おもしろ引札 | 風遊花(ふうか)~古布とうさぎとお雛様~

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~作品展 ものつくりをする仲間達 ギャラリー ショップ~
  大好きなもの 日頃の様子を気ままにご紹介します。

 

デザインの参考にしたくて ネットで見ていたものに《引札》があります。

 

引札は 江戸 明治 大正時代にかけて 商店 問屋 仲買 製造販売元などが宣伝のために配った印刷物 今の時代の広告です

引札の始まりは天和3年(1683年)に 三越の元となった呉服商の越後屋が宣伝用に「現金安売り掛け値なし」という札を十里四方に出したのが始まりと言われています。

十里というと 約40km 新宿からだと八王子辺りまで 日本橋からだと横浜の戸塚宿辺りまでだそうでなので 今のように流通が発展していない時代に ずいぶん広い範囲

に配布したことがうかがえますね

 

 

引札はデザインも面白く コレクションしている方も多いですよね。

私も実物を欲しいと思いながら これ以上コレクションは増やせないので 参考資料用に 本を買いました。

こちらは 去年買った文庫本です。

 

 

こんなかわいい(ある意味 キモ可愛い)福助さんの引札も掲載され お気に入りの1枚です。

 

 

 

でもね もう少し大きな絵で見られる本が欲しくて ヤフオクで見つけた右側の本を落札しました。

 

 

 

《田村コレクション 明治の引札》しゃこう図書販売 1988年 ¥2800

 

200種類以上の引札が掲載されていますが 商売繁盛の神様 大黒天や 福助さんを使った引札は やはりたくさん作られていて 好きなキャラクターがいっぱい掲載されていました。

 

 

 

表紙の左上の福助さんと大黒さんの絵は こちらの引き札のもの。

《桝を抱える福助と子供》 明治時代

  煙草砂糖荒物照商 併ニ 木綿糸類

  網子大津村衛丙西土井 機揚(?)  矢野新治

大きな顔の大黒さんが入った桝からは 大判小判と宝尽くしの分銅七宝 丁子などがザックザク~~

 

 

 

裏表紙に描かれた恵比寿さんの絵は 

 

 

 

《大漁を祝う恵比寿》明治時代 

  生魚商 併ニ折ヅメ仕出し?好?図 

  高田町本郷 万 魚萬

   

 

 

自分の身体より大きな鯛を持った恵比寿さんの引札も 仕出しも扱う海産商の引札です。

《鯛持ち恵比寿》明治時代

  海産商 お料理仕出し 

  甲賀郡大原村 う浅㐂(喜)

 

 

 

福助のお相撲さんと一緒のガリバーみたいな大黒さんの絵は 青物商の引札。

小っちゃな福助お相撲さん チョー可愛いです。

《福助の相撲を観戦する大黒》明治37年 青物商

  高田天神橋西?北側  有甚支店

 

 

 

美人さんに見守られ 子供に背中を押されてブランコに興じる大黒さんは お菓子屋さんの引札

左側に描かれている黒い表は 明治44年の畧歴(略歴)で 節分やお彼岸 土用や半夏生の日付が書かれた暦でした。

着物美人と 明治天皇が着ていた軍服のような服を着た男の子から 時代背景も伺えます。

《ぶらんこに乗る大黒》明治43年

  菓子製造 御小賣(売)商 八王子寺町 大阪屋福太郎

 

 

野菜を乗せた大八車の上で 扇子を振りながら音頭をとる恵比寿さんの絵は 青物商の引札です。

面白いのは 大八車を引いているのは 擬人化したタケノコ 蕪 シイタケなどの野菜たち。

《野菜と恵比寿》明治時代 青物商高田北町 山浅商店

 

 

 

このお菓子屋さんの引札 とても面白いんですよ~~

行李の蓋を開けると 蓄音機とお金ががザクザク~~

《大黒と雀のお宿》

  菓子製造 小賣(売)商 御八王子千人町

  菊川久保菊次郎

 

  

 

 

恵比寿さんが行李の蓋を開けると お金やお宝が出てくるのは 舌切雀の話のよう・・・と思っていたら  本当に舌切り雀の昔話とコラボした引札で 恵比寿さんの後ろに 舌切り雀の物語が書いてあったり 

 

 

 

上部には雀のお宿で接待を受ける恵比寿さんの絵も描かれています。

 

 

   

