バングラデシュの文化の中で 看護師育成プロジェクト | 認定NPO法人 Future Code

認定NPO法人 Future Code

国際医療支援団体である私たちは「世界中の医療に、未来への鍵を」をコンセプトに、医療問題をベースとして教育、公衆衛生など様々な世界の問題に対し、日本人として何ができるのかを考え、その土地の人・文化を知り、平和構築を行う支援活動を続けています。

特定非営利活動法人Future Codeの代表理事を務めさせていただいております大類です。

最近は日本になかなか帰っておらず、随分と皆様にはご無沙汰しております。
このバングラデシュ看護師教育プロジェクト、日ごろからご支援いただいております皆様のお力をお借りし、無事に開始に至り、そして開始後も多くの皆様から激励のメッセージを頂戴しており、改めて感謝申し上げます。


画像



       プロジェクトが行われているダカの病院 ICU新病棟


思い返せばこのプロジェクトの最初の構想から約2年が経ち、現在に至ります。

バングラデシュを始めるきっかけとなった、医師のシャキブル・ラーマンとの出会いも2010年の春のことで、今では家族のように共に過ごし、共にプロジェクトに取り組んでいますが、もっと長い年月を過ごしてきたかのように思えます。

画像


画像


              2012年 バングラデシュで活動を開始


今までハイチをはじめ、様々な地域と国を訪れ、活動してきましたが、そもそも彼と出会う以前は、バングラデシュは私にとっても遠い国でありました。しかし今となっては、自分の生活の一部とも思える場所です。

画像



なぜそうなったのか、と簡単にいいますと、やはりそれはバングラデシュという国の人を知り、好きになり、文化を好きになったからに他ならないのでしょう。


今回、私もまたこのバングラデシュの病院で、今まで日本から派遣された他の講師と同様に、看護師育成の講師として看護師たちの教育に取り組みました。
今まででも他の国でも教育に関わることは多かったのですが、それでも海外で一度に60人を超える人数を「生徒」として教える機会はそう滅多にあることではありません。

画像



話し合いを重ね、彼らの希望の科目と自分の今までの経験を踏まえて課題を選び、臨床現場で役立つ知識と経験を講義に盛り込みます。

画像


さらに、首都ダカでは電気もある程度安定(バングラデシュでは電気は地方では特に普及率は低く不安定であり、突然電気がなくなることも頻繁にある)しているため、実際の臨床現場で知識を実践している映像を講義中に使い、視覚的にも理解し、具体的に臨床現場で知識を使うイメージを持てるように、また講義後の復習にもこの映像を繰り返し見ることができるようにしています(映像はNPO法人 e-Educationと共に作成)。

画像


一方的な講義にならぬよう、敢えて講義中に生徒が発言する時間を設けたり、講義の知識を具体的なシーンを設定して皆の目の前で実践してもらうような工夫も必要です。

なにより、講義を聞くだけ、理解するだけでなく、生徒自らが自らの意志で意欲的に、いい医療ができるように自分を含めた環境を変えていこうと思ってもらえることが大切です。

画像



そしてもちろん、生徒にうまく伝えられないかもしれない、という一種の「恐怖」は講義を始める前には何度やってもいつも感じています。




講義が始まると、自分の一言一言に生徒たちが集中していることが感じ取れます。
日本での講義と比べて、遥かに彼らはある意味素直であり、分からないときは分からない、不満だ、と明確に態度に示します。
理解できたときは、わかった!と皆が明るく顔に書いてくれるのです。

画像



しかしいくら準備をしても、文化も自分と違う生徒を前に講義をすれば、必ずと言っていいほど大小あれど次回への反省点も見えるものです。
毎回次の講義までに反省点を必死で修整しながら、より理解してもらえるように、実際の医療現場で生かせる知識であるように努力をするわけです。

そしてもちろん、これを継続して、医療現場に役立てていくことが目標であるわけで、一度の講義だけでそれができるわけではなく、実践する、ということを続けていかなければなりません。

もちろんこの過程はとても時間を要し、さらに完璧と思えるような終着点などないのかもしれません。


画像



それでも私はこの講義を担当した感想としては、「大変だった」というより、「楽しかった」とただ難しいことはなく、思いました。

生徒らとひとつひとつ彼らの理解を確認しながら、講師である私は彼らにより理解してもらおうとし、生徒たちはまた私が何を伝えたいのか必死に理解しようとするわけです。そうしてあっという間に毎回一時間という時間は経過してしまいます。
その結果、お互いに伝えたいことと学びたいことの理解が一致した時、その教室はなんとも言えない充実感で満たされるのです。
生徒の笑顔を見ることができたとき、自分も素直に嬉しかったんですね。自分の努力が報われた、という感覚ではなく、共に目標に到達した達成感、でしょうか。


画像




「教育とは人間の第四の欲求であり本能である」という言葉を聞きました。

文化や言語の壁を越えても、この言葉は健在であり、私にとって生徒の理解は次へ向かうモチベーションでありました。
この病院は軍が運営しているため、看護師も男女共に軍服を着ているので、日本人である我々から見ると一見怖く思うかもしれませんが、実際は実に皆、素直で人懐っこい性格で、このバングラデシュ人たちの人柄が作り出す人間臭さと、彼らと共に歩む一体感は、私に多くの感情と学びを与えてくれています。

画像




講義の終わりに生徒が私に「あなたの次の講義を待っています」と言い、私は「もちろんまたやろう」と言います。

いつの間にか、自然な流れでこの国は私の一部になっていたわけです。

画像



当然ながら「教育」はすぐに結果が出るようなものではなく、数字に表わせられることでもなく、時間をかけ、腰を据え、取り組み続けることが求められます。
今もまだ今回のプログラムの中間地点であり、我々はチームとして少しでもよい講義と実習を考え、反省を次に生かすことを懸命に繰り返して行きたいと思います。

そしてそれを継続して医療現場で生かせるように、これからもバングラデシュの彼らとともに取り組み続けたいと思います。

そしてただ私もひとつひとつのこの時間、過程に情熱をかけ、生徒である彼らがよりよい医療現場を作るために少しでも役に立てることを心から願い、前に進もうと思います。