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【 テーマ「かこ」について 】
「かこ」では、私が2008年9月に経験した交通事故について綴っています。
私自身がこの貴重な経験を忘れてしまいたくないから。
毎日毎日起こり続ける交通事故、そのひとつひとつ痛み・重みを
少しでも多くの人に知ってもらいたいから。
そしてこの経験を踏まえたうえで、
毎日を楽しんでいる人がいるんだということを知ってもらいたいから。
主観とエゴのかたまりですが、お付き合いいただけたら幸いです。
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やっとの思いでデパートにたどり着いた私たちは、
フードコートの一番入り口側の席に座った。
ヤスが食べたのは、新潟の有名なB級グルメ・みかづきのイタリアン。
もちろん北海道に住んでいる姉が食べたことはない。
「これめっちゃうまいんだよ!」と言うヤスと
「いやぁ、全然食べなくていいと思う」と言う私。
姉はそんな私たちの会話に笑いながら、
イタリアンをひとくち食べて、
「うん。まぁ。もう一回食べたいとは思わないかな。」
と言って笑った。
私はというとやっぱりサーティーワンで
アイス付きのクレープを食べていた。
ヤスはさらにたこ焼きも食べていた気がする。
病院食はとりたててマズイわけではなかったけれど、
やっぱり内容や味付けが似通ってしまう。
何より、
自分の食べたいものを「自分で選ぶ」ということが楽しかった。
おなかいっぱいごはんを食べて
このまま帰ろうか、少し店内を回ろうかという話になったとき、ヤスは
「ごめんね。
俺はそこまで歩けないから、お姉ちゃんと行ってきて。」
と断った。
そりゃあそうだ。
ここまで来るのだって必死だったんだから。
ちゃんと気遣えなかった自分を恥じ、
この日はごはんだけ食べて帰ることにした。
帰り道には少し松葉づえに慣れたのか、
フードコートで食べたごはんが満足だったのか、
ヤスに少し余裕が見える。
30分の道のりを一度も休憩せずに、病院に着いた。
それと同時に、姉とのお別れの時間だ。
いつも細かいところまで気遣ってくれる姉。
この数日間でも、入院前と変わらずいろんな話をした。
姉が帰ってしまうのは寂しいけれど、
とにかく今日は楽しすぎて、涙なんか出てこない。
笑顔で「またね」と言って、
姉は札幌への帰路へついた。
2人だけになった病室で、ヤスがこぼした。
「良かった。
次、いつ外出できるかわかんないから。
絶対、今日お姉ちゃんがいるうちに行きたかったんだ。
行けて良かった。
楽しかったね。」
1人の付き添いでも
2人で一緒に外出できるように。
昨日のリハビリからヤスが松葉杖を懸命に練習していたわけは、
これだったのだ。
私はそんな彼の思惑に気付きもしなかった。
ありがとう。
ありがとう。
午後のリハビリまでの間少し休むね、と言って
ヤスは自分の病室に戻っていった。