拍手 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

演奏会に行って、
演奏の前後で拍手をするというのは、私にとっては当然の行動である。
「待ってました」
「良かった」
という気持ちで拍手するケースよりも、そういった段取りだからという感じで拍手する機会の方が多いと思う。
よく「追廻」とか「三重」とかで、そのテクニックの素晴らしさに観客が拍手する事がありますね。でも、そんなに素晴らしくなくてもこの部分では拍手を送らなければならないという感じに拍手する場合に何回か遭遇した事がある。まあ、そういう時は私は人が悪いので釣られて拍手する事はないのですが、ついつい釣られて拍手している人いますね^^A

昭和五十年代の邦楽愛好家向けの雑誌を読んでいたら、
『聴衆の拍手の問題』という文が載っていた。
番組の前後、登場人物の登場等で拍手は当然。いやいや、それが当然じゃないらしい。
どうも番組の前後とか登場人物の出とかに必ず拍手をするという文化は日本にはないらしい。吉川英史氏という方の文なのだが、彼曰く・・・
「洋楽の演奏会の影響や外国人客の影響であろう」と言っている。
へえ・・・そうなんだ。
「感動・感激」
「ご苦労様という労い」
「義理」
など同じ拍手にもいろいろあるらしい。確かにそうだなぁ。
そうそう、面白い事も書いてあった。文楽などでは、奏者にとって拍手が休憩タイムになるとか。盛り上がりの部分で拍手。一時間以上も熱演を求められる演目では、その拍手の間が休憩タイムに。拍手もいろいろなんですね。
当時の各邦楽界の演奏家さん方に拍手についてのアンケートをとって、その回答が掲載されていた。
ほとんどの人が「拍手があったほうが張り合いが出る」と答えていらっしゃる。また、拘らないという人もいる。
「当然」と答えた人がいるんですが、私的には、どんな名人でもそんな人の演奏は聴きたくないと思った。
また、演奏中の拍手について、多くの方々は「演奏中の拍手は好ましくない」と答えていらっしゃる。はあ、、、やっぱりねえ~(汗)
でもね、ついつい感動して拍手しちゃうくらい凄い演奏ってありますよね。その辺は許してね♪

長唄の名人西垣勇蔵氏のコメントが掲載されていました。
「明治・大正・昭和の世代にわたる長唄の名人による演奏会の時の模様をお話しいたしましょう。幕が揚がる前の聴衆は、名人の芸を聞かんものと固唾をのんで開幕を待ちわびています。従って幕が揚がっても拍手などありません。水を打ったような静寂さです。緊張の極致の一瞬です。演者の心を乱すまいという懸念で、恐らく拍手どころか息も出来ないくらいのひと刻であります。~中略~演奏が終わった時は、感歎と緊張が解かれた解放感による溜息が場内にあふれ、それからややあって、思い出したように万雷の拍手が怒涛の如く沸き起こりました」
彼は、長唄の演奏会というものはそういうものだという認識があったので、開幕の拍手について非常に戸惑ったそうです。
はあ、なるほどなぁ。

しかし、特に開幕の拍手は段取り的なものと思っていましたので、この文章は勉強になりました。