子宮内膜症のチョコレート嚢腫(卵巣子宮内膜症)での最大の問題点は悪性化(癌になる)可能性があることです。

 

チョコレート嚢腫の癌化率は0.7-0.8と推定されてきましたが、これまで大規模調査は行われていませんでした。

 

日本産科婦人科学会の調査では、卵巣チョコレート嚢胞を有する30歳代女性の1.3に、40歳代女性の4.1に卵巣癌の合併を認めています。

これらの背景から、子宮内膜症癌化の正確な頻度を明らかにすると伴に、いかにして癌化を防ぐことが出来るかを知るために、『本邦における子宮内膜症の癌化の頻度と予防に関する疫学研究(JEMS)』が2007年から開始され、現在約3000名の登録、前向き研究が進行中です。

閉経前の癌発生が75を占め、癌診断時の嚢胞最大径は平均8.1cmであり、4cm未満の嚢胞からの癌発生も見られています。(日本産科婦人科学会 2018.5月)

 

チョコレート嚢腫の悪性化は、日本人をはじめとした東洋人に多く、下記のように注意喚起されています。

 

日本産科婦人科学会誌の研修コーナーより


1)45歳以上かつ閉経後かつチョコレート嚢腫の最大径10cm 以上の場合は癌化率が高いため、すぐ卵巣摘出することが推奨される。
2)20代および30代のチョコレート嚢腫の悪性化は「万が一」のことで,チョコレート嚢腫がない一般集団と同じ発癌率であるが、チョコレート嚢腫の最大径10cm以上のときは悪性化を考慮し精査する必要がある。

3)40歳以上かつチョコレート嚢腫の最大径6cm 以上の場合は卵巣摘出が望ましいが、経過観察する場合は悪性化を常に考慮する必要がある。
4)チョコレート嚢腫の最大径6cm 未満の場合は経過観察しても良いが、CA125測定や画像診断は定期的に行ったほうが良い。
5)未婚女性や不妊症患者の場合は、卵巣摘出術の代わりに嚢腫の部分摘出を選択することが多いが、顕微鏡レベルの検査をしっかり行って悪性がないことを確認すべきである。
6)閉経期前後のチョコレート嚢腫は明らかに悪性化の頻度が増加するため、閉経すればチョコレート嚢腫が治るとは言えない。また、薬剤投与によりチョコレート嚢腫が縮小しても悪性の場合はある。

 

下記の記事もご参照ください。

『チョコレート嚢腫があるだけでAMHが低下する?』

『チョコレート嚢種がある方の体外受精は?』