前回で評価は終わりなんですけど、古都華とか、他にも品種を食べてみましたので、その感想とか、この企画を振り返っての感想ですね。

昨日(4/11)、相曾農園さんのかなこまちを買ってきました。大きいのは2L〜3L、小さいのはSかな〜🙄

これが、外観。
比較する品種は奈良県産の古都華


古都華の外観
外観比較
果形
古都華

こちらは古都華の表面と断面

古都華の表と裏。そう果の色が違います。
古都華は 先端丸めの円錐型で、おいCベリーに似てますが、ゴツゴツ感は古都華の方が少なく整形。そう果の密度はかなこまちより踈です。浮き種ではないが、そう果の沈み込みはかなこまちの方が深い。オサレは少し出てましたね。それほどデリケートでもないです。カットした面は芯がぼんやりした白と紅のグラデーションで、外に近い方が赤に着色してます。
かなこまち

相曾さんのかなこまち、表面と裏側。相曾さんのかなこまちも表と裏の色が同じになりましたが、そう果の色は表面が赤が強く、裏は黄銅色です。小粒も同じ傾向でした。

断面は2Lではこんな感じ。前の試食時よりも少し着色が濃いめ。

こちらは小粒のかなこまち。

2Lのヘタ下のくびれと伸び。ヘタ下縦割れ(右)。
2Lは長円錐形で整形であるが、先端形は若干の変異がありつつも尖りのある形状。果面のデコボコなし。ヘタ下のくびれあり、ヘタ下やや伸びる。そう果も他と同じ。オサレは今回ほとんどなし 。

小粒のかなこまちのヘタ下の伸びはあったりなかったり。
果色と色ムラと光沢
古都華 濃橙赤色で色ムラなし。かなこまちより少し明るめの赤。表裏の色乗りは均一。光沢は8〜9。
かなこまち 表裏とも濃赤色で均一。熟度が4.5〜5でかなり攻めた熟し方。光沢は9。
そう果の色
古都華 表面は赤が少なく黄銅色主体、裏面は黄色っぽい黄銅色。
かなこまち 表は濃赤色。熟した果実は黒っぽい赤。裏側は赤色に黄色混ざる。小さい方も同じ。
ヘタの形状
古都華 ぽてっとした厚みのあるヘタで上に向く。大きさはあまりんと同じくらいかな?チップバーンはない。なり始めてからの時間はヘタの状態からしてそれほど長くない。低温栽培ではない。
かなこまち 形状は細長めのバラバラと上下に向く。チップバーンはない。時間かけた感じで、低温気味栽培であるが、春の暖候期で前回よりヘタが若い感じがする。
果実内部比較
香りの強さ
古都華 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 9
かなこまち ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 9
香りの質
古都華 何とも言えない素晴らしい香りで、理想的な最良の香。果物の香りとしては雅な香りと言ってよい。こういう香りの品種を作りたかった。
かなこまち 今回はかなり紅ほっぺのようなバラ科の香りに、熟した果実に含まれる甘い香りを含む主張がある。小粒の方が主張は弱い。
甘味の強さ
古都華 ☆☆☆☆☆☆☆☆8
かなこまち ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆10+
先端以外 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆9〜10
※古都華は紅ほっぺと同等くらいの甘さ。甘さとしては、かなこまちと比べたら低い。かなこまちは今回も振り切った甘さで、あまりんより甘いくらい。ただ、今回は先端の甘さが強くて、先端以外は前回より落ちた。それでもまだ甘くて訴求力のある美味しさは驚異的。そして、2Lも小粒も甘みはあまり変わりありませんでした。
甘味の持続性(後味の余韻)
古都華 ☆☆☆☆☆☆☆☆8
かなこまち ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆10
※古都華の甘味はそれほどではないが、素晴らしい香が甘味を包んで、余韻は長い。
かなこまちは甘すぎるくらい甘いから、後味が残る。今回、2Lと小粒の差はそれほどなく、両方とも美味しいから、安価な分、小粒はお得感が高い。
酸味の強さ
古都華 ☆☆☆☆☆☆6〜7
かなこまち ☆☆☆☆☆☆☆☆8
※古都華の酸味は尖っていないから、他の食味や香りを損なうかんじはない。かなこまちは前回よりも酸味を感じた。
食味の濃厚さ
古都華 ☆☆☆☆☆☆☆☆8
かなこまち ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆10
※古都華の果実は一口で凄く美味しい❗と感じるもの。というか、素晴らしい香りに包まれて多幸感を感じる。正直、食味の濃厚さとか関係ない次元の食味。かなこまちは前回とほぼ同じ。やはり濃厚さは抜群に感じる。小粒も十分に濃厚で美味しい。
食感
古都華 : 粘質で滑らかで、口の中で解けるように溶ける。質感と食感のバランスが良くて、程よい充足感がある。
硬い品種のとちあいか、やよいひめ、堅しろうはたくさん食べると少々胃もたれする。胃が健康な人や若い人は良いが、この点は胃腸が弱い人には欠点だと思う。
かなこまち : 口の中でほどけるくらいのメルティング質で、粘質かつ非常にジューシー。2Lも小粒も同じ。古都華よりは食感がやや軽めか!?
果汁感
古都華 ☆☆☆☆☆☆☆☆8
かなこまち ☆☆☆☆☆☆☆☆☆9〜10
※2Lも小粒も同じ。
終わっての感想
古都華はすごく美味しいだけじゃなくて、香りの良さが抜群で、華やかで他にない食味、バランスも凄い良いいちごです。香りの良さがすべてを決定づけているようですね。ただ、甘さ一辺倒なものがウケる世の中の傾向においては、この良さが分かる人がどれだけいるだろうか?
栽培された奈良いちごラボさんの栽培ですが、品種の能力を引きだすのに長けた方だと思います。
古都華は収量がイマイチらしく、かつネット情報では、萎黄病がメチャ弱、炭疽病に極弱になってた(笑) それで作りにくいとか?
炭疽病は確かに宝交早生やかおり野みたいにほとんど罹病しない品種もあるけど、感染に強いか弱いかを検定するのは難しいし、もし感染に弱いとしても総合防除で防げる病気だから、ことさら問題にするのは違和感がある。
案の定というか、関係者が言うには古都華は収量が低いから採用されず、アスカベリーみたいに収量が穫れる品種の農家人気が高く、最初は農家に受け入れられなかったそうです。
SNSとか情報が伝播しやすくなって、単価を高くしても売れるようになったことで古都華もクローズアップされて来たのかと思いました。
今回は武井さんの標準かなこまちがなかったから、番外編としたけど、相曾さんのかなこまちはまだまだ冬のいちごに匹敵する美味しさでした。
大粒と小粒の差はそれほどないという予想でしたが、概ね当たりました。ただ、小粒の方が果実によって食味の差異が若干あるものの、普通の品種の端玉よりずっと美味しいです。
これは、ボクが選抜したときに、千葉県の石川正美さんから教わった育種テクを使ったからで、大粒に揃えるのと、大小の味の差が出にくい選び方があるんだよね。人様から教わった技術だから、後輩にしか教えてないけど。
他の品種の感想
ほしうらら
前回、ほしうららを褒めちぎったんですが、ホントかどうか気になって、直売所のを買ってきました。
前回のかなこまちvsほしうららの記事👇
ほしうららは正直、2回目はガッカリしました。