沢山の商品に囲まれた福助さんの引札は 乾物屋さんの引札のようですね。

右側のっ福神漬けの容器はには 七福神が描かれています。

ウニの瓶詰や 干しするめ 鰹節・・・扱っていた商品は数知れず・・・

《乾物類に囲まれる福助》明治時代

  萬(よろず)青物 乾物塩魚 伊丹南?場口 八百巳

 

 

 

お米屋さんの引札の主役は お多福さん。

貫禄のあるお多福さんの撒く豆に ちっちゃな鬼が 逃げていく・・・爆  笑

《お多福の豆まき》明治31年

  米雑穀商 下市田中所 倉本商店

 

 

 

昔話のヒーローたちも登場です。

大福帳や小判などが下がった餅花の下で 小判を撒く桃太郎さんと拾い集めるお猿さん。

見ているだけで楽しい引札は 雑貨屋さんのもの。

数多くの雑貨を扱っているようですね~~

《桃太郎》明治時代

  シャツ 帽子 洋傘 莨入(たばこいれ) 厚司袴(あつしはかま)(※1) 

  足袋 前掛 胸紐(むなひも)(※2) 毛糸? 学校用品 打刃物 筆 

  墨 莨 板ガラス

  高田市町一丁目   松村店

 

 ※1厚司袴とは

   アイヌ民族により オヒョウという楡科の樹皮で織られた柔らかく

   強靭な織物(厚司織)で作られた袴

   

 ※2胸紐とは

   長襦袢や着物の衿を合わせ 整えた衿元を押さえるために締める紐

 

 

 

金太郎さんの引札は 運送業者の引札です。

力持ちの金太郎さん キャラクターにぴったりですね。

《金太郎に鯉の滝上り》明治時代

  荷扱 宇治天ケ瀬濱 皆川運送店 電話 三十七番

     宇治駅前  皆川支店 電話 三十六番

 

 

 

即位の時に海外に習い 洋装を取り入れた明治天皇のお姿も 引札には度々使われています。

沢山の勲章を付け 軍服のような洋装姿の明治天皇は 当時の方には 新しい世の中への幕開けとして 明るい未来を感じさせたのでしょうね。

 

まずは鳥取県 境湊の呉服屋さんの引札

《明治天皇皇后》明治時代 金来画(原画作者)

  呉服洋反物 木綿織物商 伯耆國境湊 足立民一郎

 

 

 

この引札を作った 呉服屋の足立民一郎商店は この他にもたくさん引札を作られていることがわかりました

 

 

《豊年と凱旋》明治時代

  萬染物所 高田 表元

 

 

 

つい最近 1762年縫い作られたチャールズ国王の戴冠式に乗られた馬車 ゴールド・ステート・コーチが話題になりましたが  日本では明治天皇の頃から見られるようになった光景ですね

《馬車に乗る明治天皇皇后》明治時代

  太物(※3) 併ニ 漆器商  山下商店

 ※3太物とは 和服用の織物の呼称の1つで 絹織物に対し 綿織物や

   麻織物のことを言う

 

 

 

軍服を着た郵便配達人の大黒さんは 時計屋さんの引札に抜擢されました。

我が家にもこんな郵便屋さんが来てくれれば 福が舞い込んでくるかもね~~

《大黒の郵便配達》明治時代 楓舟画(原画作者)

  各種時計及び付属品兼賣 併ニ時計直し

  彦根町字地須町 時保堂 中善護 

 

 

 

こちらは 忠臣蔵の浪士たちが 宣伝を買って出ています。

《忠臣蔵 義士討入》明治時代 

  諸綿糸物商 綿喜 藤居商店 電話弐参五

 

 

 

こんな面白いものもありました。

牧場の引札です。

当時の乳牛はホルスタイン牛ではなかったんですね~~

《うしのちち》明治時代

  滅菌 うしのちち 高田町 小走牧場

 

 

 

こちらは 番外編。

昭和になってからのキリンビールのポスターです。

酒屋さんの店頭や 居酒屋さんでに貼られていたものでしょうね。

明治時代の引札は 石板色版で作られたのものがほとんどですが 昭和のこのポスターは オフセット色版製作です

《日傘に美人》昭和時代 キリンビール

  北鳥画(原画作者) 精版印刷株式会社

 

 

 

懐かしのマッチのラベル 明治時代

もう40年以上前ですが 喫茶店のマッチを集めるのが流行って 私もずいぶん集めました。

とっくに捨ててしまったけれど とっておけばよかったな~~~

 

 

 

ご紹介した引札は 掲載されている物のほんの一部です。

昔のデザインのおしゃれさは 今でも十分に通じるアート作品ですね。