秘めやかで、艶やかで――諏訪名店街で、こぶしを愉しむ。 | ふうとも『諏訪の木陰から』

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お散歩のひとこま。

みなさん、おはようございます。

少し落ち着いてきはしましたが、
まだまだ地震が続く日々です(関連コラム1)。

心身ともに、
いたわりながら、お過ごしください。

日々、春に近づいています(関連コラム2)。
春は、刻々と豊かになる草木の緑や花の変化が
嬉しい季節ですね。

わたしの
ひそかな愉しみの一つは、
こぶしです。

今回は、諏訪名店街のものを。

こぶし,いい感じになってきましたね@多摩市
【3月18日(金)16時まえ つぼみを破ったばかり。諏訪名店街にて】

分厚いつぼみを
破ったばかりのこぶしの花は、
もう、たまりませんね。

真っ白ではない、
こぶしならではの
温かくて、やわらかい白。

ふんわりと、やわらかそうな
花びらの触覚。

一瞬一瞬、時間がたつにつれて、
確実に失われていくものです。

わたしが
こぶしに惹き付けられるようになったのは、
時が過ぎる中で、姿が刻々と変わることや、
失うもの、失ったもの、失った後のものまで、
ありのままに、受け入れて、
ありのままに、愛せるように
なりつつあった頃だったかもしれません。

【3月29日(火)16時50分ころ 夕日を浴びて、ほんのり黄金色に。諏訪名店街にて】
【3月29日(火)16時50分ころ 夕日を浴びて、ほんのり黄金色に。諏訪名店街にて】

つぼみをひとたび破れば、
こぶしの花は、
ひたすら開いて、
花びらは傷み続けて、
散る瞬間にむかって
進んでいきます。

花は大きく、
数だってたくさん咲くのに、
春の花の中で、
梅や桜、藤などにくらべると、
存在感の強さや、
見た人を瞬時に虜にするような引力には、
乏しいかもしれません。

伝えてくる魅力や、
メッセージの種類が、
違うんでしょうね。

一方的に、
自己主張するような魅力ではなく、
こちらから、
じっくりと、ゆったりと
分け入って近づいて、
体が慣れたところで
ようやく
感じ取ることができるようになる魅力。

満開になった午後。
夕陽を浴びれば、
ほんのりと、ちょっとだけ、
白い花びらを
黄金色に染めてみせたりします。

こんな姿が、
たまらないんです。

【3月18日(金)18時40分ころ 夜のこぶし。諏訪名店街にて】
【3月18日(金)18時40分ころ 夜のこぶし。諏訪名店街にて】

ご覧になったこと、ありますか?
夜のこぶしを。

ライトアップされている場ならば、
味わうことができます。

わが諏訪名店街も
その一つ。

夜のこぶしは、
もう、とにかく、
艶っぽいんですよ。

【3月18日(金)18時40分ころ ライトアップされて、艶やかです。諏訪名店街にて】
【3月18日(金)18時40分ころ ライトアップされて、艶やかです。諏訪名店街にて】

艶っぽいといっても、
夜の梅や、夜桜のような、
向こうから
直線的に迫ってきたり、
官能を直撃するような
種類のものではありません。

秘めやかで、
すぐには、察しづらいけれど、
こちらから、
じっくり、ゆったり分け入って、
そばにい続けて、
はじめて、
じんわりと、どっしりと、
深く、重く、
感じ取れるような
艶っぽさなんです。


【この稿は、「たまプレ!」の連載『諏訪の木陰から』に、2011年3月31日(木)付けで掲載された内容の転載です】