昨日は、杵屋寒玉氏の演奏会が紀尾井ホールにて開催された。
杵屋寒玉氏、ご子息の杵屋勘五郎氏、勘五郎氏の三人のご子息の杵屋廣吉氏・直光氏・正則氏の演奏会である。
昨日の演奏会では、勘五郎氏にとって従妹である杵屋直吉氏がご出演だった。
考えてみたら、杵屋宗家のご一家で超すごい舞台面が完成する。
<唄>杵屋喜三郎・杵屋吉之丞・杵屋直吉・杵屋正則
<三味線>杵屋寒玉・杵屋勘五郎・杵屋廣吉・杵屋直光
これに近いメンバーの舞台面は観たことがあるがこの舞台面は観たことがないなぁ。
三曲だけの贅沢な演奏会。
長唄の演奏会は三曲から四曲がちょうどよいように思う。五曲を超えると疲れてしまう。それ以上だとお浚い会という感じがしてしまう。
『楠公』
<唄> 杵屋正則・東音 味見純・杵屋三美郎
<三味線> 杵屋廣吉・杵屋直光・松永忠一郎
<小鼓> 藤舎呂船・藤舎清之
<大皮> 藤舎呂秀
<太鼓> 藤舎呂雪
<笛> 中川義男
幕開きは若き御兄弟の演奏だった。
廣吉氏を初めて見たのは何年も前の温知会であった。まだデビュー間もない感じ。暗譜しきれていなかったのか手が時々泳いでいた。プロの演奏家って大変だと彼を見て思った。とにかくプロは場数を熟して経験を積む事が大切。課題が次から次で初心の頃は仕込が間に合わないという感じではないのだろうか。
不安一杯の表情で恐る恐る三味線を演奏していたあの若者が、今堂々と『楠公』のタテ三味線を務めている。ちょっと感動でした。
もちろん、まだまだ若い芸だなぁという感じ。でも、「ヨッ」という掛け声がお父様いやいや御爺様にそっくり。きちっと子供たちに伝承されているんだなぁと思いました。
『秋の色種』
<唄> 杵屋直吉・東音 味見純・杵屋三美郎
<三味線> 杵屋勘五郎・杵屋彌四郎・(上)松永忠一郎
やはり直吉氏の唄は魅力的である。さすが美声軍団の頂点にいらっしゃるお方だ。
勘五郎氏の三味線は力強いく、江戸前に感じる。
繊細で美しい音締の研精会系の演奏も素敵だが、こういった江戸前の音締で聴く『秋の色種』も素敵だ。
歌舞伎の伴奏として誕生した長唄。本来はこの江戸前の音締こそが長唄の三味線なのかも知れない。
明治以降、鑑賞する長唄の演奏会の誕生によって、だんだん繊細で透明感を追及されている方が多いように思うが、こういった江戸前の三味線も後世ずっと受け継がれて言って欲しいものです。
『船弁慶』
<唄> 東音 皆川健・杵屋直吉・和歌山富朗・杵屋正則・杵屋三美郎
<三味線> 杵屋寒玉・杵屋勘五郎・杵屋廣吉・杵屋直光・(上)杵屋彌四郎
<小鼓> 藤舎呂船・藤舎清之
<大皮> 藤舎呂秀
<太鼓> 藤舎呂雪
<笛> 中川義男
力強い演奏であった。
以前より、男っぽく江戸前な寒玉氏の三味線のファンである。寒玉氏の三味線を聴いているとウジウジした気持ちも吹っ飛んでさっぱりする。
が、何気に演奏者の呼吸がうまくかみ合っていなかったような気がする。そこがちょっと残念だった。
しかし、船弁慶の後半の太鼓はカッコいい。いつかこんな太鼓を打ってみたいと思う。
・・・でも、体力的に難しいかもだなぁ。
充実した演奏会に行けて本当に幸せ♪
これからも「親子三代の会」を続けて欲しいものです。