博物館 江戸民具街道の廊下に並ぶのは 黒光りした看板たち。
中でも 一番に目に留まる大きなものは 風邪薬の看板です。
上部には 《MORITA・S HOTAN》(守田の寶丹) 《起死回生》の文字と 登録商標。
中央には 《官許本家 東京》 《寶丹》 《特約販賣店》の文字と 《丸に井桁》の屋号
一番下には 《守田治兵衛謹製》 《家庭常備 懐中良薬》 《折井審泰参堂》
守田治兵衛商店は 延宝8年(1680年)に 摂津(大阪)から江戸に移り 薬業を創業。
現在も上野で 15代目の後継ぎが営む 都内で最古の薬舗です。
去年 アド街ック天国でも紹介されたようですよ。
どうも 東京での一人歩きが苦手で 都内にはほとんど行ったことが無いので 知りませんでしたが 上野で店舗をご存知の方 たくさんいらっしゃるでしょうね。
《寶丹》は 文久年間(1861年~1864年) オランダ人の名医 ボードヴィン博士が処方した薬で 大きなな効き目があるため 《寶丹》と名付けて販売されたそうです。
看板横の説明書きには 風邪薬と書いてありますが 調べてみたら胃腸薬。
明治時代 流行していたコレラの予防 家庭の常備薬 戦地への携帯薬として 幅広く知られ アメリカや中国にも輸出していたそうです。
その後 改良が重ねられ 現在でも 胃もたれや 吐き気 飲みすぎ 食べすぎに効く 第3類の医薬品として 10グラム入り ¥1500で販売されています。
また寶丹は 6代目 三遊亭圓生の演目《なめる》 夏目漱石の《吾輩は猫であ》 森鴎外の《雁》などにも登場し 古くから名の知れた良薬でした。
額入りの看板は 《目薬 一方水》 《本舗 資生堂》
《資生堂》って 化粧品の資生堂の事・・・
色々調べてみたら 現在は化粧品メーカーとして知られている資生堂の原点は 明治5年(1872年) 銀座の出雲町にオープンした 日本初の洋風調剤薬局だったんだそうですね~~。
当時 軟膏や小児用の薬などを販売していたようですが 一方水もその一つ 資生堂が販売していた 戦前の目薬という事がわかりました。
現在は作られていないようですが 当時 一方水が入っていた コバルトブルーの四角い空きビンが アンティーク雑貨として びっくりするような価格で取引されていました。
こちらも薬の看板。
調べた結果 情報がなく 詳細は判明しませんでしたが 《京都下立賣通大宮西入町》 《正本家調合所》 《菱屋小三郎製》 人参入り(朝鮮人参かな・・・)の薬の様です。
でも肝心の商品名の一番上の漢字 《〇めいさん》が 判明できません
追記1:《〇めいさん》の読み方 お二人の方からご意見いただきました。
どうやら 〇部分の文字は《楚》という文字の様です。
高級漢方のニンジンなども入っていることから 中国の古代王国《楚》を意味している
のではないかと思います。
《楚》は 中国の周・春秋・戦国時代の紀元前223年頃から 現在の湖北省 湖南省辺りに
存在した王国名です。
教えてくださった お二方ありがとうございました。
足袋屋さんの看板も登場。
《高尚優美》 《品質精撰》 《ますやたび》
そう言えば ますやたびの看板よりは 見劣りがしますが 一昨年 伊豆の松崎に行った時に 明治20年に建てられた呉服商 中瀬邸(現在は 総合インフォメーションセンターとして利用)の中で 足袋の形をした 《目玉印 足袋 販賣店》の看板があったっけ~~。
酒樽型の看板は 京都伏見のお酒 《神聖》の物かしら・・・・
左側に書いてある4文字は 判読できませんでしたが 《皇〇〇綿》(?)
追記2:《皇〇〇綿》の読み方も教えていただきました。
《皇統遵綿》(こうとうじゅんめん)という 難しい言葉。
4文字熟語での記載は見当たりませんでしたが
《皇統》は 天皇の男系血統の事
《遵》は 《物に寄り添って進む》 《法則にしたがって行動する》という意味があり 訓読み
では《したがう》と読むそうです。
《綿》は 《綿々と》(途絶えることなく)の事・・・
…という事で 《皇統遵綿》は 《皇族ように 途絶えることなくとつながる 由緒ある薬》
または 《皇族達の間でも 途絶えることなく使われている薬》という意味を現わしている
のではないかと思います。
3文字の《輝卯海》の事 調べてみましたが 情報は無し・・・
でもね 看板をよく見たら 《神聖》の文字の中央に 輝く勲章のようなものと 両脇に 線彫りされた向かい合わせのうさぎ(卯)がいるじゃ~~~~ん
いったいこの可愛い酒樽の出どこはいずこ・・・・
去年 京都に行った時 伏見の駅前で 《神聖》の酒樽を見たのですが 看板の出所もここなんでしょうかね・・・。
神聖の事を調べていて 懐かしいことが判明。
神聖 金印は かつて 伴順三郎さんが 「かあちゃん 一杯やっか・・・」のキャッチフレーズで一世風靡したCMの商品。
1962年~65年頃放送されていたそうですが 子供心にも とてもインパクトがあるCMでした。
61年生まれの弟が 覚え始めた言葉の一つがこのCMのキャッチフレーズ。
大人がいる所で 「かあちゃんいっぱいやっか・・・」と ウケ狙いで よく言っていたのを懐かしく思い出しました
古い看板も辿ってみると 面白いですよ~~。