• 亜鉛は、生体内の200種類以上の酵素を補助するものとして重要な金属です。
  • 生殖医学の領域で亜鉛は、受精、着床、妊娠予後に有利に作用することが知られています。 
  • 精液中には前立腺から分泌された亜鉛が存在しており、精子クロマチンの安定化、細胞膜の安定化、活性酸素の除去に関与し、キャパシテーション(受精能獲得)や先体反応の調節を担っているとの報告がありますが、確定的ではありません。 
  • 亜鉛が低下すると精子形成(分化、増殖)が障害されます。
  • 多くの細胞で、亜鉛が酸化ストレスを軽減することも知られています。
  • 受精の過程で亜鉛が必要であることが報告されています。
  •  WHO(世界保健機関)によると、およそ3人に1人が亜鉛不足であることが報告されています。

Hum Reprod 2014; 29: 1134

  • 亜鉛は、クロマチン(染色体)の安定(集積)に関与することが知られています。
  • このため、精子形成の初期(精母細胞)の段階では、亜鉛が低い状態で減数分裂が生じます。
  • 亜鉛濃度が高い精巣上体では、クロマチンが安定し、染色体を守ります。
  • 精液中の亜鉛濃度はさらに高く、血液中の100倍になります。
  • 精子の染色体が守られている状態と言えます。
  • 女性の体内に入ると、亜鉛濃度が少ないため、染色体が不安定となり、先体反応が起こり、精子の過運動状態が生じます。
  • 亜鉛の濃度による精子の安定化と活性化の切り替えは、生殖にとって大変重要なポイントではないかと考えられます。

 

下記の論文は、精液所見と精液中の亜鉛濃度について20編の論文のメタアナリシスを行ったものです(臨牀検査として精液中の亜鉛濃度の測定は通常できません)。

Sci Rep 2016; 6: 22386

  • メタアナリシスにより、男性不妊群は対照群と比べ、精液中の亜鉛濃度が有意に低下していました
  • 亜鉛サプリメント投与により、精液量、精子運動率、正常形態精子が改善する可能性があります。