これが買ってきたほしうらら。
具体的にどうかと言うと、さして甘みもなく、酸味は刺すような感じで、かといってコクも大したことがなく、これなら398円で買える味だと思いました。別物でした。
イチゴはこれが怖いと言うか、栽培の本質が分かる人と形だけイチゴを作る人とで食味の差が天地の差ほど出てしまう。
と言うことは、前回のほしうららを作った中里農園さんの実力がいかに高いかが分かると思います。
さくらももいちご

これがパッケージ

さくらももいちごの表面

さくらももいちごは、徳島県のブランドで、品種は明かされていません。ももいちごは愛知県の齋藤弥生子さんが作った品種、あかねっ娘ですね。
今回、安価で売ってたから買ってみました。
食べて❗❗❗❗❗
でしたね〜。これ、女峰と同じだと思いました。
女峰は、栃木県の赤木博先生が作った傑作だけど、玄人筋では、一般に出回ったメリクロンと、ごく僅かに初期だけ出回ったランナー増殖のいわゆる「男の女峰」があるのを認識してます。こちらは、たぶん後者だと思いました。
男の女峰は、実は神奈川県にもあって、ひそかに保持してましたが、草勢が強いというか、果梗がかま首を持ち上げてるような元気な株で、メリクロンとは全然違ってました。
これは、完熟の特別栽培してる農家もいましたが、糖度は最近の品種と比べたら低いけど、いろんな点で食味も優れていました。
当時、女峰は非常に多く交配に使用され、章姫始め画期的な品種をたくさん生み出してますが、それだけホンモノはものすごい品種だったのです。
恋みのり、そして古都華1回目

左は長崎産 恋みのり、右は奈良県産の古都華

恋みのり

恋みのりの裏表

古都華

古都華の裏表
恋みのりは、398円で売ってたもの。
長崎県は伝統的にさちのか、ゆめのかと硬くて流通性の良いものを栽培品種に選択してきたのですが、恋みのりもそのラインナップ上にある品種ですね。
甘みは古都華が8とすると、恋みのり4くらい。
酸味は古都華が6とすると、恋みのり3〜4
食味の濃厚さは古都華が8〜9とすると、恋みのり3
.
長距離輸送してるから、味の薄いイチゴなんだけど、オサレは少なくて、2段目の下面も綺麗な状態でした。
こういう品種も大切で、やはり流通性が良く、物量を流してくれる品種があって、産地も生産してくれて、どこのスーパーでもイチゴが並ぶ訳で、また、一方で特別なブランドも成り立つわけです。
別に、月何万円もイチゴ代にかけるイチゴオタクのためにイチゴ産業があるわけでなく、農家が生きる糧のための商品で、多くの人がイチゴを食べられるから、ボクは良い品種だと思います。
訳ありのイチゴ

