大阪‘‘あいりん地区‘‘の結核事業 | 認定NPO法人 Future Code

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国際医療支援団体である私たちは「世界中の医療に、未来への鍵を」をコンセプトに、医療問題をベースとして教育、公衆衛生など様々な世界の問題に対し、日本人として何ができるのかを考え、その土地の人・文化を知り、平和構築を行う支援活動を続けています。

7月12日

今回、ハイチ人医師の研修に大阪市保健所と、NPO HESO(Health Support Osaka)に、協力頂き、
大阪の‘‘あいりん地区‘‘で、プライマリーヘルスケア、また実際にコミュニティーに入り、どのような結核への取り組みをしているのか活動に同行させて頂きました。


あいりん地区は、大阪市西成区荻之茶屋周辺のドヤ街・寄せ場(日雇い労働者の就労する場所)で、釜ヶ崎とも呼ばれる地域です。このあいりん地区には、住所不定の日雇い労働者が多く、路上生活者が数多く居住しています。

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大阪市の結核罹患率は、全国の2.6倍、あいりん地区は全国の28.4倍で、南アフリカ・ジンバブエに次ぐ罹患率と云われ、「結核」は私たちにとっても身近な病気です。

結核への取り組みには、DOTS(Directly Observed Therapy Short-cours) 日本語では「直接監視下短期治療」と言われ、WHO(世界保健機構)が提唱する結核対策の戦略が世界的に行われています。


拠点型DOTSあいりん地区の路上生活者、簡易宿泊者など、結核からの退院後もDOTSで服薬や経過観察を行うため、社会医療センターの一室を「拠点型DOTS」専用部屋として、毎日、患者さんに通ってもらい服薬を続けてもらっています。

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通院し、服薬した患者さんには、チオビタドリンクと、野菜ジュースは通院し服薬した方にインセンティブとしています。


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あいりんの白衣の天使に、  
あいりんの患者さんを惹きつけるコツを聞いてみました!!!!

あいりんの患者さんは孤独な方が多いので、個人の尊厳、プライドを一番に尊重しながら、心に寄り添い信頼関係を築くところからはじめます。また、誕生日やバレンタインデイなど、いままでプレゼントをもらったことがない方が、簡素なものでもお祝いすると、涙を出して喜ばれるそうです。 住所不定の路上生活者、また職を求めながら移動する方が多いので、通院や服薬など継続することがとても難しいのですが、まずは来てもらうところからはじめ、だんだんと習慣化していきながら、服薬だけでなく、生活指導などもされています。



訪問型DOTSサポーティブハウス「陽だまり」は、三畳一間が100部屋あり、現在88部屋が利用されてます。これら、サポーティブハウスや、簡易宿泊所の利用者は生活保護費から4万2千円を一律支払うことが決められています。
現在は、高齢化が進み、その多くが60歳以上の高齢者で、痴呆症だけでなく様々な疾病を重複している方が多いので、事務所スタッフが服薬の支援をされています。また、生活保護で受けたお金をすべて使ってしまわないよう金銭管理など、利用者の生活全体の支援をされています。

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「日本の高度成長期の繁栄を支えた、あいりんの労働者の方には、敬意を示さないとね」と明るく話されたオーナーの言葉に胸を打ちました。ここでは日頃、差別されがちな、あいりんの方々を「社会、地域との共生」を目的に、週に一度、モーニング喫茶を開かれています。あいりんの方は人とコミュニケーションをとることを苦手とする方が多いことから、憩いの場として集まってもらったり、また、ただ生活保護のお金だけをもらうだけでなく、自分たちも社会の一員としてボランティアをして社会還元をする活動等もしています。


あいりん労働公共職業安定所

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朝晩の食料支援にも、自分の空き缶を置き順番を待つ。


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シェルターは、北に400床、南に600床ある無料の簡易宿泊施設です。
このシェルターには、毎日PM16:00より利用者が列を作り並び、毎朝AM5:00頃から利用者はその日の職を求め退出していきます。
夕刻、シェルターの入口では、300kcalほどの乾パンが支給されます。多くの方は、この乾パンのみですが、お金に余裕がある方はカップラーメンを夕食にします。

トイレ、シャワーは共同です。
このシェルターは毎日清掃されていますが、不特定多数の利用者が就労するため、決して清潔な状況ではありません。そのため、毛布は半年に一度、すべて処分し新しくします。

感染症(結核なども)が蔓延しやすい状況があります。そのため、この北と南のシェルター前で結核検診車で健康診断を行うこともあります。


「‘‘あいりん地区‘‘での調査」

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「昨晩 寝泊りしたところはどこですか?」919人 済生会 釜ヶ崎検診

①シェルター 293人 31.9%
②簡易宿泊所 269人 29.2%
③アパート 168人 18.3%
④テント 32人 3.5%
⑤野宿 91人 9.9%
⑥その他 66人 7.2人
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「先週1週間の食事について」 1425人 (2007年度 釜ヶ崎支援機構調べ)

毎日3食食べた25.5%
1日1食は食べた62.5%
1日1食も食べられない11.7%

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近年、不況の影響もあり生活保護の受給者は過去最大で210万人にも登ります。

中でも、大阪市の年間の財源、1兆6777億円中、生活保護費は2910億円(17.3%)、また人口267万人中、生活保護受給数15万人(5.6%)と、生活保護にかかる予算は計り知れません。

萩ノ茶屋地区では8112世帯、8327人が生活保護の受給者であり、あいりん地区においては9461人とすべての人が単身で、生活保護を受給されています。


憲法25条では、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないとあります。

生活保護費は、月12万3千円が支払われますが、うち4万2千円を家賃として収めますので、7万円ほどで生活しなければなりません。そのため、日雇いの仕事を探すが、見つからない場合も多く、その場合は日当の70%ほどが国から支給されます。

また、「特掃」と呼ばれる高齢者特別清掃事業として、55歳以上の日雇い労働者を雇用し就労機会を提供する事業でも、1日5700円の支給があるが、すべての人が機会を得ることができるわけでなく、「特掃」がなければ食いつなぎ、生き延びることができないと答える方も多数います。


しかし、これら生活保護や、特掃など国の支援を拒否する人々もいます。それは、個の自尊心、生きる権利など、最低限の生活でも自力で生きていこうとする方々もおられ、がんばれどがんばれど実際にはあいりん地区から自立していくことは困難なサイクルが続きます。

また通称、「ナマポ=生保」と言われ、楽な暮らしがしたいことから生活保護費を頼りに生活する者も目立ち、
これらセーフティーネットのボーダーラインが難しい現状もあります。


今回、この研修はハイチ人医師達も、日本にこのような状況があるとは...と驚いていましたが、
それ以上に、私たちもはじめて身近な問題を直視し、途上国だけでなく、日本の問題にも目を向ける必要があると思いました。



あいりんの中を自由自在に歩くことができる、井戸さん。
道を歩いていると、「井戸さん!!」と声をかけ、駆け寄ってこられる方もいました。
日々の活動の中、あいりんで生活されている方に寄り添い、支援を続けられています。

今回は、ハイチ人医師研修のため、大阪市保健所とNPO HESO(Health Support Osaka)井戸さんのお力をお借りし、あいりん地区で実践的な研修をさせて頂きました。同時に、あいりん地区の皆さま、ご協力本当にありがとうございました。


NPO Health Support Osaka
http://www.heso.or.jp/activity/activity.html