真しほ会 | fuyusunのfree time

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長唄などの邦楽をこよなく愛する看護師のfuyusunです。
ナースの仮面を脱いだ、fuyusunの日常を綴っています。

例年になく暖かな二月末の日本橋人形町の日本橋劇場で、今年も“真しほ会”が開催されました。
この会は長唄囃子藤舎流のお家元主催の長唄演奏会です。
毎年楽しみの演奏会です。

さて、本日は五曲の演奏を楽しんで参りました。
『高砂丹前』
唄   今藤政貴・今藤政之祐・杵屋巳之助
三味線 杵屋栄八郎・松永和寿三郎・今藤政十郎
笛   藤舎理生
小鼓  藤舎清成・藤舎花帆
大皮  藤舎朱音
太鼓  藤舎千穂

丹前物の一つの曲ですね。
この曲、次第というお囃子の手で始まるのですが、今日はヨセの合い方からのスタートでした。
解説を読んだら、そういった演出も多いのだそうです。
地方さんとタテ小鼓以外の方々は女流の演奏家の先生方。
舞台面がとても華やかでした。
うーん。。。
でも、地方さんは別として、お囃子は女流だけで揃えちゃった方がもっと良い舞台面だっただろうし、演奏自体ももっと良かったように思います。
上手い下手じゃなくて、うーん。。。全体のバランスが。。。


『勝三郎連獅子』
唄   杵屋利光・松永忠次郎・杵屋巳之助
三味線 杵屋五三助・今藤長龍朗・松永忠一郎
笛   藤舎推峰
小鼓  藤舎清鷹・藤舎呂裕
大皮  中村寿慶
太鼓  藤舎悦芳

若手の演奏家さんの舞台で非常にパワフルな演奏でした。
しかし、三挺三枚は寂しい。。。
後半の狂いから段切れまで、唄と三味線が聞こえない!
やっぱり、獅子ものは五挺五枚以上ないとなぁ・・・。
しかし、私の大好きな二上がりの唄い出し。
流儀によって二通りの唄い出し方があって、今日は私の好きなほうの唄い出し方でとっても気分良かったです。

『娘七種』
唄   杵屋直吉・松永忠次郎・今藤政之祐
三味線 今藤美治郎・松永忠一郎・松永和寿三郎
笛   藤舎名生
小鼓  藤舎呂船・藤舎呂英
大皮  中井一夫
太鼓  藤舎呂雪

本日の私的メインの曲でした。
出演者の豪華さもさることながら、曲自体が大好きだからです。
主人公は五郎・十郎・・・そして何故か静御前。
という事で曽我狂言の一つ。正月の七草粥の行事を題材にした曲で、楽しくて華やかな曲です。
私は、小鼓唄のあとの出端越の段の部分がとても好きです。
出端というと、登場人物の登場というイメージが強いのですが、この越の段はそういった使い方ではないそうで。
お囃子的視点で言えば、太鼓を聞かせる部分として用いるのだそうです。
そうそう、『花見踊り』も越の手を前半、後半に二分割して、太鼓地のように聞かせる部分があるのですが、出端というよりは太鼓地というスタンスのようです。

この曲、春の七草の名前が全部出てきます。
普段でも、「春の七草を答えなさい」というクイズを出されると、この『娘七種』の節を付けて「すずな、すずしろ、せりなず~な・・・」と言わないと七種類全部でてきません。
ここの唄はとても高音で。。。とっても唄い手さんとしてはとても苦しい部分です。(・・・経験談・・・頭の血管がブチッと切れる思い出唄わないとこの音が出ない)
素人が唄うと本当に苦しそうな顔で唄っちゃうのですが、さすがプロですね。
声は「きつい」という感じでしたが、顔は涼しそうでした。

『黎明』
唄   岡安晃三郎
三味線 稀音家祐介・今藤政十郎
笛   中川義雄

とっても綺麗な曲なのですが、インパクトの弱い曲ですよね。
もう何度もこの曲を聴いているのですが、いつも初めて聞くという気分になってしまいます。
しかし、さすがに「繊細で綺麗な曲はこの人でしょう」
というメンバーの演奏で、期待通りの『黎明』を拝聴できました。
山田抄太郎氏の長唄は繊細で綺麗という曲が多いですね。

『二つ巴』
唄   杵屋佐之隆・杵屋佐陽・杵屋巳之助・杵屋佐喜
三味線 杵屋佐吉・杵屋佐助・杵屋浅吉・杵屋佐和十郎
笛   藤舎貴生
小鼓  藤舎華鳳・藤舎呂凰
大皮  藤舎円秀
太鼓  藤舎清之

四世杵屋佐吉作曲の『二つ巴』。さすがに面白いですね。
あまり佐門会の演奏は聴かないのですが、なんとも言えない雰囲気があって、わたしはけっこう好きかもしれません。
『二つ巴』は忠臣蔵の曲。
上の巻が、一力亭の場面、下の巻が討ち入りの場面。
起承転結がはっきりしていて面白い長唄ですよね。


この会が終わるといよいよ春という感じ。
今年も良い演奏を聴かせていただきました。