• 子宮内膜症は、本来、子宮内腔の表面にある子宮内膜が異所性(本来ないところにある)にある疾患です。
  • 子宮内膜症は、生理痛(月経困難症)や性交時痛の原因となっている場合があります。
  • 子宮内膜症は、卵巣や卵管に癒着を起こし、排卵した卵子の卵管への取り込みが障がいされるなど不妊原因になっている場合があります。
  • チョコレートのう胞(卵巣子宮内膜症)は、卵巣内に子宮内膜があり月経血が貯留した状態で、チョコレート嚢腫=悪性腫瘍ということではありません。
 
  • 子宮内膜症では、CA125値(採血検査)が高値を示すことが多いので疑いがあれば検査しますが、月経時に高値を示しやすいので閉経前の方は月経期を外して検査を受けましょう。
  • チョコレートのう胞(卵巣子宮内膜症)は、悪性化のリスクがあるとされていますので、閉経後も注意が必要です。積極的に超音波検査や採血検査CA125などの確認がすすめられます。

 

★    卵巣刺激によるART治療と卵巣癌のリスクについての国家規模の検討 

Hum Reprod 2019; 34; 2290

卵巣刺激によるART治療を実施した58,472名と年齢をマッチさせた対照群625,330名をデンマークの疾病データ(ART治療登録、癌患者登録)を用いて調査した結果、0.06%が卵巣癌と診断されました。ART治療の原因別に卵巣癌のリスクについて検討したところ、男性因子で0.87倍、原因不明で0.81倍、PCOSで0.69倍、その他女性因子で0.92倍、子宮内膜症で3.78倍となっていました。

卵巣刺激によるART治療と卵巣癌のリスクについての国家規模の検討を行ったものであり、子宮内膜症以外では卵巣癌のリスクは増加しないことを示しています。

 

★    チョコレート嚢種(卵巣子宮内膜症)の癌化の可能性に注意が必要              日本産科婦人科学会誌の研修コーナー

妊娠治療を受けられている方の中にチョコレート嚢腫がある方がおられますが、最大の問題点は、チョコレート嚢腫は悪性化(癌になる)の可能性があることです。チョコレート嚢腫の悪性化は、日本人をはじめとした東洋人に多く、次の記載により注意喚起されています。

  1. 45歳以上かつ閉経後かつチョコレート嚢腫の最大径10cm 以上の場合は癌化率が高いため、すぐ卵巣摘出すべき。
  2. 20代および30代のチョコレート嚢腫の最大径10cm以上のときは悪性化を考慮して卵巣摘出が望ましい。
  3. 40歳以上かつチョコレート嚢腫の最大径6cm 以上の場合は卵巣摘出が望ましいが、経過観察する場合は悪性化を常に考慮する。
  4. チョコレート嚢腫の最大径6cm 未満の場合は経過観察しても良いが、CA125測定や画像診断は定期的に行ったほうが良い。
  5. 未婚女性や不妊症患者の場合は、卵巣摘出術の代わりに嚢腫の部分摘出を選択することが多いが、顕微鏡レベルの検査をしっかり行って悪性がないことを確認すべき。
  6. 20代および30代のチョコレート嚢腫の悪性化は「万が一」のことで,チョコレート嚢腫がない一般集団と同じ発癌率であり,過度に悪性化を恐れる必要はない。
  7. 閉経期前後のチョコレート嚢腫は明らかに悪性化の頻度が増加するため、閉経すればチョコレート嚢腫が治るという説明はすべきではない。また、薬剤投与によりチョコレート嚢腫が縮小したら悪性ではないという誤った考えがあるが、縮小しても悪性の場合はありえる。

 

 

 

チョコレートのう胞は悪性化(癌になる)の可能性がある?