邦楽鑑賞会 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

毎年一月、国立劇場主催で行われている演奏会です。
毎年、豪華な演奏家さんの芸を堪能できる、一年に一度のお楽しみ演奏会です。

『十二段』
唄    日吉小三八 日吉小間蔵 日吉小八郎
三味線 稀音家祐介 杵屋弥四郎 杵屋弥宏次
琴    萩岡松韻

この曲。お初の出し物で新曲かと勘違いしていましたが、杵屋六翁(四世杵屋六三郎)の作曲したものなんですね。天保十一年・・・ゲッ・・・古い!
義経と浄瑠璃姫のラブロマンスがベースの物語♡
そうそう、浄瑠璃姫は静御前のモデルとか・・・はたまた、道成寺の清姫のモデルといわれている方です。義経に失恋した彼女は川に身を投じ非業の死を遂げるのですよ。
愛知県方面の方で、私の父母は愛知県岡崎市出身なのですが、その浄瑠璃姫のお墓の近くにお互いの在所があります。
子どもの頃、父母の実家に夏休みなど良く遊びに行っていたのですが、この浄瑠璃姫のお墓近辺で良く従兄弟たちと遊んでいました。あっ・・・話がずれた。

とっても良い曲なのですが、長くて単調なんですよ。今日は夜勤明け。ネムネムでした。
それが故に、旋律が綺麗であれば綺麗なほど音色から生まれた天女たちに居心地の良い別世界へ連れて行かれる事、数度もありました。
お琴の萩岡松韻さんのお琴は本当に素晴らしいです。
お琴の名人は女流の方が主ではありませんか。しかし、男性の松韻氏・・・あの手からあんな素晴らしい天女が奏でるような琴の音が生まれるなんて・・・素晴らしい。感動でした。
十何年前に比べて、貫禄が・・・。しかし、甘く気品のあるお顔は変わらず。
松韻氏って本当に素敵です。

『犬神』
唄    岡安晃三郎 西垣和彦 稀音家康三朗 杵屋利次郎
三味線 杵屋六三郎 杵屋六治郎 杵屋弥太郎 杵屋六七
笛    鳳声晴之
小鼓   堅田新十郎 梅屋雅一
大皮   仙波元章
太鼓   堅田喜三久 

本当は清元との掛け合いの曲なんですって。知らなかった・・・(汗)
玉をめぐって、犬神と狐の争いというお話しがベースとなっているそうです。
ああ、だから来序がいっぱい出てくるんですね。
この来序の打ち方。人間国宝の堅田喜三久氏の芸を見て大変勉強になりました。
同じ来序でも、『小鍛冶』や『鶴亀』とは全然雰囲気が違う。もちろん、この二曲の来序も違うわけですが・・・曲想に応じての演奏。凄いなぁと思いました。
さすが、ファンタジー的物語長唄。
ワクワクドキドキといった感じの曲でした。


『正札附根元草摺』
唄    芳村伊十衛 杵屋佐臣 杵屋秀子 芳村伊四絽
三味線 今藤長十郎 日吉小暎 今藤長由利 今藤苗佳
笛    藤舎推峰
小鼓   望月太喜雄 堅田喜三郎
大皮   堅田新十郎
太鼓   堅田喜三久

曽我ものを題材とした長唄。『勢い』と本当に良く似ている。まあ・・・お話しは一緒ですから仕方がないか。
私は、こういった豪快な曲が大好きです。
本日の演奏は、女流演奏家の方々でした。当初、こんな男っぽい荒事の曲を・・・と思いましたが、いやいや、さすが歯切れ良く力強い三味線をいつも聴かせて下さる今藤長十郎氏です。
そうそう、本日お顔をじっくり拝見させていただいて、先代の今藤長十郎氏に本当に良く似ていらっしゃるなぁと思いました。
お父様は大変な名人で私は大ファンなのですが・・・DNAですね。
女性とは思えない三味線さばき。とっても気分が良かったです。
そうそう、最後の大ヲロシ。この曲はそうですよね。
文章でなんて表現好けばよいのか。勇ましい五郎の勇士、大見得を切る姿(本当はどんな振りか知らないのですが)が目に浮かぶような。
フムフム、このノリなんだよなぁ♪かっこいい♪
・・・すみません、一人で感動しちゃいました。

そうそう、あととても勉強になったのは、ボリュームと芸の大きさは比例しないという事です。
女流の演奏家さんの場合、男性に比べてどうしてもパワーが不足します。これは性差なので仕方がありません。
打楽器というのはとってもインパクトが強いので、曲想が勇敢だからとパワー全開でお囃子が演奏してしまうと、上段(長唄や三味線)の演奏を壊してしまいます。
という事で、今日も、お囃子の先生方はボリュームを落としているなぁと感じたのですが、しかし、芸はパワー全開なのですよね。
パワー全開に見せてボリュームを落とす。。。難しいな。
お囃子。音楽の一分であり聴かせるものでもありますが、また見せる芸なんだなぁと思いました。

『安達ヶ原』
唄    宮田哲男 福田克也 赤木直明 村治利光 渡邊雅宏
三味線 杵屋五三郎 杵屋五三吉 杵屋五三助 杵屋五丈 村尾慎三
笛    中川善雄
小鼓   藤舎呂船 藤舎清之
大皮   中井一夫
太鼓   藤舎呂雪 

安達が原の山姥のお話ですね。スリルとサスペンス♪
人間国宝の杵屋五三郎先生。御年九十!いやいや、すごい存在感です。
一音一音に心が釘付けです。
しかし、タテ三味線が一つの演奏グループのリーダーな訳ですが、女房役のワキ三味線。
タテとワキは深い深い絆で結ばれているんだなぁと思いました。
医学的に言うバイタルサイン(呼吸・体温・血圧・脈拍など)が、一心同体という感じですね。
前シテの間、太鼓は休憩。普段、太鼓は待ち時間も演奏する位置に太鼓はセッティングされているんですが、こういった曲は太鼓はワキに置かれ太鼓方の方は静かに後ジテまで待っていらっしゃいます。
これって、「私は存在しませんよ」という意味らしい。
後ジテ、早笛からのスタートですが、早笛以降のお囃子。本当にカッコいい。
パワー全開!
胸の鼓動がヒートアップするのが分かります。
こんなの打ってみたいな。


本当に、病み上がり+夜勤明けのネムネムで絶好調ではなかったのですが、本当に行って良かったです。
演奏会は宝の宝庫ですね。
まだまだ、腕の悪い泥棒さんなのですが・・・。罪にならない泥棒技術を磨かないといけないですね。
また、来年も楽しみ・・・、あっまだ一年が始まったばかり。来年の事など鬼が笑いますね。