
昨日は渋谷セルリアンタワーの能楽堂に行って来ました。
邦楽の演奏会なのに横文字の題名。。。近代なんだなぁと思わず(*^。^*)
ゴールドフィンガーという女流邦楽演奏家の方々がグループを結成。
メンバーは。。。
芳村伊四絽氏・今藤美佐藤氏・今藤美佐緒氏・今藤珠美氏・望月晴美氏・藤舎千穂氏といったゴールドフィンガーの持ち主の面々。そして、友情出演に梅屋巴氏。
で、特別ゲストに藤舎名生氏が出演されていました。ご存知ない方もいらっしゃると思いますが、・・・ゲストの名生氏はちなみに男性です。昨日の演奏会では「紅一点」ではなくて「白一点」(でいいのかな?!)という感じ。
昨日はとっても素敵な演奏ばかりで、もう感動的でした。
さて、レポを。。。
長唄「五条橋」(敬称略)
唄 芳村伊四絽・今藤美佐藤
三味線 今藤美佐緒・今藤珠美
美佐緒氏は女流三味線演奏者では超名演奏家で有名です。
京都の宮川町の花街出身の方なんですけれど、超すごい方です。先代の今藤長十郎師というビッグな方の秘蔵っ子だったそうで、うーん頷けます。
先代の長十郎師を生で観たこともありますし、テレビでも何回も観ていて大好きなプレーヤーだったのですが、その亡き長十郎氏を彷彿させる演奏を昨日は聴かせて頂きました。
「五条橋」は大薩摩ものですから、三味線の聴かせ処が一杯あります。なかなか、女性のプレーヤーはエネルギー不足で男性のプレーヤーと比べちゃうと、どんなに素晴らしい技術をお持ちの方も色褪せてしまうのですが、この美佐緒氏の大薩摩は違っていました。とってもエネルギッシュで手も良く回る!女性演奏家の三味線は奏でるタイプが多いけれど、この方は糸だけじゃなくて皮の音もしっかり聴かせてくれるそんな感じでした。
好き嫌いがあるので、バシバシ派はあまり好きではないという方もいらっしゃいますが、私は杵勝の勝国氏や杵屋巳太郎氏のようなバシバシ派の演奏って好きなんですよね。
さて、昨日の「幕三重」という三味線の観せ処があるのですが、そこが実に素晴らしかったです。
歌舞伎座なんかだと、普通演奏中にその見事なテクニックに拍手喝采の場面。昨日も、思わず拍手したくなっちゃったのですが。。。昨日のお客様はそういった雰囲気ではなくて、シーンと彼女の演奏を聞き入っていて「演奏中に拍手なんかしないで」みたいな感じだったので、グッと拍手したい熱い気持ちを抑えました。
でも、本当は拍手したほうが演奏家は燃えちゃうと思うのですが。。。私だったら「なんで拍手してくれないの?!」と思っちゃうけどなぁ^m^
さて、とても素晴らしい演奏だったのですが、一つ気になったのは、さわりをやたらに調整している美佐緒さん。
三味線には、「東さわり」というさわりの調整のできるタイプのものがあります。
乳袋の裏あたりにネジが付いていて調整するんですけれど、そこばかりいじっていたのがとても気になりました。
音へのこだわりなんでしょうけれど。。。
笛一管「鶴」
笛の名手、藤舎名生氏の独演。演奏者自身の作曲です。
雪の北の大地に舞う鶴が目に浮かぶような演奏でした。
笛についてはあまり詳しくないのですが、昨日改めて吃驚した発見は、ベースに一つの直線のような音と、そこに絡むメロディーを奏でる、そんな複雑な事を表現できる楽器なんですね。
篠笛は柔らかなフルートのような音を出す楽器。能管は鋭いさすような音を出す楽器という観念がありましたけれど、昨日は能管もちゃんとメロディーを表現できる楽器という事を知りました。
個人的好みですが、篠笛よりも能管の音が大好きなんですけれど、昨日は能管の新たな(私にとって)一面に出会う事が出来て貴重な経験ができました。
長唄「賤機帯」(敬称略)
唄 今藤美佐藤・芳村伊四絽
三味線 今藤珠美・今藤美佐緒(上調子)
小鼓 藤舎千穂
大皮 望月晴美
太鼓 梅屋巴
笛 藤舎名生
最近、この曲があちらこちらで演奏されていて、今年の流行なのかしら?
今日は二挺二枚でひっそりとした舞台面でしたけれど、それとは逆に、最近聴いた「賤機帯」の中では一番私好みの演奏でした。なんか、最近やや滅多「賤機帯」の演奏が多くて、今ひとつと思っていたんです。けして、狂女がいなくなった息子を追い求めというストーリーで華やかでも楽しくもない曲なんですけれど、背景が華々しければ華々しいほど、その狂女の哀れさが強調されると思うのですが。。。どうも、その華々しさが期待には足りない感じだったのです。
けれど、今日の演奏はその華々しさがあって感動しました。
全然照明効果とか出せない能舞台での演奏会だったのですが、花掬いの合い方の所なんかパッと照明効果で明るくなったようなそんな錯覚を起こさせるほどでした。
最近は演奏会でも、踊りの会などのように照明や大道具で視覚的効果を用いて演奏する事が多くなっていますけれど、観客としては視覚の感動の押し付けという感じで私はあまり好きではない演出です。
やっぱり音楽って、視覚的効果はなくてもその演奏を聴いて、あたかもその映像が見える。。。そういった聴き側の作業が楽しいのですが。
久々にこのイメージ作りを楽しめるそんな演奏に今日は出会う事ができました。
はあ!ネットの友人でもあるyoshie様に「美佐緒さんの三味線は本当に素晴らしいから!」とお誘いを受けて伺った演奏会なのですが、本当に感動。
お誘い下さったyoshie様に心から感謝申し上げます。
有意義な午後の一時を過ごす事ができました。