邦楽鑑賞会-長唄の会- | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。



昨日は、毎年のお楽しみである長唄の会に行って来ました。

この

演奏会のチケットの入手って、けっこう大変。

私はこの会のチケットをいかに有利に取りたいがために“あぜくら会”(国立劇場の友の会)に入会している。何せ一般チケット販売開始より一日早くチケット入手ができる。

が・・・

あぜくら会でも、超大変。チケット販売開始と共に申込みが殺到するらしい。よい席はあっという間に売れてしまう。

去年、うっかりチケット販売日を忘れていた。でも、夕方に思い出しネット申し込み。

まあまあのお席でしたが・・・。が、良い場所はほとんど売り切れていた。

という事は一般販売は、本当に「席だけ確保できて良かった♪」なんでしょうね。

しかし、プログラムを観れば納得。業界で人気のある演奏家ばかりがご出演。華々しいメンバーですものね。


さて、吃驚した事が一つありました。ネット邦楽つながりの知人。京都の方でこの会にいらっしゃる事は知っていた。が・・・広い会場なので「お目に掛れたらよいなぁ。でも人が一杯だから無理かもなぁ」と思っていたのですよ。それが何とお席がお隣通しだったのですよ!すごい偶然でした。ルンルン♪

お話したい事いっぱいあったのですが、何か吃驚先行でした。すみません。


そうそう、京都といえば祇園の舞妓さんが御贔屓さんと共に会場に。なぜ祇園と分かったか?!同伴していたお茶屋のおかみさん。よく舞妓さんもののレポート番組で誕生するおかみさんだったのですよ。

素晴らしいと思ったのが一点ありました。前の方の良い席に御贔屓さんと舞妓さんを並びの席。おかみさんは、ちょっと離れた席で存在を隠すように座っていました。でも「しっかり目を光らせていますからね」というような位置でもありましたね。その位置取りがとっても素晴らしいと思いました。


プログラムの方です。出演者は写真をご参考になさって下さい。


『二つ巴』

四世杵屋佐吉の作曲したものです。現在の杵屋佐吉は七代目。五代目のご次男であるので、この方にとっておじい様の作品である。

エネルギッシュな伴奏をされる佐吉氏。そして、今日は杵屋直吉氏の唄。豪華すぎるメンバーで楽しみにしていました。

前半は京都一力茶屋の場面。華やかな廓の場面と夜の静けさが上手く調和されている風景をイメージする演奏でした。

師匠の太鼓。本当に勉強になりました。そうそう、お稽古の時の言葉が蘇りました。

こういう曲は本当に表現力が求められる。太鼓は打つ姿は大きいのに、そこからかもしだされる音は柔らかくデリケート。これが一番難しいです。本当に練習、練習ですね。

後半は吉良邸の討ち入り場面。前半とは打って変わってパワフル。

いやいや、この曲の構成は本当に良くできていると思います。

演奏を聴きながら、

『忠臣蔵』の名場面が頭の中で生々しく画像が流れて行きます。


『娘七種』

研精会系女流の方々の演奏でした。

四世吉住小三郎(のちの吉住慈恭)と三世杵屋六四郎(のちの稀音家淨観)が、歌舞伎のバックミュージックであった長唄を、「長唄」という音楽のジャンルとして確立。鑑賞用の長唄を確立。そして長唄演奏会を鑑賞する事が明治末期から大正時代に流行るようになり、家庭音楽として受け入られるような契機をつくったのが研精会である。

鑑賞用である長唄。長唄本来を楽しむ演奏を目指している為かやや地味なところがある。

伴奏の趣旨が変わればお囃子も変わる。ですね。

ぜんぜん違う手組が付いていました。

幕開き。本来は次第なんですが・・・あれは何と言う手組だろうか。勉強不足で分からない。

本来入る序の舞が抜かれている。小鼓唄のあとは出端の越なのですが、太鼓地になっていた。

研精会系の演奏会はよく耳にしますが、バリバリの研精会の演奏会はあまり耳にしないので、とっても勉強になりました。


『三曲糸の調』

六三郎氏の巧みなテクニックに、とにかく魅了されっぱなしであった。

けっこう撥の振り方が大きい方なのですが、そこからかもしだされる音は芯はあるけれど繊細でデリケートな感じ。三味線という楽器が持っている表現力をすべて網羅していて、それを巧みに引き出せる魔法使いという感じです。

そもそも、この曲は

平家滅亡後に源氏方に指名手配されている景清の行方を捜すために、景清の馴染の遊女阿古屋を詮議に掛けるのですよね。が、阿古屋は「私は知りません」と言うのですよね。

本当に知らないのか、知っているのに「知らない」と言っているのか・・・

詮議を担当した秩父庄司重忠は、阿古屋に琴・三味線・胡弓を演奏させる。隠し事をしているのなら音に乱れが生じるはず!こういう粋な詮議方法ほ思いつくなんて無粋な人には難しいですね。重忠という方は相当の耳の持ち主だったのでしょうね。

そして、阿古屋の演奏には乱れがなく美しい音色であった事から、嘘はついていないのだろうと無罪放免になるお話。

ですから、阿古屋になりきって、絶対に乱れある演奏ではいけないのですよ。

六三郎氏の今日の演奏。詮議にあたった重忠も納得の演奏だったと思います。

ところで、この阿古屋。のちのち景清を裏切る行為をするのですね。そして、なんと女の癖に自分の男を裏切るのは許せない事だと頼朝に謂れ、簀巻きにされて川にドブンと捨てられてしまう。そんな悲惨な最期を迎えるのをつい最近知ってショックでした。


『読み上げ入り勧進帳』

人間国宝勢ぞろいの演奏でした。いやいや、宮田氏はけっこうご高齢になられているはずなのですが、あの並々ならぬパワーはすごいですね。

去年、人間国宝になられた今藤政太郎氏。前半は元気ないなぁという感じでしたが、後半は素晴らしかったです。

喜三久氏の小鼓。あの私の心をぐっとつかむパワーはいったいどこに秘められているのだろうか。

小鼓の出せる表現力を自在に操っていらっしゃる。

喜三久氏の勧進帳は本当に大好き。


新年から素敵な演奏をライブで聴けて幸せでした。

また、さあ今年もいっぱい演奏会に行きたいなぁ。