メンバーの小林 沙耶花です。
いよいよバングラデシュ支部での看護師育成プロジェクトが開始しましたが、今回5S担当講師として参加する機会を与えていただきましたので、この場をかりて活動報告をさせていただきます。
私は普段保健師として日本で勤務していますが、Future Codeの活動に参加した当時には、まさか自分がバングラデシュの看護師達の前で講師として講義を行うことになるとは想像もしていませんでした。
よく、保健師ってどんな仕事?と聞かれます。その時、私はいつも説明する言葉に悩みます。
なぜなら、保健師の活動そのものが、簡単な言葉にすると漠然としてしまうものでもあるからです。
保健師の活動は疾病予防活動等の公衆衛生活動を基本としますが、その人が自分らしく健康に生活していくために手助けをすることだと思っています。
しかし、「健康」を阻害する背景には、単純な問題があるわけではありません。背景には、経済的な問題、家族の問題や心の問題、もっと複雑な問題があるかもしれません。
その問題を把握し、医療や保健、あるいは福祉などの観点から解決していくための方策を共に考え手助けすること、それが保健師の使命だと思っています。
それは、対象が日本人であっても、海外の人であっても違いはありません。
私がFuture Codeの活動と出会ったのは、もっと自分の経験を拡げていきたい、そう感じていた時でした。
今回5S担当講師として機会をいただいたことは、私にとって、とても貴重な経験となりましたが、まず最初に考えたのは、「さあ、困った。」というのが正直なところです。
5Sは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字をとった日本独自の安全衛生管理の方法ですが、これは、もともと産業界から始まった概念であり、次第に医療現場でも取り入れられるようになりました。
日本では、高度経済成長期からの多発する労働災害の経験を積み重ねながら、安全衛生管理体制については重視され、法的にも整備されています。
今回の受講生たちは、バングラデシュのトップクラスの病院で働く看護師たちです。
しかしながら、バングラデシュの人達の安全や清潔に対する意識はどうなのか?バングラデシュでの講義スタイルはどのようなものなのか?自分が普段日本で行っている講義スタイルは通用するのか?
やはり現地の感覚が掴みきれないという不安は大きかったように思います。
まずはバングラデシュの文化を知る、という事から全ては始まりました。
今まで自分の活動してきたフィールドと全く違うところで活動するということは、私にとって大きなチャレンジでもありました。
しかし、実際現地に飛び込んでみると、いい意味でその不安は払拭されました。
なぜなら、受講生たちのこのプロジェクトに対して頑張ろうとする意気込み、そして期待感を感じることができたからです。
日本ではどんな講義がなされているのか、自分達も新しい知識を得たい、もっと向上したいという思いを感じることが出来ました。
バングラデシュでは5Sの概念はありませんでしたが、受講生のそういった思いを感じて、私も伝えたいことが次第に明確になってきました。
それは、「考えること」です。
5Sを通じて、医療事故を防ぐために何を考えて何をしなければならないのか、もし事故が起こってしまっても、なぜそれが起こったのかを考え対策をとっていくこと、それが大きな事故を防ぐことに繋がっていくことを常に考えて欲しいことを伝えました。
その方法として5Sがあるのだと。(病院では、インシデントレポートはあっても活用されていないのが現状でした。)
講義終了後には、受講生から「多くのことを学ぶことができた。早速5Sを取り組んでいきたい」と言ってくれました。私のつたない講義でも、私が伝えたかったことが理解してもらえたのだと感じた嬉しい瞬間でした。
現在、バングラデシュ支部のスタッフがフォローアップとして共にマニュアル作成に取り組むなど、着実に一歩一歩進んでいます。
帰国後、現地スタッフから嬉しい報告がありました。
講義を受けた看護師が、5Sの概念を自分の子ども達にも伝えていると。思わぬ副産物です。
5Sは、まさに家庭でも職場でも活用できるものです。
こういった教育が子ども達に受け継がれ、何年何十年かかってでも、バングラデシュの人達の意識に拡がってくれることは、何にもまして喜ばしいことではないでしょうか。
6月からは、またスタッフが日本から派遣され、新しい講義に取り組みます。
プロジェクトはまだ始まったばかりですが、着実にスタートを切りました。
これからも、バングラデシュの人達と共にプロジェクトの成功へと向けてスタッフ一同取り組んでまいります。
今後とも皆様の変わらぬご理解とご支援、よろしくお願いいたします。