持できる段階まで切り下げてしまえという悪魔のささやきが私には聞こえます(笑)

(中略)

クレーマーは増えているが、医療訴訟の件数は必ずしも増えていない。最高裁のデータによると、2004年の1110件をピークに、05年は999件、06年は912件と減少している。弁護士が防波堤になってくれているからだろう。医療界のクレーマーは弁護士にも多大な迷惑をかけている。医療訴訟が専門の弁護士に聞くと、依頼人の半分以上がクレーマーで、訴訟を断念させるのに苦労するという。

モンスター患者が単に餌でしかないことは、このような数字を押さえている辺りからもうかがえます。

(中略)

>信じてもらえないかもしれないが、医療ミスがあった場合、医師は素直に謝罪し、示談にした方が負担が少なくてすむ。被害者にも納得してもらいやすいし、医師賠償保険があるから身銭を切ることもない。隠蔽やごまかしが、いかに労力を要し、またリスクが高いかもよく知られている。だから医師は過失があったと思うときには、隠したり争ったりしないことのほうが多い。

争うのは、自分に過失がないと思っているときだ。たとえ患者が亡くなっても、医療とはそういうものという意識があるから、遺憾の意は示すが謝罪はしない。すると、遺族は納得せず、往々にして医療訴訟となる。

>裁判官が、医療者から見て妥当な判決を出してくれれば、医療訴訟は恐るるに足りないはずだ。しかし、現実はそうはいかない。裁判は医学的に正しい判決を下す場所ではなく、裁判官が正しいと思う判断をくだすところだからだ。だから、不幸な結果になったとき、自分に非がなくても、手っ取り早く謝罪して、示談に応じるケースも増えている。

ですから、この文章はまさに身を削っている聖職意識の高い医者に向けて「絶望」と「諦観」を突きつけるものとなっていると読むのがいいのではないかと。

(中略)

>一度、痛い目にあった医師は、以後、危険な治療をしなくなる。もちろん訴訟の多い科からは逃げ出すし、リスクのある検査や手術は他の病院にまわす。その警戒心は当人だけでなく、周囲の医師にも伝染する。そんな医師が増えれば、日本の医療はどうなるのか。医師ともあろうものが、何と情けないと嘆く向きもあるだろう。しかし、医師に立派な人格を求めたり、崇高な精神を期待するのは、率直に言ってないものねだりだ

医師批判でも、患者批判でもない第三の道の模索。それが「医療」の転換!

(中略)

>訴訟に話をもどせば、今、医師のあいだで恐れられているのは裁判員制度だ。現段階では重大な刑事裁判にかぎられているが、これがもし医療訴訟に適用されたらどうなるか。法廷で争うのは、片や身内が死んで悲しんでいる原告、片や専門用語で弁解に終始する被告。勝敗は明らかだ

何というダメ押し。モンスター患者を違う意味でダシにしています。

(中略)

>医療界がクレーマーを生み出していることは先にも書いた。医療者の応対の悪さや、多すぎる医療ミスと不祥事。それ以外にもうひとつ大きな要因がある。医療界が必然的に好むきれいごとだ。たとえば「患者本位の医療」。(中略)患者の希望や意見は尊重すべきだが、治療はあくまで医療本位でなければならない

(中略)

>もしほんとうに「患者本位」と言うなら、患者のわがままもすべて聞き入れなければならないはずだ。今の「患者本位」は、医療者が許せる範囲でという、透明な但し書きのついたものだ。そんなご都合主義的な「患者本位」を宣伝するから、患者が混乱し、勘違いをする

>同じくクレーマーを生む医療界のきれいごとに、「患者さまの権利」がある。もちろん、患者には権利がある。しかし、権利は常に義務と抱き合わせのはずだ。

(中略)

>病院で「患者さまの権利」を大書しているところは多いが、併せて「患者さまの義務」を掲げているところは少ない。「患者さまの権利」だけを張り出している病院は、自らクレーマーの種をまいていることを知るべきである。医療界がクレーマーを生み出し、そのクレーマーが医療崩壊を加速させる。この悪循環をどこで断ち切るか

医療にも問題がある。そこまで頑張るな!という結論ってなんという(((( ;゚Д゚)))ガクブル

>医療者はまず、患者との信頼関係を取り戻す努力が必要だろう。誠実な医療を行うだけでは足りない。それが誠実な医療であることを、うまく患者に伝え、医療の現実を世間にアピールしなければならない。なぜなら、テレビや新聞が「医療は安全」「医療は患者本位」「医学はすばらしく進歩している」など誤解を生む情報を、ものすごい勢いで広めているからだ

コミュニケーション能力(笑)

(中略)

患者側は、マスコミのきれいごと情報に惑わされず、医療に対する幻想を捨て、過大な期待を下げなければならない

「常識的に考えて」医療は危険なものなのに、その他サービスと同じ接遇まで求められるようになった今、まさに一般サービス業の基準に合わせて医者も患者も期待値を下げるべきだと、両者がともに望んでいないであろう結論に誘います。

(中略)

>今回、医療界のクレーマー被害を取材していて、おもしろいことに気づいた。クレーマーは個人医院より病院に圧倒的に多いのだ。開業医は患者を顧客として捉えるので、勤務医より患者の接遇に注意している。勤務医は組織をバックにしているので、つい強気に出てしまう。

>さらに患者は個人医院にはさほど期待をしていないが、病院への期待値は高いということもあるだろう。これはとりもなおさず、医療者の接遇の悪さと、患者の期待値の高さがクレーマーを生むという証左にほかならない。だから医療者は患者接遇力とアップしなければならないし、患者は期待値をダウンさせる必要がある。

(中略)

両者が歩み寄らなければ、よい医療は実現できない。医療とは、結局は人人との営為なのだから

何という無難な帰結に見せてしまう文章。この最後の一文だけ読ませて反対できる人がどこにいるというのか、まさに孔明の罠。


レジデント初期研修用資料さま「将器というもの」
>日本中の救急医が奮起すれば、まだまだ救急外来は戦えるし、全国の産科医が、明日からいっせいに「300人体制」で頑張れば、それだけで僻地の産科問題は解決する。たぶん。

…のようにまだ「たぶん」解決できる可能性はあるのでしょう。それにはマスコミが医療バッシングをやめ、産科医・小児科医こそ聖職というプロジェクトX的礼賛番組を量産し、国がきちんと金をだし、医者を訴訟から守る枠組みをつくれれば(笑)。最後の「たぶん」に篭められた棒読み感に笑わせていただけます。

>「将器」というものを医師に求めるとすれば、たぶんこの一点に尽きるのだろうし、福島県で「断らない」という決定を下した先生方に将器が備わっているならば、きっと「断らない」ルールは上手くいく。みんな頑張るはずだから。

>失敗したなら、それは要するに、そういうことなんだと思う。

そして、久坂部先生の見立てを読んだ今、この文章がどう読めるか…皮肉以外の何者にも読めなくなったなら幸いであります♪