訳あり品として、御徒町の吉池に並んでいた品物。698円。イチゴはどうしても傷みが出やすいから、パッケージを開けて傷んだのを捨てて、2個イチ、3個イチに仕分けてました。

少しオサレありましたが、全然問題なく食べられました。

上段はこんな感じ。
品種はおそらく、あまりんですね。

下段はこんな感じ。
品種は、特徴からあまおうでしょう。
比較する品種がなかったけど、あまりんにはこんな感想を書いてます。
「香りというよりは、甘味、酸味が同時に一気に感じて、適度な酸味がほどよく残る。非常に甘いが、パッションフルーツのような風味とコクが感じられる。冬のあまりんよりは甘くないがそれでも十分甘い。」
あまおうも、この時期になると酸味がかなり尖ってくるから、食味はまぁまぁでしたが、お買い得でしたね🤣
企画を振り返り
実は、ボク自身はまだあまりん出現前に品種育成していました。
その頃考えていたのは、スタンダードに作られているとちおとめ、紅ほっぺ、章姫、さちのかに少しでも追いつかなければ仕事の意味がないと思ってましたから、この4品種を対照品種として、収量と品質で上回らないといけないと思って選抜しました。
厳しかったのは、早生性で選抜し、早生にするとどうしても小果になりやすく、収量も出ません。また、早生にすると高温時期を経て、早く結実するのでマズい果実になります。
そこで、最低クリスマス出荷に間に合い、かつ大果、糖度、糖酸比が主要品種以上、かつ風味が良い濃い味わいを重視しました。他にも、文献には書かれていない多数の重要形質がありますが、引き継いだ担当者が野帳を紛失して、それは論文にされていません。
それで、当時は時間もなかったし、とにかく自分がいる間に決めてしまおうと選んだのがかなこまちでした。
今までは、標準品種より良い系統、個体探しに必死に取り組んでいましたから、こんどはかなこまちを対照にいろいろ比べようと、企画を思い立ちました。
もう一つの理由。実はむかしから懇意にしていただいている農家さんから、1冊の本を贈られまして、これが匠さんという人が冊子にした「おいしいいちごの本 西日本編」でした。
それで、お礼に農家さんのところに1月に行ったら、「彼はものすごくたくさんの品種を食べて研究して、評価している」とのことで大変称賛していたので、それでは自分でもやってみようと思いました。
それで、まず、かなこまちは神奈川県でもずっとイチゴの美味しさに力を入れて、栽培方法も間違いない武井農園を対照にしました。それとかなこまちの栽培については、かなり早くから取り組んでいただいた海老名市の澤地さんと小田原市の小清水さん、新進気鋭の平塚の相曽さんのかなこまちも比較に入れました。
全員、共通しているのは、みな土耕で、相曾さん以外はだいたい土壌分析もして、栽培方法もだいたい分かっている人ですね。いずれも、かなこまちの品種特性を発揮できる方です。
あまりん、紅ほっぺ、やよいひめ、とちおとめ…と比較しましたが、だいたい気になった品種の比較はできました。
'あまりん’については、イチゴマニアや消費者からは絶賛され、ボクも美味しいと思いましたが、ボクはこういう個体は絶対に選ばないです。
なぜなら、いくらなんでも’とちおとめ’の収量の2/3(約2.8t)しか穫れないのでは、採算を合わせるために高い価格設定になってしまうことです。
単収が低いと、増反して収入を補おうとしますが、あまりんのように果房間日数がかかるのは、収穫の山がぶつかると過剰生産になり、4月以降は採れすぎで過剰になります。連続出蕾して出荷が休まない品種が最上です。女峰は典型的な連続出蕾タイプでした。
現在、あまりんは比較的安いところで、特大4個から小10個で980円の店がありますが、この価格は一般家庭で喜んで購入できる価格ではないと思います。必然的に、一般家庭や物珍しいのが好きな人が試しに購入するのが一巡したら、物日需要に移行すると思われます。
これでは、一部のイチゴ好きか高収入のところで買われるだけになり、もったいないと思います。中国あたりの富豪さんなら買うと思いますが。
もっと、カジュアルに購入できる価格帯で販売しても、農家が再生産できるだけの収益があり、かつ多くの日本の消費者に満足いただける関係を作ることが県や国の使命としても大事なことなんじゃないかと思います。
あまりんの担当者が、普通に育種したのでは、栃木県などが生み出す品種には敵わないので、1点突破で食味選抜したとおっしゃってましたが、収量だけは妥協してはいけないと思いましたね。
*しかしながら、埼玉県OBで、事情通の方にお聞きしましたら、試験研究では行政内部から、他県に比べてロクにイチゴの品種が出ていないと攻められていて、いちかバチかの食味優先の育種だったと聞いて、とても気の毒になりましたが・・・。